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           最終章    新たな船出


 それから1か月後、カズユキとみゆきの結婚式が行われた。タケルもタキシード姿に身を包んでの参加だった。参加していたのはカズユキとみゆきの両親とタケル、あとはカズユキとみゆきの会社の人間や高校、大学の同級生など30人ほどであった。八兵衛もタキシード姿に身を包みボウボウだったヒゲは綺麗に剃られていた。

スムーズに式が進む。新郎新婦からの挨拶になりみゆきが挨拶を述べた時だった。

みゆき「今回こうして私がカズユキさんと結婚できたのも父と再び暮らせるようになったのもある恩人のおかげだと思います。今日はその方に一言、お話をいただきたいと思います。カズユキさんの弟さんで父の友人でもあるタケルさんです!」と話を振ってきた。全くもって想定外の出来事に面喰らうタケル。八兵衛とのときといいみゆきは本当に唐突に話を振ってくる。拍手で壇上に迎えられ渋々上がるタケル。しばらくの静寂のあとにタケルは声を発した。

タケル「えーと、本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。まずは兄貴とみゆきさん、結婚おめでとう!これからの人生、2人で支えあっていってください。」挨拶程度の話をした後にタケルは話しを続けた。

タケル「ちょっとだけ自分の話をさせてください。自分は10年以上前から実家に部屋にひきこもりがちでした。学校をでたあと就職したんですがそこで酷い目にあってわずか1年足らずで辞めてしまって・・・そこから地獄の日々の始まりでした。」

会場がちょっとザワついていた。何を話すのかという雰囲気が流れていた。

 タケル「就職試験はことごとく落とされてボロボロ。自分はいつしか自信を無くしてしまいその後10年もの間、実家にひきこもってしまいました。そして10年目の今年、実家を飛び出し約1ヶ月間の路上生活に及びました。」

 タケルの思わぬ発言により会場は騒然となった。しかしタケルは話しを止めない。

 タケル「そんな中、自分はある人にであいました。その人にいろいろお世話になり生き抜けました。そのひとこそ・・・みゆきさんのお父さんである八兵衛さんです!」

 会場は一気に騒然となった。まさか新郎新婦の家族が両方ともホームレスで知り合いだったなんてとは誰も思ってなかったであろう。

 スタッフA「おい、止めさせろ!」

 スタッフB「はい、今すぐ!」

壇上にいた会場スタッフがたまらずタケルを摘み出そうとするが新郎新婦の2人が声をかける。

 カズユキ「待ってください。あいつの話を最後まで聞かせてください!」

 スタッフA「し、しかしこの雰囲気では・・・。」

 みゆき「私からもお願いします!聞かせてください!」

2人はスタッフがタケルを止めようとしたのを止めてタケルの話を聞きたいと思ったのだった。

 タケル「八兵衛さんがみゆきさんの娘さんだったのは単なる偶然だったのかもしれません。でもひとついえることはあの時自分が八兵衛さんに出会ってなかったらもしかしたら今頃こうして生きていなかったかもしれないということです。いえ、あのまま家に閉じこもっててもいずれ死んでいたかもしれません。だから、今この場を借りて言わせてください。父さん、母さん、兄さん、八兵衛さん、みゆきさん、みんなのおかげで自分はこうして元気にこの場所に立ててます。一度は生きることを諦めかけましたが今は全力で生きたいと思えます。ありがとう!」

 タケルはそいういうと深々と礼をした。すると次の瞬間、会場全体から惜しみない拍手が沸き起こった。

 「いいぞー!」「よく言った!」「ステキー!」そんな惜しみないエールがタケルに拍手とともに送られていた。

 タケルは泣いていた。今までにないくらい感動していた。タケルだけではない。新郎新婦のカズユキとみゆきも、タケルの父と母も、八兵衛と和代も、そして会場にいた多くの人が泣いていた。そして惜しみない拍手とエールを送っていた。

 



結婚式が終わりしばらくしてタケルはある場所に向かっていた。近くのハローワークだ。

 タケル「よし、俺も世のため人のために働こう!そのために仕事探そう!」

 タケルの目は輝いていた。その目は以前の引きこもりの時とは違いこれからの人生に希望に満ちた目に変化していた。



                      終わり。


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