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第八章    家に戻る


 警察署での取り調べは数時間に及んだ。幸い店側が被害届を出さないということで捕まらることはなかった。殴りあった3人がお互いに軽傷で示談でいいといったので警察でこっぴどくしぼられる程度で済んだ。

タケルとカズユキ、みゆき、八兵衛の4人が警察の取り調べ室から出てくるとそこにはタケルとカズユキの父と母、そしてみゆきの母である和代の姿があった。

父「タケル?タケルじゃないか?お前どうしたんだ?」

母「タケル?元気にしてたの?いまはどうしてるの?」

両親は意外なほどタケルをみかけると心配してくれていた。実に1ヶ月の再会であった。

タケル「実は・・・。」タケルは話しにくそうにしていた。カズユキとはタメ口で話せても父と母には言い出しにくかった。

カズユキ「実はみゆきさんのお父さんとたまたま一緒に暮らしてるんだよ、タケルのやつ。」とカズユキが話した。

それでここまでのいきさつや店での殴り合いとかの経緯をカズユキは話した。

 父「そうでしたか、あなたがみゆきさんのお父さんでしたか。このたびは息子2人が大変ご迷惑をかけたようで・・・。申し訳ありません。」

八兵衛「いえ、こちらのほうこそ大事な息子さんに手荒なことをしてしまい申し訳ありませんでした。タケルくんには毎日手伝いしてもらってすごく助かってます。」八兵衛は驚くぐらい親切な対応で応えた。タケル達と接してる時とはまるで別人のようであった。

カズユキ「お母さん、ご心配かけてすいません。」

みゆき「体は大丈夫なの、お母さん?」

和代「ああ、今はだいぶ元気だよ。カズユキさんはなんともないの?」

みゆきの母の和代は病気がちであるが顔色はよさそうだった。すると八兵衛がすっと和代の前に現れた。

八兵衛「元気にしてたか?」

和代「今は元気ですよ。あんたも元気そうだね。」

みゆきの父の八兵衛と母の和代、実に10年ぶりの対面である。

八兵衛「って迷惑かけたな。今更なんだが・・・戻ってもいいか?」

八兵衛は言いにくそうな感じで話した。

みゆき「お母さん、お父さん戻ってくるって。いいよね?」

カズユキ「4人で暮らしましょう、お母さん!」

和代「うーん、どうしようかねえ?」

和代は考え込んだように黙る。

八兵衛「いや、今更許してくれとは言わないが・・・みゆきとカズユキくんのためにも・・・ダメか?」

八兵衛はタジタジになっていた。あれだけタケルに強気な態度の八兵衛も妻は苦手だったようだ。もしかすると借金云々ではなく和代との生活が嫌になって逃げだしたのだろうか?

和代「じゃ、これで許してあげる!」

そういうと和代は思いっきり平手で八兵衛の顔を張った!

「バチーン!!!」というすごい音が鳴る。

八兵衛「痛え~!!!」と八兵衛は声をあげた。八兵衛の顔はあまりの衝撃で赤く腫れ上がっていた。

和代「お帰りなさい!」そういうと和代は張り手で腫れ上がった八兵衛の頬に軽くキスをした。

八兵衛「ただいま・・・。」というと八兵衛は和代を抱きしめた。

みゆき「お帰りなさい、お父さん!」というとみゆきは2人に抱き付いた。微笑ましい光景である。

タケル「じゃあ、俺はそろそろ。」とタケルはその場を立ち去ろうとした。すると父と母がタケルを呼びとめた。

父「タケル、お前これからどうするんだ?」

母「行くあてあるの、タケル?」

タケル「まあ、1ヶ月なんとかなったし1人で生きていくよ。」

そういうや否や父はタケルに言った。

父「戻ってこいよ、タケル。」

タケル「え?」

父「カズユキはもうじき家を出る。みゆきさんの実家でみゆきさんのお父さん、お母さんと一緒に暮らすつもりらしい。だからもうお前は家を出てる必要はない。」

タケル「なにをいまさら・・・。戻れっていわれても・・・。」

父「父さんと母さん、本心でお前を追い出したかったと思ってるのか?」

母「タケル、あなたが出て行ったあと毎晩のように父さんも母さんも泣いていたわ。なんてことしたのかって・・・。だから戻ってきて!」

 カズユキ「帰ってこいよ、タケル!」

 タケル「兄さん・・・。」

 カズユキ「あの時お前を家から追い出したのはお前が憎くても邪魔だからでもない、父さんと母さんなりに考えた上での苦渋の決断だったんだ。あのままにしてたら一生、お前は部屋にひきこもりのまま人生を終えていたかもしれない。無理やりにでも家から追い出すことでお前なりに生きようという考えを持ってほしくて3人で決めたことなんだ。そしてお前はそれに応えるかのようにこの1ヶ月で大きく成長した!もうお前は大丈夫だ!」

 カズユキの思わぬ言葉にタケルは動揺を隠しきれない表情になっていた。

 八兵衛「タケル、家に戻れよ。」様子をみていた八兵衛がタケルに話けた。

 八兵衛「お前はこの1ヶ月、俺のシゴキに耐えた。それのみならずお前のおかげで俺はこうして和代とみゆきと再会してまた暮らすことができるようになった。お前はもはやクズでもダメ人間でもない。立派な人間に生まれ変わったんだ。親父さんとおふくろさんの気持ちに応えてやれよ!」

 タケル「師匠・・・。」

 八兵衛の言葉を聞くや否やタケルは涙に濡れていた。そして重い口を開いた。

 タケル「父さん、母さん、兄貴・・・。ただいま。」

 父「お帰り!」

 母「お帰りなさい!」

 カズユキ「お帰り!タケル!」

今度はタケルの家族4人が涙の抱擁をしていた。こうしてタケルの1ヶ月に及ぶホームレス生活は終わりを迎えたのだった。




















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