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              第七章   和解


 翌日の朝、タケルは八兵衛とともにいつものように空き缶回収を終えると話を切り出した。

 タケル「師匠、今日は俺が朝奢るんで朝食をあそこのレストランで食べましょう!」

 八兵衛「おう、いいとこあるな、タケル!食いに行こうぜ!」

 おとといのことがウソのように機嫌がいい。まるで八兵衛は二重人格だ。いや、もうしかしたらそうなのかもしれないとタケルは思った。

タケル「Aセット2つお願いします。」

八兵衛「じゃあ、俺も同じやつ頼む。」

そして店員が注文を聞いてその場からいなくなるや否やタケルは切り出した。

タケル「あの、師匠・・・ちょっといいですか?」

八兵衛「ん?なんだ神妙な顔して。」

タケル「すいません!今日はどうしても会わせたい人がいてここに師匠を連れてきちゃいました!」

八兵衛「なん・・・・だと?」

八兵衛は面喰ったかの様な顔をしてみるみるうちに顔を紅潮させていった。タケルが八兵衛に頭を下げるや否や後ろの席にいたカップルが八兵衛とタケルの前にあらわれたのだった。そう、カズユキとみゆきだったのだ。2人はあらかじめここのレストランでタケルが八兵衛を連れてくるのを待っていたのだった。

みゆき「お父さん・・・。」

八兵衛「みゆき、お前・・・。てめえ、タケル、俺を騙しやがったな?」

タケル「す、すいません、師匠!でもこうでもしないとみゆきさんの話を聞いてもらえないと思って…。」

みゆき「お父さん、私が無理言ってタケルさんに頼んだの。だからタケルさんを責めないで!」

八兵衛「・・・。」

少し黙った後、八兵衛は話しを切り出した。

八兵衛「なんのようだ?お前とはもう家族でもなんでもないといったはずだぞ?」

みゆき「わかってる。でも、ちゃんと話しておきたいから。私の婚約者のカズユキさんです。」

カズユキ「は、はじめまして。みゆきさんと同じ会社で働いてまして、その・・・。」

みゆきに急に紹介されてしどろもどろになるカズユキ。初対面であるが婚約者の父に会うということで緊張していたのかあるいは八兵衛のあまりの迫力にビビッてしまったのかヒザがガクガク震えているようだった。タケルはあまりに狼狽しているカズユキの姿に内心、苦笑していた。ここまで慌てふためくカズユキは今まで見たことがなかった。

八兵衛「で、カズユキさんよ、俺に何の用だ?」

カズユキ「は、はい、実はですね、その・・・。」

カズユキは安全に固まってしまっていた。

「ダメだ、こりゃ・・・。」とタケルは思いいてもたってもいられなくなり話した。

タケル「このカズユキって人、俺の兄貴なんですよ。師匠。で、みゆきさんと交際してるんだって。」

タケルがそう切り出した。八兵衛は余程意外だったのか声を出して驚いた。

八兵衛「そうか、なんだあんたタケルの兄さんだったのか、すごい偶然だな。みゆきはいままで苦労してきたんだ。よろしく頼むよ。」

驚くほどあっさり八兵衛はみゆきをカズユキに託した。

カズユキ「はい・・・、わかりました。みゆきさんは必ず僕が幸せにします。」

八兵衛「頼んだぞ。俺は父親の資格のない男だ。俺の分までみゆきとみゆきの母親を頼むよ。」

みゆき「お父さん、私たちと一緒に暮らしてくれないかな・・・?」

たまらずみゆきが話を切り出した。

みゆき「お母さん、最近体調よくないんだ・・・。もう治らないかもしれない・・・。だからその前にお父さんに戻ってきて欲しいの・・・。」

八兵衛「この前も言った通りだ。俺はもうお前たちと一緒に暮らす気はない。お前は俺のことなんか忘れて和代とこのカズユキさんと一緒に幸せになればいいんだ。

みゆき「そんな・・・。」

重苦しい雰囲気になっていた。そこに見兼ねたタケルが話を切り出した。

タケル「あ~あ、揃いもそろってみなさん大馬鹿者ですね。」

 タケルの急な思わぬ発言に周りの3人はキョトンとした表情になっていた。続けざまにタケルは八兵衛に対して話した。

タケル「師匠、師匠はしょせんその程度の男だったんですね。がっかりですよ。失望しました。」

八兵衛「な、なんだと?」

タケルの思わぬ発言を受けて八兵衛はムッとした表情でタケルをみた。

タケル「師匠は結局のところ怖いんですよ。みゆきさんと兄貴の邪魔者にいずれなるんじゃないかと恐れてるんですよ。違いますか?」

八兵衛「・・・。」

八兵衛は何も言えずに黙っていた。続けざまにタケルはカズユキに言った。

タケル「兄貴、あんたはみゆきさんに頼まれたから師匠に挨拶に来ただけだ。ほんとはこんなことは面倒でしたくないんだ、違うか?」

カズユキ「そ、そんなことは・・・。」

カズユキは自信なさげに応えた。それにしても1ヶ月前とタケルは別人のようだった。タケルとカズユキの立場は1ヶ月前とはまるで逆転していた。

タケル「そしてみゆきさん、一番の悪はあんただよ!」

タケルは吐き捨てるようにみゆきに言った。

みゆき「え・・・?」

タケルのあまりの豹変ぶりにみゆきも驚いた表情をして応えた。

タケル「あんたは結局のところ師匠と仲直りしたいけど自分じゃできないから兄貴や俺を利用してるだけなんだ、違うか?」

みゆき「そんな・・・。」

タケル「結婚だって正直誰でもいいんだろ?たまたま兄貴があんたに好意を抱いてるからするだけだ、違うか?」

みゆき「そんな・・・。私は・・・。」

みゆきは今にも泣きそうな顔になっていた。それほどまでにタケルのヤジは強烈であった。

タケル「泣けばいいと思ってんの?世の中なめてんじゃない?」

さらに言葉で強烈なヤジを飛ばすタケル。

八兵衛「おい、お前、いい加減にしろ!」

八兵衛がタケルに掴み掛ろうとしたその時である!

「バシーン!!!」っと急にデカイ音が鳴りタケルは倒れた。カズユキがタケルを殴ったのだ。

カズユキ「お前、いい加減にしろ!俺はともかくみゆきさんやお父さんにまでそんなことを・・・。」

カズユキが興奮していた。

タケル「いってえ・・・。」

タケルは相当に痛そうなふりをして立ち上がると・・・。

「バキッ!!!」今度はタケルがカズユキに殴り掛かった。

店内は騒然となって店員が途端に止めに入る。

店員A「お客さん、お店で暴れないでください!」

店員はカズユキを、八兵衛はタケルを体を張って止めていた。

八兵衛「オイ、てめえ、タケルいい加減にしろ!!!」

タケル「うるせえ、話しやがれ、このくそホームレスじじい!!!」

というと今度はタケルは八兵衛を殴り倒した!

カズユキ「話せ、この野郎!」完全に激高したカズユキは店員の手を振りほどき店員を投げ飛ばし再びカズユキに殴り掛かった。タケルも応戦した!

八兵衛「いい加減にしやがれ、このクソガキどもがあ!!!」

立ち上がった八兵衛がタケルとカズユキに殴りかかった!もはやめちゃくちゃであった…。

みゆき「もうやめて!!!」

みゆきが店内に響くくらいの大声で叫んだ。それはもはや断末魔の雄叫びのようであった。

3人は途端に止まった…。

みゆき「わたしのせいでこんなにみなさんに迷惑かけるなんて・・・。こんなんじゃなにもかも無理よ・・・。カズユキさん、私達婚約を解消して別れましょう・・・。」

カズユキ「え・・・?」

黙り込んだあとカズユキは言葉を放った。

カズユキ「そうだね。こんなことになってしまっては・・・。別れよう・・・。」

八兵衛「・・・。」

みんなが静まり返ってると突然タケルが3人の前で土下座をした!

タケル「兄貴、みゆきさん、そして師匠・・・さっきは心無いことを言ってそして殴ったりなんだりしてすまなかった・・・。どうかここは俺のこの姿に免じて丸く収めてほしい!そして2人は結婚して師匠も一緒に暮らしてほしい!この通りだ!」タケルの次から次へと豹変する態度に3人はまたもやキョトンとした表情になった。つい1ヶ月前まで引きこもっていた男とは思えない豹変であった。いや、おそらくそれはタケル自身が一番感じているのかもしれない。

たったひと月だが10年以上、部屋で孤独に引きこもり生活していた男にはこの一ヶ月という時間はものすごく濃密な時間であったもかもしれない。

 カズユキ「タケル・・・お前、変わったな。なんというか一皮むけたというか・・・。」カズユキはそういうと少し間を置いてこう言った。

 カズユキ「俺は内心、お前の存在が周りの人にバレるのが怖かった・・・。みゆきさんに、みゆきさんのご両親に、会社のみんなに。お前が無職で引きこもりだってみゆきさん達にバレたらきっとみゆきさんは俺と別れるだろう。そう考えると怖くて仕方なかった・・・。お前の存在が知られたら恥ずかしい・・・そんなことばかり考えていた。でも違った。恥ずかしいのは俺のほうだった。情けない!こんな兄を・・・許してくれ、タケル・・・。」そういうとカズユキはその場に泣き崩れた。

 みゆき「カズユキさん、私も同じよ。」とみゆきは言った。

 みゆき「私もあなたと出会うまで父のことを誰にも打ち明けられなかった・・・。でもあなたと出会ってそしてタケルさんと出会って変われたような気がする・・・。父のことを許せるようになったし受け入れようと思えるようになった。カズユキさん、タケルさん、ありがとう!そして、あらためて自分の気持ちに気づいたわ。私、カズユキさんと一緒にいたいです。

 カズユキ「俺も自分の気持ちにあらためて気づいた。みゆきさん、君と一緒にいたい!結婚して欲しい!」そういったあとにカズユキは八兵衛の前に立ってこう言った。

 カズユキ「お父さん、みゆきさんを僕にください!そして・・・みゆきさんのためにも戻ってきてもらえませんか?お願いします!」

 八兵衛は少し黙ったあと口を開いた。

 八兵衛「ほんとに・・・いいのか?」

 カズユキ「え?」

 みゆき「お父さん、じゃあもしかして?」

 八兵衛「俺は家を飛び出してからずっと自分のことが許せなかった。自分の不甲斐なさでお前や和代に迷惑をかけてしまった。だからお前たちとはもう会わないほうがいいと思っていた。だけど・・・。」

少し間を置いてこういった。

 八兵衛「タケル、お前との出会いが俺を変えたかもしれん。」と八兵衛はタケルに話した。

八兵衛「お前と過ごしてみて久々に家族っていいなと思えたよ。俺も再び和代やみゆき、おまえと暮らしたいって思えた。タケル、ありがとよ!」

あまりの意外な一言にタケルは目を丸くしていた。このひと月の間そんなことは言われたことなかった。おっかない印象しか八兵衛にはなかったからだ。

カズユキ「それじゃあ、一緒に暮らしてもらえますか?」

みゆき「お父さん?」

八兵衛「まあ、お前らがどうしても俺に戻ってきて欲しいっていうならもどってやってもいいかな?」

八兵衛はそういうと気恥ずかしそうな笑顔をみせて頷いた。八兵衛の瞳には光るものがあった。

タケル「よ、よかったあ~!」というとタケルは疲れ果てたかのようにそこに大の字になった。

 カズユキ「タケル、お前もしかして・・・ワザとやってたのか?」

 タケル「慣れないことはするもんじゃないね・・・。途中から兄貴や師匠に殺されるんじゃないかと思って心臓バクバクしてたよ・・・。」タケルは安心した表情をみせた。

八兵衛「お前、実はすごい度胸あるな。見直したぞ、タケル」

みゆき「あれ全部演技だったんですか?ハラハラしちゃった?」

4人が笑ってるとそこに店員が警察官を連れてやってきた。

店員B「お巡りさん、あそこです!」

警察A「コラ、お前ら!なにやってんだ!」と警察官が店内に数人やってきた。

警察A「器物破損と傷害の容疑で署までご同行願おう。」

そう謂われると4人は店の外に連れて行かれ2台のパトカーに乗せられ近くの警察署まで連行となった。












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