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第四章 家族
タケルが家を出て八兵衛とともにホームレス生活をしてはや一ヶ月経っていた。すぐに出るつもりが行くあてもないということもありズルズルと居座っていた。
毎朝早起きしての空き缶拾いもそこまで苦痛でなくなっていた。
空き缶拾いの代金は始めのうちは八兵衛が全部独占していたが最近では半々でタケルももらうようになっていた。仕事するのが苦痛だった昔とは気持ち的に違うものがあった。
不思議なものだ。一度は人生を諦めていたが今の生活が何気に気に入っていったのかもしれない。
そんなある日のことである。空き缶拾いを終えて帰路に就く途中にタケルは八兵衛に気になることがあり思い切って聞いてみた。
タケル「あの、八兵衛さん、ちょっと聞いてもいいですか?」
八兵衛「おう、なんだ?なんかしたか?」
タケル「八兵衛さんはここ来る前はなにしてたんですか?家族とかは?」
八兵衛「・・・。」
急に沈黙が続いた。「ヤバイ!聞いてはいけないことだったのか?」途端にタケルは焦った。八兵衛の気性の荒さはこの1ヶ月よく知ってきている。なにされるかわからないとビビッていた。
八兵衛「ここ来る前に俺は工場を経営していた。」
途端に八兵衛は話し始めた。
八兵衛「もう10年くらい前になるかな。俺と女房と娘の3人で暮らしていてよ、普通に順風満帆だった、幸せな家族だったと思う。」
タケル「え?」タケルはあまりに意外すぎる八兵衛の告白を聞き驚いたかのように声をあげてしまった。どうみても家庭を持ってる風にはみえなかった。
八兵衛「だがある時俺はギャンブルにハマッちまってな。毎日パチンコ三昧に明け暮れすっかり仕事をしなくなってしまった。そのうちに借金を背負っちまってよ・・・。サラ金に手を付けちまったわけよ。そしてその金で今度はFXに手を出してしまって見事に大損よ。借りた金全部スッってしまって借金しかなくなってしまった。」
タケル「…。」
八兵衛「その後、自己破産して借金はなくなったが女房と娘は出て行ってしまったよ。まあ、自業自得だわな。」
「聞かなければよかった・・・。」タケルはそう思ってしまった。こういった類の話題は空気が重くなり自分にはどう対処すればいいかわからないと思った。
タケル「すいません、なんか余計なこと聞いてしまって・・・。」
八兵衛「いいってことよ、オメーも似たもんだろ?だから俺もお前を気に入って置いてるわけだから気にすんな!」
八兵衛はそういうと豪快に笑った。
寝ぐらの橋の下の近くに着く。
と、1人の若い女性が立っていた。見た感じタケルと同じくらいの年齢の女性だった。
「うわ、綺麗な女性だな。」とタケルは思った。
女性「お父さん?お父さんだよね?」
不意に女性はそういってきた。なんのことかタケルがわからずにいると八兵衛が「お前、みゆきか?」と返答した。
女性「やっぱりお父さんだよね?探したよ。一緒に帰ろう。帰って一緒に暮らそう!」
どうやらこの女性は八兵衛の娘だったらしい。
八兵衛「俺はお前の父親でいる資格はない。だから和代とお前を捨てて家を出たんだ。わかったらここにはもう来るな!」
八兵衛は興奮して激高したかのように女性に言った。
「とりあえずいちゃまずそうだな・・・。」タケルはその場から立ち去りたい気持ちになっていた。
女性「お母さんももうお父さんのこと許してるよ。だから・・・またみんなで暮らそう!それに私・・・もうすぐ結婚するんだ!」
と女性は途端に話した。
八兵衛「そうか。それはよかったな、ならなおさらだ。お前はもう俺の娘でもなんでもない。2度と現れるな!」八兵衛は冷たく突き放した。
女性「わかった。またくるね。お父さん・・・。」そういうと女性は涙ながらに去っていった。
タケル「あの・・・。」とタケルは八兵衛に言った。
タケル「せっかく会いに来てくれたんだからあんなに突き放さなくても・・・。娘さんなんですよね・・・?ああ言ってるわけだし家族と暮らしたほうがいいんじゃないですか?」
途端に八兵衛の顔がみるみる紅潮して怒りの形相になっていった。
八兵衛「うるせえぞ、このゴミ野郎!おめーなんかに俺の家族の事情のこと気にされる覚えはねえ!シバくぞ、てめえ!!!」八兵衛は烈火のごとくキレていた。
タケル「す、すいません!申し訳ありませんでした!!!」
八兵衛「二度とあいつの話をするな!河に埋めるぞ!!!」
よほど機嫌が悪かったのか八兵衛はそういうと近くにあったドラム缶を思いっきり蹴飛ばし飲み屋街に行ってしまった。
「一体、どうしたんだろう・・・?」そう考えるとタケルは1人でダンボールを被り眠りにつこうとしたがどうにも寝れずに朝を迎えたのだった・・・。




