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第二章 タケル、ホームレスになる
実家を追い出されてしまったタケル。当然行くあてなどない。かっこよく家を出たつもりが本音はこれからどうするべきなのか途方に暮れていた。
会社にリストラされたことはあったがまさか実家からリストラされるとは思いもしていなかった。
「今日から僕はどこで寝泊まりすればいいんだ?布団もベッドもなければ雨風をしのぐ家もない・・・。ご飯はどうすればいいんだ?50万なんて貯金、あっという間に尽きてしまうだろう・・・。そのあとどうすればいい?」なにもかもが先行き不透明な状態。いや、絶望的な状態というべきか・・・。
途方に暮れつつもひとまずタケルはこの地域で一番大きい禿沼市に身を寄せることとした。禿沼市は人口100万人の大都市。タケルの実家がある極貧市とは比較にならないほどの都会である。泊まるとことかご飯を食うとこもなんとかなるだろうと客観的な考えでいた。
禿沼市に着きひとまずタケルは街中を歩き夕飯を取ることにした。あまりに突然すぎる実家からのリストラ・・・。ドタバタしすぎでタケルはクタクタに疲れていた・・・。禿沼市は極貧市から電車でいくと30分もかかる。都会であるゆえ出稼ぎで来る人も多い。ひとまず人口が多いとこにいればなにかしら助けてくれる人がいるかもしれない・・・という安直な考えでわざわざ隣町までいくことにしたのだった。
街中は活気に溢れていた。
ネオン街は仕事を終えたサラリーマンが数人で飲み屋に繰り出したり若者が5、6人くらいでワイワイやっている。
「みんな俺と違って活き活きしていて楽しそうだな・・・。」そんな風に考えたら鬱になりそうだった。
ひとまずタケルは駅近くのビジネスホテルに泊まることとした。「まあ、50万もあるわけだししばらくはホテル暮らしでももんだいないか。」と楽観的に考えて受付で交渉してみることに。
タケル「あの、すいません。今日泊まりたいんですが…。」
受付嬢「ご宿泊のお客様ですか?ご予約されてますか?」
タケル「いえ、ちょっと急だったんで予約は入れてないですが空いてるお部屋に泊めさせていただきたいんですが…。」
受付嬢「申し訳ございません、お客様。本日はご予約のお客様で全室満員となっております・・・。」
タケル「そうですか、わかりました・・・。」
渋々諦めて立ち去ることにした。
「しまった!今日は週末か。普段より混み合ってるのか。」
運が悪いことにその日は土曜日。ビジネスホテルはどこもかしこも満室ぽかった。ならばインターネットカフェに行くか、と考えたが・・・それは断念することとした。なにしろ10年以上、自室にこもっていたわけでわんさかと人がいるとこにスーッと入っていけるほど人がたくさんいるとこにいるのに慣れていないのだ。
「今日は諦めて朝がくるまでどこかで過ごそう…。」
街中から外れた河川敷に向かいそこで朝まで過ごすことにした。よくホームレスが河川敷で暮らすとかTVでみることはあったがまさか自分がそうなるとは思ってもいなかった。
「一体なんでこんなことになったんだろう・・・。」橋の下でうずくまりながらそんな空しく悲しい気分になっていた・・・。涙がとめどなくでてきた。
「もう生きてても楽しくないよな・・・。いっそ河に飛び込んで死ぬか・・・」そんなことを考えていたところ・・・ひときわ甲高い声が聞こえてきた。
声の主「ウィーーー!!!ヒック。おい、誰だあ~、俺の縄張りにいる奴は―!!!」
声の主は千鳥足になりつつもタケルの前にやってきて睨めつけてきた。見た感じ60過ぎの爺さんのようだった。相当、酔っぱらっていたが怒鳴る感じの勢いでタケルに突っかかってきた。
「ヤバイ、殺される・・・。」タケルはそう覚悟した・・・。