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永遠のデスシンフォニー  作者: 楠木 蓮華
第一幕  月光の剣と一握りの勇気
8/9

桜のようにきらめいて

やっと投稿できました。遅れて本当に申し訳ないっ


それでは楽しんでいってくださいね


(敬語だと堅苦しいかと思い、少し砕けた話し方にしてみました)

「取り消せよ……さっきの言葉」


俺はテネブルを先生に向ける。見た目よりも軽過ぎず重すぎない、俺が扱うには丁度いい感じもテネブルだった。長年使い込んだ道具のようにしっくりとくる感じがする。


先生は俺の方を見ながら、少しフンッと鼻で笑い。


「お断りします」


そう言って立ち上がる先生。吹き飛ばされただけだから、ダメージは受けてないようだ。


「それにしても……それが貴方のテネブルですか。テネブルだ・け・は、美しいですね」


「酷い言い方だな!?」


 さらっと、だけはってところを強調してくる先生。男嫌いというか単純にSなだけなんじゃないだろうか。


「なにを言っているんですか? 貴方のようなダメクズ男にテネブルだけでも妥協しているのですから、感謝して欲しいです」


あ、駄目だ……この人、ドSだったわ。


「と、とにかくだ! あの言葉は取り消してもらうっ!」


俺が言い放つと先生が両手に、クナイ型のテネブルを逆さに構える。


「貴方が戦うというのなら、それもいいでしょう。ですが、貴方を殺すことに変わりはありませんが……」


この学園から居なくなってもらうことから、殺すことに昇格してしまった。男嫌いっていうレベルじゃないだろう……と心の中でツッコミを入れる。


「俺も殺されるのは別に構わないけど……さっきの言葉を取り消してもらわないといけないからな」


俺も西洋型のテネブルを構える。真剣を持ったのはこれが初めてなのもあってずっしりとした重みを感じた。それがただのテネブルの重みだけだったのかはわからなかったが、取り敢えず剣道を習っていた時の要領で中段に構える。


「なぜそこまであの言葉を取り消すことを要求するのか……正直、わかりませんね」


「俺を馬鹿にするのは構わないけど、母さんを馬鹿にするのは許せないんだよ!」


その後はぴたりと会話が止まった。よくある剣で語るということだろうか……俺もこれ以上話すことはなかったから好都合だが。このピリピリした雰囲気でいるの辛いから早く始めたい。


「喰らいなさい」


突然、テネブルを投げてくる先生。俺は精神を集中させ、飛んでくるテネブルを目で確認し剣を片手に持ち直す。確認はできたものの追うことは出来なかったが、その瞬間左足を瞬時に下げて体を左側に捻る。


「はぁぁ!」


テネブルを捻った方と逆側に向かって薙ぎ払う。火花が散り先生のテネブルを二本とも吹き飛ばす。


「っ!?」


すぐに新たなテネブルが飛んでくる。その場でかがんで避け、重心が前の方にかかり、その勢いで爪先に力を入れ、前に跳んで剣を振るう。


「やはり避けるのは上手いですね、ですが……それだけでは私には勝てませんよ」


跳躍して避けられ、木々の生い茂っている所へ身を隠れた先生。いや……隠れたというよりも、この地形を利用したってことだろう。


「これじゃあ、どこから来るのかわからないな」


前後左右を見てみるも人影なし、耳を澄ましても音は聞こえない。ただえさえ格上の相手だというのに地形さえも利用されてしまったらこっちは手も足も出ない。


その時、ヒュッという音が聞こえてすぐに辺りを見回すと。


「なっ!?」


後ろから沢山のクナイ型のテネブルが飛んできていた。避けようと思ったが、一本や二本と違って飛んでくる範囲が大きいため避けることはできなさそうだった。


「一応先生ですから、最初で最後の指導をしてあげましょうか」


奥の方から先生が立っていて、その周りにはまだ大量のテネブルが浮かんでいた。


「指導ってなんだよ! くっ……らぁ!」


剣を肩に担ぐように構え、飛んでくるテネブルを出来る限り弾き返す。クナイが迫ってくる様相はまるで大粒の雨が降っているようだった。


だがしかし……


「ぐっ!?」


クナイが右足と左足、左手の二の腕に刺さる。やっぱり全部を弾き返すのは無理だったみたいだ。そして俺はそのままテネブルを支えにしてその場にうずくまる。


「テネブルには人それぞれ、能力……アビリティがあるんです。」


「アビリティ?」


「ええ……私の一つ目は無限増殖、テネブルはどんなものでも最高二つしか作ることはできません。ですが、私のアビリティで無限に増やすことができます」


「一つ目ってことは……二つ目もあるのか?」


「貴方に教える義理はありません」


「まぁ……そうだよな」


ということは俺にもなにか能力がある可能性があるのか。じゃあ、一か八かそれに賭けてみるか……


「アビリティに賭けてみよう……などと考えているのかもしれませんが、そんなにすぐに発動できるわけありませんよ」


出鼻をくじく様な言葉を剛速球のごとく投げてくる先生。確かにそうだ……特に俺は本番に弱いタイプで、こういう時に成功したことはほとんどない。俺の淡い考えは割れた風船のように萎んでいった。


 しかし……諦めかけていた時……ふと、母さんが言っていた言葉を思い出していた。あの頃は気にもとめなかったが、今になってその言葉を思い返してみると、俺の中で何か……今までに感じたことのないような感情が溢れ出してくるような、そんな気がした。


「出来る……」


「はい?」


「出来る……俺には出来る」


「なんですか? ついにおかしくなってしまったんですか?」


「違う! 自分には出来るって信じていれば、少なくとも自分自身で出来る可能性を無くすことはないだろ! だから俺は人生で初めて自分を信じてみるんだよ!! 母さんが……それを願っていたからっ!!」


「っ!?」

 

 その瞬間、俺のテネブルが眩い光を放つ。それはまるでライトシアンの色の炎を纏っているようにも思えた。そしてその光は勢いを増していく。


「いくぜっ! 聖者の咆哮セイント・ロー!!」


勢いよく剣を振り下ろすと同時に頭の中で浮かんだ技名を口にする。すると、その剣から先程までテネブルが纏っていた光が閃光となって先生に向かって飛んでいく。地面を抉りながらすごい速さで迫る閃光。


「こんなもの、避けてしまえば……っ!?」


先生は俺が最初にテネブルを地面に叩きつけて割った地面に足を取られる。そして、聖者の咆哮は先生に迫っていく。


「え……?」


その時、俺は見たような気がした。先生が聖者の咆哮を喰らう瞬間、優しく微笑むそんな表情を。だがしかし、それを完全に認識する前に先生は聖者の咆哮に呑み込まれ、いきなりテネブルを使ったことに体が耐え切れなくなったのか、俺の視界は霞んでいき、そのまま倒れて俺は意識を失った。

 


**



「んっ……」


私が目を開けたとき、そこは学園の保健室だった。体を起こし、周囲を確認する。体にも大きな怪我はなく、かすり傷ぐらいだった。どうやらあの男の攻撃を喰らう瞬間、テネブルの力を使って体に障壁を張ったことが幸をそうしたみたいだった。でも私を気絶させるなんて……それに


「あの言葉は……」


そしてあの戦いの時の記憶を呼び覚ます。最後、あの男が口にした言葉は……数年前、私があの人……私の先生にも言われたことがある言葉だった。


私は家族というものに恵まれることはなかった。生みの親の父は乱暴な男で、いつも母に暴力を振るっていた。そのせいで母は私をおいて何処かへ行ってしまった。そして私に待っていたのは父からの暴力と性的虐待だった。最初は触れたりするだけだったが、徐々にその行為はエスカレートしていき……過激なことを要求するようになっていた。男に苦手意識を持ち始めたのは丁度その時からだと記憶している。


 そしてある時、私は目隠しをされて何処かへと連れていかれた。そして待っていたのは、沢山の男達だった。男達は縛られて身動きの取れない私に迫り、その汚らわしい手で私の体を弄った。どれだけ叫ぼうと父は遠くで笑いながら……言った。


 『お前の母親も、お前も……俺の人形にすぎない』


 そう言われた時、私の頭の中は真っ白になった……


 そして気が付くと、私の周りにはクナイのようなもので体をズタズタに貫かれている男達で溢れていた。男達は識別できないほどめちゃくちゃにされていて、父がどれなのかもわからなかったが唯一、私が手に持っていたクナイを見て、これは私がやったんだと理解し……不思議と落ち着いていた私は、罪悪感どころか言い表せない幸福感を抱いていたような気がした。だが、私は涙を流した……悲しくないはずなのに、涙が溢れてきた。


 なんで……そう呟いて月明かりを見上げていると、突然誰かに抱きしめられた、それが先生だった。その温もりにただただ抱きしめられ……私は初対面の人の腕の中で眠るように気を失った。


 その後は、今の学園長と先生に連れてこられてこの学園に入学。先生は学園長とともにカオスというバケモノを殺すことをしていると聞いた。私はテネブルのことやカオスのことを教えてもらい。私は先生に恩返しの思いと、自分に出来ることがあればという想いで志願した。その時、私は何も出来ないかもしれないと言ったとき、さっきの言葉を言われた。


 そして何年か経った後、先生は手紙を残して何処かへ消えてしまった。手紙には短くこう書かれていた。


 -運命というものに抗ってきます。貴女は私がいなくてもきっと……大丈夫。頑張ってね 先生より-

   

 と書かれていた。私はその場で泣き続けた。唯一の心の拠り所が無くなってしまったから、それでも……先生が私ならできると信じてくれたのだから、絶対に頑張ろう……と、彼女達……私の生徒を救ってみせるとそう今は思っている。私が先生に救われたように……


 「ふぅ……」

 

 私は一度息を吐き、ベットから降りて保健室の窓を開く。外はもう暗くなっていて、あの時のような月明かりが私と……満開の花を咲かせた桜の木を、照らしていた。私はその月明かりと桜の木に誘われるように保健室を出た。 



 **


「んっ……見たことがある天井だ……」


 どうやら俺は、また気を失っていたんだな。先生との戦いの後、どうなったのかはわからないが……死んでないところをみると負けてはいないみたいだ。


「って……寒っ」


保健室の中には、どこからか冷たい風が流れ込んできていた。保健室のベットの周りにはカーテンが掛かっているが、そのカーテンを揺らすくらいの風が吹いていて、この季節だとやっぱり寒い。


「窓でも開きっぱなしなのか……? って、やっぱり開きっぱなしだな」


ベットから起きて立ち上がり、窓の方を見ると窓が全開していた、あれじゃあ寒いだろうな。そしてあれからどれくらい寝ていたのか、外は暗くなっていて……保健室の中を月明かりが照らしていた。


「閉めよ……」


このままじゃ凍えて死ぬ。 そう思って窓を閉めに行くと……


「あれって……」


窓の外を覗くと、そこには広い草原の真ん中にぽつんと大きく咲いている桜の木があった。もちろん、その桜の木の美しさに目を惹かれていたのも事実だが、もう一つ理由があった。


「先生、あんなところで何やってるんだ?」


そう、あのドS先生が桜の木に手を当てていたのだ。なにかの儀式か何かかな? 気になった俺は、保健室から出て桜の木の元に向かうことにした。



**



「寒すぎるっ! なにか着てくればよかった……上着とかなかったけど」


体を震わせながら色々と愚痴り……今は外にいる。先生のことが気になったことは否定しないが、あのままだと風邪をひくかもしれないしな……また殺されそうになるかもしれないけど。


 「あれか……それにしても大きい桜の木だな」


 まだ距離があるにも関わらず桜の木ははっきりとその大きな姿を見せていた。そして月明かりが桜の木を照らしていてる。その姿は妖艶な美しさを放ち、何もない草原さえも特別美しく見え、風もその桜の木を揺らして美しさを際立たせていた。


 「……私には、貴女みたいに……あの子達を救うことは出来ない」


 「っ……」


 桜の木に近づくと先生の声が聞こえてきた。あの子達っていうのは咲達のことだろう。でも俺は咄嗟に太い幹の反対側に隠れてしまった。防衛本能なのかもしれない順応が速いことにびっくりだ。それにまた刺されるのはごめんだからな。


 「私は貴女のような包容力も、優しさも、持ってないんだから……」


 「……」


 静かに耳を澄ますと、声からでもわかるほど……先生は悲しい雰囲気だった。俺を殺しにかかっていた時の声の張りもなく、上から目線のドSでもない……ただの弱々しい女性がそこにはいた。


 「ごめんなさい……ごめんなさい……」


 覗いてみると……そこには、その場に座り込んで俯いたまま泣きじゃくる先生がいた。俺はその時、理解してしまった。先生は自分の無力なことだけで悲しんでいるのではないことに……でも俺から先生にしてあげられることはないだろう、あって時間も経っていないどころか……先生は男嫌い、どうしようもない。


 「私はやっぱり人形……他人に好き勝手に使われるマリオネットにすぎないようね……」


 「それは違うっ!!」


 「っ……貴方は!?」


 何やってるんだろう……俺、何もできないとわかっていながら首を突っ込むなんて、俺らしくない。


 「俺を殺そうとしたのは皆のためなんだろ? 男である俺が皆に変なことをするかもしれないって心配したからなんだろ? だったら先生は皆を守ってるし、そうやって誰かを守ろうとしてる人が人形なわけないだろうが!!」


 「っ……」


 俺はいつからこんな物語の主人公のようなことを言うようになったんだろうか……俺はこんなことを言っていいほどまともな人間じゃないし、こんな偉そうなことをいう資格なんて……


 「貴方にそんなこと言われる筋合いはありませんよ」


 「す、すみません……」


 ほら思った通り、というか俺だってこんなことを言われたら同じことを言うだろうし。


 「でも……」


 「へ……?」


 「貴方確かに、ダメクズ男ですけど」


 「うぐっ……」


 「お人好しなところは認めてあげますよ」

 

 そういいながら微笑んだ彼女の顔にはもう涙はなく、桜の花に負けないほど美しくきらめいた笑顔をしていた。

   

 「そ、それは褒められてるんですかね」


 「もちろんですよ。こんな男に名前を教えるのはとても遺憾ですけど……私は比嘉香純ひがかすみです。よろしくお願いしますね」


 「よ、よろしく、俺は九葉蓮」


 そういって握手をしようとすると……


 「おわっ!?」


 比嘉先生はいきなりテネブルで俺の手を切り裂こうとした。


 「あ、危ないだろっ!?」


 「誰が私に触れていいと言いましたか? 汚らわしい」


 「えぇぇぇ!?」


 全くの理不尽である。いきなり握手をしようとした俺も悪いけど、汚らわしいはないだろうに……うっ、小学生の頃の記憶が。


 俺がうなだれていると……


 「そうでした……明日から授業を始めますから、きちんと遅刻しないようにしてくださいね……それから、貴方の母親を悪くいったこと、すみませんでした」


 「はい?」


 「それではおやすみなさい」


 そう言って校舎の方へ歩いていく先生。


 「な、なんなんだよ……まったく」


 一応、先生公認ということでいいんだろうか……一応取り消してくれたみたいだし……結果オーライかな、っと、とにかく俺の部屋に行って寝よ。今日はいろいろありすぎて疲れたし。


 そして俺は学園の校舎の方に歩き出したのだった。


 ……その後、咲達と会って自分の部屋に行くまで学園内で迷子になって夜が明けてしまったのは、また別のお話。



  ** 



 ーー少年は励まし、一歩前進するーー 


 ーー少年は男である前に男の娘であるーー


 ーーそんな少年にも少しは息をつくーー


 ーー前を向くためにーー 


 



 



 



 







ここまで見てくれてありがとうっ


ここまで書いた自分の感想は、比嘉先生もヒロインみたいな感じに……むしろヒロインよりもヒロインらしくなってしまった気がしました。


やってしまった……しかし後悔はしていませんっ(キリっ)


次回はなるべく早く投稿できるように頑張ります


それから、これは皆さんの意見を聞きたいのですが。九葉蓮に着てほしい服はなにかありますか?


もちろん女ものの服ですがね(黒笑)

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