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永遠のデスシンフォニー  作者: 楠木 蓮華
第一幕  月光の剣と一握りの勇気
7/9

男嫌いと……取り消せよ

また日が空いてしまいましたが、投稿します。


ゆっくり楽しんでいってくれれば幸いです。

あのラッキーな……いや、悲惨な事件から目が覚めた後は、咲からの謝罪の連続だった。こっちからしたら咲の方が被害者なわけで謝られるのは申し訳ない気分だった。忘れてくださいと言われたものの、あれを忘れられる訳がなかった。自慢ではないが……年頃の男な訳だからな。


「はぅぅ……また恥ずかしいものを見られてしまいました……」


そして今だに顔を手で隠しながらもじもじしているわけである。あ、もちろん服は制服に戻ってたよ。いつまでもあの姿でいるわけにはいかないだようし……少し残念に思っていたのは気のせいだと思いたい。


「まぁ、見られちゃったのは仕方ないし。ほら、今度は蓮の番よ」


「なにさらっと流そうとしてるんですかっ! 元はといえばクロさんのせいでしょうっ!?」


「なんのことかしら~?」


とぼけてそっぽを向くクロにジト目を向けている咲。なんだかんだ言って仲がいい……


「許しませんからねっ! 今度という今度は~っ!」


「今度は何かしらね~」


「待ちなさ~い!」


そう言ってシミュレーションルームで逃げるクロを咲は追いかけていた。


うん……仲いいよな、うん。


「あはは~、また始めちゃったねぇ」


「いつものことだし……もう気にしてない」


どうやらこういうのは日常茶飯事のようだった。本当に仲がいいのか不安になってきた……いや、喧嘩するほど仲がいいっていうもんな。


「二人は置いておいて、次はお兄さんが直接やってみよっか」


「え……?」


俺はその言葉に呆然とする。今度は俺が直接やってみる……その言い方だと俺もあのテネブルを使えるってことなのか……?


「たぶんお兄さんが考えていることはあってると思うよ。実はお兄さんをこの学園に運んだ時に体を調べさせてもらったんだけど、私達と同じ力を宿してることがわかったんだよっ」


「ほ、本当か!?」


俺がそう問うと、汐織ちゃんはうんうんと頷いた。


「でも……どうして」


俺は思った。今までにそんな力があるなんてことはわからなかったし。この年になるまで変な事件に巻き込まれたことも……多分なかったはずだ。なのになんで……俺の体が今の状況になったことに関係しているのかも。


「学園の外に出てたカオスの気配がなくなったことを考えると、お兄さんが倒したと考えるのが妥当だよね」


「でも俺はそんなことをした記憶がないんだけど」


そう、俺はあのバケモノを見て女の子が襲われそうになっていたところからの記憶がないんだ。気を失う前に誰かの声が聞こえたような気もしなくもないけど、よくわからない。


「たぶんだけど、無意識にやってしまったのかもしれないね。私達の力は強大だから、そんなことがあっても不思議じゃないよ」


「そうなのか……」


「うん、でもそんなことをずっと続けていたら危険だからね、早いうちに力を制御できるようにしないと」


「でもよくわからないんだけど……」


「慣れるよりも慣れろだよっ、成せばなる成さねば成らぬ何事も!」


と、汐織ちゃんが意味を理解してるのか不安になるような言葉を連呼しながらシミュレーションルームの中心に連れてこられる。


「相手は私が……」


と唯楓さんが手を挙げて言おうとした時。


「お待ちなさい」


「へ?」


突然、声が聞こえて変な声を出してしまった。それは気にせずに声がした方を見ると……。


「貴方の相手は私がします」


そこには黒髪のショートヘアにワインレッドの瞳。メガネをかけてネービーブルーのスーツをピシッと着て網タイツを履いた先生と呼ばれている割には若い女性がそこにいた。


「貴女は一体……」


「あの人は私達の先生です」


遠くから咲が教えてくれる。


先生って、咲達がカオスと戦う前まで学園長と共に戦ってたっていう……あの。


「自己紹介はどうでもいいです。早く始めましょう」


俺を冷たい瞳で見ながら近づいてくる先生。そのプレッシャーは俺の肌に突き刺さるような気分だった。どうにも居心地が悪かった。俺はこの人とは初対面のはずだし、なにかしたわけじゃないと思うんだけど。


「仕方ない……先生は大の……男嫌い」


「は?」


男嫌いって……そんなことであんなにプレッシャーかけられてるの!? ということはあれか!? この学校に男を入れるなんて反対でそんでもって……


「私が勝ったら、この学校から消えてください。即急に」


思った通りだった~~!? いや、確かに俺がここにいる理由は力があるってだけだけど、ここで追い出されると路頭に迷うことに……それは困る。


「さて、はじめましょうか」


パチンッ、と先生が指を鳴らすと……景色が一瞬で変わり、今までの何もない空間にはたくさんの木と根っこが這いずり回る物々しい空間に変わってしまった。


「な、なんだこれ……」


「シミュレーションルームがただの体育館だとでも思っていたんですか?」


「っ!?」


突如、俺の背中を悪寒が走った。その悪寒に任せて俺は横に跳んだ。


「危なっ!?」


俺がいたその場にはセピアのクナイが刺さっていた。そのクナイは薄暗い空間の中でキラリと光は、俺の恐怖心を刺激してくる。


「あの攻撃を避けられるとは思っていませんでしたよ、クソ変態女男」


そう言って木の枝の上から見下ろして……いるでだろう先生。だろうと言っているのは、この薄暗い中であの先生の姿を視認する事が出来なかったからだ。それから……クソ変態女男って、嫌われすぎだろ俺。


「偶然ですよ偶然……」


あまりの緊迫感に敬語になってしまった。


「そうですか。では次は殺しますから、逃げてもいいですよ。ただし、殺されることは避けられませんが」


「そ、そうしますっ!」


急いでこの場から走り出す俺。なんで俺はこんな目に合っているのか、俺がなにかしたんだろうか。それともあれか、生まれてきたこと事態が罪だと言うのだろうか。なら謝りますから許してもらえませんかね!?


「うぉ!?」


また背中に走った悪寒を頼りにしゃがむ、俺の頭上を何かが通る音。そして髪を少し揺らす程度の風。深くしゃがんでなかったら頭突き刺されてるところだった。


「また避けますか、さっさと頭から血しぶきを出していればよかったものを」


「断固お断りしますっ!」


さらに早く走って逃げる。唯楓さんが言っていた通り、体が強化されているのだろうか……ただの男だった頃よりも断然に早く走れている気がした。やっぱり俺はテネブルの力を持っているのかもしれない。


「あっ……ここは」


走り続けていると、木が周りにないぽっかりと穴があいたかのような空間が存在していた。


「なんでここは木がないんだ……?」


「それは私がここら辺の木を吹き飛ばしたからですよ」


その声に反応する前に体になにかを突き刺されたような感覚に襲われた。


「へ……?」


心臓のあたりに手を伸ばしてみると、そこにはクナイの先が飛び出ていた。ような……ではなく、どうやら刺されていたようだ。


「さようなら……クソ変態ヘタレ女男」


「増えてるって……」


俺はその場で倒れ込む。辛うじて気を失ってはいないものの、たぶん時間の問題だろう。


あぁ……ここで終わりなのかな……ごめん……母さん。



**



「せ、先生なにやってるのよ!」


「あのままじゃ本当に死んでしまいますっ!」


「男嫌いも……困る……」


先生によってシミュレーションルームを管理する部屋に送られた私達四人。くろちゃんと、さきっち、ゆきゆきはお兄さんの下へ行こうとする。


「ストップだよ、三人とも」


私は両手を広げて道を遮る。


「なんで邪魔をするんですか!? このままでは本当に蓮さんが死んでしまいますよ!?」


大きな声を出しながら睨んでくるさきっち。さきっちもこんな表情が出来るんだから、人は何かしら抱えてるものだよね。私は過去に思いをはしながら口を開いた。


「お兄さんはあんな事では倒れないよ、絶対に」


そうだよね、イレギュラーなお兄さん。


その時、シミュレーションルームの方から突然、爆音が私達がいる隣の部屋まで響いた。


「な、なんの音!?」


くろちゃんがシミュレーションルームを見ることが出来る窓ガラスを覗いた。それに続くようにさきっち、ゆきゆきの順で窓のガラスへ向かい、シミュレーションルームを覗き込む。


「これって……」


「なにがあったんですか? ……って、あれは!?」


さきっちがシミュレーションルームを見た後絶句する。私は三人の隙間からシミュレーションルームを覗く……そこには吹き飛ばされた先生と、スノーホワイトの西洋剣を持ったお兄さんが立っていた。


「綺麗な……剣」


ゆきゆきが呟く。確かに、お兄さんが使っているテネブルはスノーホワイトの容貌とさらに、白い光に包まれていた。その暖かい光はまるで……優しさを具現化してるかのようだった。それも私の記憶とは違った。


「お兄さん……イレギュラーのお兄さんの力、私に見せてね」


私は窓ガラスに手を当てて、三人に聞こえない程度の声でそうつぶやいた。



**


俺は今……地面に這いつくばり、どうしてこうなったのかと自問自答を繰り返していた。先生と呼ばれていた人物に戦いを挑まれ、心臓は避けられたもののテネブルで刺されて瀕死の状況。


「仕留めたと思いましたが、貴方は運がいいですね」


そう……心臓を刺されなかったこと事態俺からしたら奇跡だった。だがそれ以前になんで俺はこんな目にあっているんだろうか……男嫌いと言うだけでここまでのことをするか、普通は。


「貴方はなぜ自分がこんな目にあっているのかと考えているのでしょう。その答えは一つ、貴方が男であるから……それだけです」


「理不尽だろ……げほっげほっ」


全く持って理不尽だ、理不尽な世の中だ。 突然こんなことに巻き込まれて、新しいことが始まって……これからの人生が変わっていくのかもしれないと期待していたのに……もう、このまま寝てもいいよな、もう限界だ……。


俺が全てを諦めて目を閉じようとした時……。


「まったく……貴方のような子供を産むなんて、余程最悪な母親だったんでしょうね」


「なん……だって」


今この女はなんて言った……? 最悪な母親? 誰のことだ?


「なにかしら?」


「今のこと……誰のことだ?」


「聞こえなかったのかしら? 貴方の母親は最悪な人なんでしょうねって言ったのよ」


俺は俺の記憶の中にある母さんを思い出していた。優しかった母さん、厳しかった母さん……暖かかった母さん、そんな母さんを……。


「取り消せ……」


「何か言った?」


「今のセリフを取り消せって……言ったんだ……」


「それは無理な話ね」


その瞬間、例えるなら水の雫が溜まった水に落ちていったような……そんな感覚に陥った。不思議な感覚だった、何をすればいいのか。わかったような気がした。


「俺に力があるなら……その力を俺に使わせやがれ! テネブル!!」


俺は手元に作られた物を右腕で掴む。その武器を……俺に這いよる闇を切り裂くために。


「きゃっ!?」


俺はその武器を地面に叩きつけて先生を吹き飛ばす。その武器を……西洋剣をゆっくりと持ち上げ吹き飛ばされている先生に剣先を向ける。


「さぁ……取り消してもらおうか、さっきの言葉」



**



ーー少年は激怒しーー


ーー力を使うーー


ーー聖職者に武器を向けーー


ーー己の思いをぶつけるーー


ーーその先に待つものとはーー




読んでいただきありがとうございます。


今回は主人公が初めて怒る……簡単に言えばそんな話でした。


次回はまた戦闘シーンを書くつもりなので、駄文ではありますが読んでいただければ嬉しいです

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