闇と力と……肌色と
だいぶ遅くなりましたが、投稿しました。
今回は駄文ながら戦闘描写を書かせていただきました。
それではゆっくりお楽しみください。
咲が泣きやんで落ち着くのを待ったあと、再び席についた。顔を真っ赤にしながら謝罪する様子は、会って少ししかたってない俺でも咲には心を許してしまいそうな感じがする。つまりは真面目で純心なんだろう。
「さてさて、それで続きだけど。どこまで話したっけ?」
そう汐織ちゃんが言うと。
「カオス達がこの学園からしか現れないってところまでよ」
と、クロが補足を入れる。なんだかんだ言って汐織ちゃんが授業をするのを手助けしてる当たり、仲は悪くないんだろう。
「そうっ! それでカオスについてなんだけど、まだあまり解明されてないんだよね~。」
「そうなのか?」
「そうなの~、ひとまずはこれを見てみて~?」
そういうと液晶の黒板をスライドし、なんだか複雑そうな表とさっきの学園の敷地の地図が出され、ところどころに赤い斑点がついている。
「これって学園の敷地……だよな? あとその赤い斑点は一体……」
「うんっ、これはね~、カオスが今までに現れた数なんだよ~」
「こんなにたくさん!?」
地図を見たところ百はくだらないぐらいの斑点があった。そういうことはつまり、それだけの数のバケモノがこの学園に現れたってことになるのか……
「私達が編成されてからも何十回か戦ってるけど、それまでは学園長とか、先生が戦ってたの。でもカオスは倒すと直ぐに消えちゃうから調べることもできないし、この通り出てくるところはランダムだから予測することもできなくてね~」
つまりは敵……カオスに対する情報は全然集まってな言ってことか。人であろうがなんであろうが、それに対する情報がないのは物事の進行にとっては致命的だな……
「でもわかってることもあるよ~?」
「なにがわかってるんだ?」
汐織ちゃんがまた液晶の黒板をスライドすると、今度は虫の形をしたもの、魚の形をしたもの、獣のような形をしたもの。そして、ドラゴンの形をしたものの映像が映し出された。
「カオスには今のところ四種類が確認されてて、私達はレベルでその四種類を表してるんだよ~」
「レベル?」
そう俺が聞き返すと、汐織ちゃんはうんうん、と頷きながら答えてくれた。
「そう、虫の形をしたものをレベルⅠ。魚の形をしたものをレベルⅡ。獣の形をしたものをレベルⅢ。架空の生物の形をしたものをレベルⅣ。ってことになってるんだ~」
「なるほどな……」
つまり、敵の様相を戦う前に知れるってことか。
「そして、重要なのはこのカオスと戦う時のこと」
確かにそれは重要だ、だが自衛隊が動いているのなら問題になっているだろうし、突然現れたカオスに対応できる訳が無い。
「って、さっき汐織ちゃん達が編成されたって言ってたけど……」
「そうっ! 学園長と先生だけでは限界になって、今戦っているのは私達ってことになるんだよ~」
やっぱりそうなのか、と俺は一応納得した。だがしかし、それと同時にもう一つの疑問もでてくるわけで……
「戦えるのは学園長と先生……それから皆だけなのか?」
そう聞くと、こくっと汐織ちゃんが頷きながら言った。
「そうなんだよ~、全世界を探してもここにいる四人と、学園長と先生だけしかカオスと満足に戦えないんだ~」
なるほど、だからこの学園は世界全てからお金を集めて作り出したのか。カオスが出てくる場所に学園を作り、そこに倒せる人を通わせてるのか……カオスを外に出させないために……。
「そしてっ、私達に与えられているカオスと戦う力のことを~、はいっ! ゆきゆき~!」
びしっと、唯楓さんを指さす汐織ちゃん。唯楓さんはゆっくりと立ち上がり。
「テネブル……という名前で、具体的なことは不明……わかっていることは、武器や鎧などになること……使用者の戦闘能力を底上げすること……」
「は~いっ、ゆきゆきだいせいか~いっ!」
テネブル……か、やっぱりこれも具体的にはよくわかっていないのか。ということは……自分の扱う力さえ、不明瞭なまま使うほど非常事態だってことになるんだな。そんな危険が伴うかもしれないこともみんなはしてたのか……。
「まぁ、こればっかりは実際に見てもらった方が早いよね~」
「実際に見る?」
俺が聞き返すと、汐織ちゃんはニヤリと小悪魔のような笑みを浮かべて天に拳を突き上げた。
「さぁさぁ、臨時の戦闘訓練! シミュレーションモードにキラキラてれぽ~と!!」
そう言って指を鳴らすと、俺達の席の下の床が光り始めた。机と椅子の周りを丸く囲むようにして輝く光はやがて収まり……
「へ?」
突然の浮遊感に襲われる。
「って、なんで落ちてるんだぁぁぁぁ!!」
気づくといつの間にか床が消え、俺はそのまま下に落下していった。落ちていくとだんだん俺の体が光り始め、体の感覚が薄れていくような気がした。あ……これ死んだわ。拝啓、母上様……意味もわからずに死んですぐに貴女のもとえ行ってしまう私をお許しください。
と、心の中で死を覚悟した時……
「あれ……?」
すとんっと体に感覚が戻り、どこかに立った感覚がした。恐る恐る目を開けると。
「な、なんだ……ここは……?」
そこは見渡す限りグレーの場所だった。広さはとても広く、あまりの大きさに言葉を失うほどだった。
「ここはねぇ、普通で言うところの体育館だよ。私達はシュミレーションルームって呼んでるんだぁ。簡単に言うとカオスと戦う練習をしたりするところなの」
「なるほどな」
確かに納得だ。あんなバケモノと戦うんだからこれくらいの大きさはあって当然だろうな。ってさっきの感じは一体何だったんだ?
と、考えていたところで。
「ちなみあの移動方法はテレポートだよ。テレポートはこの学校に備えられたもので、この広い学園の敷地内を簡単、且つ早く移動するために作られた機能なんだよ~」
そう汐織ちゃんが教えてくれた。物凄いことなのだが、もうこんな奇想天外なことにも思考が慣れてきた。まぁ、慣れてはいけないと思うんだが。
「さてさて、それじゃあテネブルの戦闘訓練を開始するわけだけど、最初は見本をお兄さんには見てもらうね。くろちゃん、さきっち。模擬戦おねがいねっ」
「わかったわ」
「はい」
返事をしながら俺達から距離を取り、お互いも九歩くらいの距離を取る二人。そして心臓のあたりに握った拳を添えて、目を瞑った。
「テネブル!」
「テネブル!」
テネブルと、二人が発した瞬間。黒い光が二人を包み込み、一瞬にして弾けた。するとそこには、黒に血のように赤い線が入った双剣を持つクロと、ライトブルーの日本刀を腰に構えた咲がいた。
体操服にブルマをいう格好で……。
「なぁ……汐織ちゃん」
「なに~?」
「なんで二人とも体操服にブルマなのかな?」
そう言うと汐織ちゃんは俺の方を見ながら、ぐっと親指を立て爽やかな笑顔を向けてきた。
「その方がお兄さん的には嬉しいでしょっ!」
「あ、あはは……」
嬉しいけど素直にうん、とは言えなかった。いや確かにね、体操服を着たことで咲の胸がさらに強調されてるだとか、クロのガーターベルトとか足とかが強調されてるだとか……
「べ、べつに、う、嬉しくなんてないんだからなっ!」
「お兄さんつんでれ~」
「いやっ、本当に違うからっ!」
汐織ちゃんと言い合っていると、遠くから声が聞こえてきた。
「言ってくれれば触らせてあげるのにねぇ、ね、咲」
そう咲のほうを向きながら言うクロ、咲の方を向くと自分の胸のあたりを隠し、顔を真っ赤にしていた。
「だ、だめですっ! だめですからねっ!」
「いや、わかってるからな!?」
「こほん……そろそろはじめよう……ね……」
ね、を強調されて言う唯楓さん。少しご立腹のようだ、当たり前だと思うけど。そうだよね、今から模擬戦を見せてもらうんだから真面目にやらないと危ないよな……うん、本当にすみません。
「はいはい、わかったわ」
「まったく……」
クロはクスクス笑いながら、咲は呆れたようにしながらテネブルを構える。すると、先程までの雰囲気は消え緊迫とした雰囲気に変わる。二人からは笑顔が消え、真面目な表情になる。
「それでは……模擬戦を開始します。三……二……一……」
ごくり、と唾を飲み込む。唯楓さんのカウントダウンが始まり、模擬戦の開始が近づく。
「模擬戦……始めっ!」
「ふっ!」
「はっ!」
ガキンッ! という音とともにテネブルが重なり合う。あの距離を一瞬にしてつめて斬りかかり、目にも止まらぬ早さで斬り合う。既にテネブルは見えず、テネブルが重なり合う音とそれによって生まれる風しか五感では感じ取れない。
「す、すごいな……」
やっとの思いで吐き出した声も、それだけしか言えず。ただただ迫力に押されるしかなかった。
「これでも……テネブルをただの武器の用途でしか……使ってない分、まだ……マシ」
そう冷静に返す唯楓さん。テネブルがどんなものかわからない以上、その唯楓さんの言葉はただならぬ恐怖しかなかった。もう体操服きてるんだからストレッチだけならよかったのに。
「やっ!」
「っと…!」
横から薙ぎ払うような斬撃を放つ咲。それを跳上がりながら避けるクロ。そして咲のテネブルの上に立つクロ。
「流石は咲ね、油断したらやられそうだわ」
「それはこちらのセリフです……よっ!」
咲がテネブルを振り抜くと、クロはくるっと一回転しながら跳上がり咲と距離を取る。咲は短く息を吐くと目を閉じた。
「なんで目を……?」
「見てればわかるよ~」
そういって咲の方を指さす汐織ちゃん。
「鞘よ……私の声が聞こえるのなら、答えてくださいっ!テネブル!!」
「っ!?」
咲が唱えると、咲の前に刀と同じ色の鞘が現れた。咲はその鞘を手に取り、ゆっくりとその鞘に刀型テネブルを収める。そしてそのテネブルを腰のあたりで構え体制を低くする。
「今度はそう簡単には負けないわよっ!」
双剣を体の前でバツ印を両腕で作り、体制を低くするクロ。どうやら一か八かの賭けに出たようだ。
「いきますっ! 幽桜寺抜剣術……一ノ型……」
「はぁぁぁ!!」
ものすごい速さで距離を詰めるクロ。
「光指す闇……」
と発した瞬間、咲の姿が消えた。その後ものすごい強風が吹き、俺は思わず目を閉じた。風が収まった後、ゆっくりと目を開けると。
「っ……はぁ、また負けちゃったわね」
そうクロが言う。
「いえ、私が勝てたのは偶然ですよ」
そう言いつつ、刀型のテネブルを鞘に戻す。すると、クロのテネブルはパキッ、という音を立てて折れてまるで砂のようになり、さらさらと地面に落ちて消えていった。
「……ふぅ」
戦いが収まり、俺も一息をつく。あの二人の実力は戦いの初心者である俺にとってもとんでもないことは容易にわかった。だかしかし、一息をついたものの体が震えていることに気がついた。これは恐怖なのか……俺にはわからなかった。
「お疲れ様……二人とも」
唯楓さんは二人にタオルと、飲み物を渡す。
「ありがとね、小雪」
「ありがとうございます、小雪さん」
笑顔で受け取る二人、その姿を見るとあの時の二人なのか疑うほどの笑顔だった。
「あっ、どうでしたか? 九葉さん」
そう言って近づいてくる咲。
「あぁ、凄かったよ。とにかく迫力がね……」
「あ、あはは……やっぱりそうですよね」
少し頬を赤くしながら言う咲、やっぱりああいう姿を見せることは照れるのだろうか。まぁ、凛々しい顔もいいと思うけど……また赤くなって倒れられても困るし、黙っておこう。
「あ~、そうそう。 咲~」
「はい?」
遠くから手を振りながら咲の名前を呼ぶクロ。
「一応、私も咲に一矢報いたから……ねっ」
その直後、ビリッという音が響き。
「え……?」
「へ……?」
咲の声に気づき先の方を振り返ると……そこにあったのはスカイブルーと、肌色。
「あ……え……えっと……」
呆然と俺のほうを見る咲。俺も咲の方を見ながら時々目に入ってきてしまう豊満な胸と引き締まった体に目を奪われてしまった。健康的な肌色に、それを強調させるかのようなスカイブルーの下着。
「け、結構なお点前で……」
「はっ……」
やっとの思いで口にした俺の言葉で我に帰った咲は、体をプルプル震わしながら顔を真っ赤にして涙目になっていた。
「み、見ないでくださーーい!!」
「へぶっ!?」
俺は頬に走った鋭い痛みとともに……また、気絶した。俺……悪くないはずなのにっ。
**
ーー少年は力を知ったーー
ーー少女の力を知ったーー
ーーそして少年は力を使うーー
ーー相手はあの……ーー
ここまで読んでくださりありがとうございます。
近頃は感想やブックマーク、そしてびっくりするほどの評価をありがとうございます。
暇を見つけては評価やブックマークを見ていつもの通りニヤニヤしている今日この頃です。
ですが最近、執筆で頭を悩ませているのが、戦闘描写と少しえっちな描写です。そういうのは入れていいものか悩むこともあり、私の描写も上手くないので逆に見苦しくなってしまわないかと不安で仕方ありません。
と、いう心配もありますが、これからも不定期ですが投稿していきますのでよろしくお願いします