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永遠のデスシンフォニー  作者: 楠木 蓮華
第一幕  月光の剣と一握りの勇気
3/9

覚醒……そして知らない君

投稿が遅くなり申し訳ありません。

そして皆様、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。



「はぁ…はぁ…はぁ…」


あれから走り続けた俺は、ふと我に返った。辺りを見回すとそこは母さんと昔よく遊びに来た公園だった。その様相は変わっておらず、その時の記憶が今でも鮮明に思いだせる。


その光景と過去を思い返していると、改めて母さんが死んだことを実感する。そして思い起こされる肉片と血の匂い。


「夢だ……これは夢だ…夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ!!」


何度叫んでも、何度地面を叩いても……手から血が流れるばかりで覚める気配すらない。


「……現実だって……? こんなのが…現実…? ふざけるなよ……」


俺はその場で現実に呆然とするしかなかった。


その時……


「きゃーー!!」


「っ!?」


突然叫び声が聞こえた……俺の頭の中にはひとつの予想が生まれた。ただ、内心この予想は当たって欲しくなかったが……俺は叫び声が聞こえた方を確認するために震えている四肢を動かした。


「た、たすけ……て……ままぁ……」


そこには俺が当たって欲しくないと願っていた事態が起きていた。あのバケモノが小さい女の子に近づいている……頬っておけばきっと、母さんのように肉片と化すだろう……。


「そんなの……いいわけねぇだろうがっ……」


微かに漏れた声は掠れていた。震えている自分の体を自分の四肢で支えうずくまったままバケモノを睨む。そして心の中で呟いた。


助けなきゃ……母さんと同じ道を歩む人が出る前に……せめてバケモノの気を引くことができれば……。


思考を巡らしても考えは浮かばない……むしろ、より混乱していくだけだった。こんな時、自分のダメ加減が嫌になる。自分の弱さが嫌になる……何も出来ない自分が、すごく情けなくて……惨めに思える。いっそ死んでしまえたらどれだけ楽なんだろうかと……思ってしまうのだ。


「や……やぁ……たすけ…て…」


クソッ……どうすれば……どうすればいい……このままあの子の命もバケモノにくれてやるのか……そんなの嫌だ…でも……俺に何ができる…


「俺に力があれば……ほんのちょっとでいい……人を救える力が」


でもどうする? わからない。 なにをすれば? わからない。 どうにかしないと。 どうにかって?


自分の中で思考を巡らせる。それでもことは一方に進むことはなかった。


『大丈夫よ……』


「っ……」


暖かな優しい声の後、俺の意識は電源を切ったテレビのように突然途切れた。



**



 まだ肌寒い時間……三人の影が道路に伸びる。人の声は聞こえず、聞こえるのは風の音と三人の息を吐く音だけ。


「ここですよね?」


「そうね、カオスの気配はここらへんからしていたはずだけど」


「場所、移動しちゃった……のかな……?」


少女三人が慎重に捜索している。その姿は気取っているわけでもなく、とてもまじめに探していた。


「それはないんじゃないかしら? あの嫌な感じがするし……唯一安心出来ることは今日は人がいないことね。 いたらきっと大騒ぎになっていたと思うし」


「確かに、それは救いですね」


「うん……被害者が出る前に倒さないと…」


歩みを進めながら周りを観察してる。その姿は手馴れたものでバケモノのことはそれなりに知っているようだ。それぞれ顔をゆがめ、地面を見つめる……。


その時……


「っ!? あの光は!? 」


「私達と同じ!?」


「とにかく…行ってみよう…」


少女達が向かった先には天を突くかのように光の柱が伸びていた。その光は白と黒の光が螺旋のように絡まっていた。見た目は正直に言うと違和感があるようで違和感はなかった。光と闇が絡み合う……そんな姿はある意味違和感なく、世界にとっては当然のようにも思えた。



 **



 私は余裕な顔をして余裕じゃなかった。電信柱の天辺に立ちながら余裕な笑みを浮かべて内心焦りで満ちていた。


 「お兄さんが覚醒……」 


 これは驚く事だ。ただ私は普通には驚いていたわけではない。


 何でも知っていた私だからこそ驚いた。初めてだからこそ驚いた。お兄さんが白い騎士服に白い剣を持ち、佇むその姿にさえも違和感を感じていた。


 「目が死んでる……」


そう、お兄さん……九葉蓮の目が、顔が無表情だった。感情がなかった。


「こんなの、私知らないよ……」


 動揺と不安だけが増えていった……、この今が未来にどうかかわってくるのか。不安とは裏腹に九葉蓮の力は凄まじかった。一振り剣を振るえばかまいたちが起きてカオスの脚を切り落とす、意図したのかしていないのかはわからないがその攻撃の仕方は残虐だった。


 脚を全て切り落とし、動きを封じたところで蜘蛛型のカオスの目を一個ずつ刺していく。そしてもぞもぞと動いて虫の息のカオスに剣を振りかぶり、なんの戸惑いもなく切り裂いた。カオスからはカオス特有の黒い血が噴き出し九葉蓮にかかる。その姿は私が知っている九葉蓮ではなく……カオスよりも恐ろしいバケモノに見えた。


 その後、カオスを殺した後まるでマリオネットの糸を切ったかのように倒れた九葉蓮は変身が解け動かなくなった。


 「見て! 人が倒れてます!」


 「あたしはこの女の子を病院に連れていくわ」


 「私は、さっきの光の原因だと思う……この人を学園に……」


 「私も手伝います」


 私の知っている。私の知り尽くしているあの子達が来た。この子達を九葉蓮が……今の九葉蓮が守れるかどうかすごく不安になっていた。


 私は電信柱からまるで神様のように見下ろしていた。


 「本当に神様だったらよかったのに……」


 苦虫を噛み潰したような気分で空を見上げ……


 「ねぇ……どうしたらいいのかな。お兄ちゃん……」


 自分でもびっくりするくらい、久しぶりに弱音を吐いたのだった。そんな自分を振り払うように少し息を吸い。


 「瑞乃汐織がなに弱気になってるんだよ~! しっかりしろ~!」


 精一杯明るく振る舞う。その声は虚しく空気に溶けていった……。



 **


 「知らない天井だ……」


 人生で一度は言ってみたいセリフを口に出来たものの、あまり嬉しさは感じなかった。なんだか物足りない……そう、ここでツッコんでくれる人がいれば、と考えられるほどには俺は落ち着いていた。あれだけのことがあったにも関わらず。俺も意外と図太いのかもしれないな。


 「まぁ、とりあえず現状の確認でもするか」


 ベットに寝ていた体を起こして周りを確認する。この特有の匂いと周りの機材から察するに……


 「保健室か病院か?」


 なぜあの公園であのバケモノと対峙していた俺がこんなところにいるのかはひとまず置いておくとして。


 「ここはどこだ? 天国に行けるとは思っていないけど、死んだ後に行くのが保健室または病院に似た場所っていうのはちょっとおかしいと思うんだが……」


 取りあえず出てここがどこか探ることにした。丁度よくベットの横にはスリッパが置いてあったのでありがたく使わせてもらうことにした。使った理由は、あの時は動揺して靴を履くのを忘れていたからだ。


 「おいおい……どこのお城に迷い込んだんだよ、俺……」


 しばらく出て廊下を進んでいたが、そこは映画やドラマ、分かりやすく言えばファンタジーアニメに出てきそうな長い廊下を俺は歩いていた。病院にしては派手だし……保健室かなにかだったんだろうか。そう思いながら進んでいると……


 「ん? 声が聞こえるな……ここの人かな?」


 声が聞こえる方のドアに近ずくと声も大きくなってきた。どうやら随分と騒いでるみたいだな。俺は人間が持つ知的好奇心にしたがってドアに耳を当て聞き耳を立てることにした。


 「へぇ……咲、また胸大きくなったんじゃない?」


 「んっ……な、なに言ってるんですか! …ひゃっ」


 「エッチな声出しちゃってぇ……まさか誘ってる?」


 「誘ってませんよ!! 小雪さんも何かいってくださ……んんっ」


 「また大きくなって……ずるいです……」 


 「ひゃうっ……こ、小雪さんまでなんで揉むんですかっ」


 「理不尽に……対する怒り……です」


 「そんなの私知りま……んんっ……せんよっ!!」


 ……なんだろう、すっごく聞いちゃいけないものを聞いてしまってる気がする。と、とりあえず今のうちにここを離れないといろいろやばいよな。


 「ほらほら、廊下にいる人にもっと聞かせてあげなきゃ♪」


 「っ……ば…」


 ばれてる!? 俺、物音とか立てたか? 


 「き、聞いちゃだめですーー!!」


 「ぶがっ!?」


 何かがドアを突き破り俺の顔面に当たってそのまま俺は倒れた。意識がだんだん薄れるのを感じながら、俺はつぶやいた。


 「またかよ……」



 **



 ーー少年は覚醒しバケモノを狩るーー


 ーー一人の少女は少年に対して困惑しーー


 ーー少年は少女達と出会うーー


 

 

 


 


 





 






皆様読んでいただきありがとうございます。

楽しんでいただけたのなら幸いです。今年も、投稿が不定期な私ですが、今後も頑張っていきたいと思います。

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