one little (k)night
拍手に置きっ放しだったものを(今更)あげました
レイステン…マリ父
ノーラ…マリ母
オルガ…女官(長)
「え、もう帰っちゃうの?」
「またすぐお顔を拝見に参りますよ、陛下。それまで良い子で勉学に励んでください」
「やだよ、まだ帰らないでよ、レイステン」
「ルイ、お父さまもお母さまもおいそがしいんだよ。わがまま言っちゃダメよ!」
「なんで。マリだって帰ってほしくないだろ!」
「ルイ、いいかげんにしないとオルガにおこられるよ!」
「…………」
なんでマリはいつもへいきなかおをして、レイステンたちを帰してしまうんだろう。
ぼくはもっといっぱいあそんでほしい。ほんとうはおしろにとまってもらっていっしょにねたいと思ってるぐらいなんだ。
レイステンとノーラとマリとぼくでいっしょにねたら、どんなにたのしいだろう!
だからその夜、マリといっしょのベッドに入ってからも、ぼくはブーブーもんくを言いながらねむったんだ。
そうしたら、夜中になんとなく小さな声がきこえたきがして、目をさました。
小さくくすんくすんとなく声がする。いっしゅんオバケかと思ったけれど、ないているのはよこにいるマリだった。ぼくにせなかをむけて。
「おとうさま……おかあさまあ……」
小さなその声をきいて、ぼくはハッとした。
マリだってさびしくないわけがないんだ。
ぼくは生まれる前に父上が、うまれたすぐ後に母上がなくなってしまったけど、マリは父上も母上も生きている。けれどおしろでくらしているから、二人とはいっしょにいられない。
ぼくは自分の父上や母上とはどうしたっていっしょにはいられないけれど、マリはいっしょにいることもできるのに、ぼくの王妃だから、いっしょにいられないのだ。
なのに、そんなことはぜったい言わないで、ぼくがレイステンたちにくっついていてもなにも言わず、にこにこしている。(たまにおこるけど、今日みたいに)
マリはいつもお姉さんぶっているけど、ほんとうはマリだってレイステンたちに帰ってほしくないんだ。でもぼくがわがままを言うから……。
ぼくは自分がすごくはずかしくなってしまった。自分のことしか考えてなかった。
ほんとうはマリがレイステンたちといっしょにくらせればいいのだろうけれど、それはたぶんムリだから。
ぼくは、うしろからおなかに手をまわしてマリにくっついた。マリはビクッとして
「ルイ……? おきてるの?」
ときいてきたけれど、ぼくはくっついたままだまってねたフリをした。
マリはそれいじょうはしゃべらなかったけど、なくのはとまったみたいだ。そのうち、マリの方から、すうすうとねてる声が聞こえてきた。
ぼくは国王で、マリはぼくの王妃なんだから、ぼくはもっとマリをまもらなきゃならないんだ。
強くそう思って、ぼくもそのうちねむりについた。