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tale 5

 

 私の部屋にミルカを引っ張り込んできっちり扉を閉める。大きな窓の外は4階だけあって大きく伸びたコモンオークが葉を揺らしているのが見えるだけだ。そんな場所から誰が見るわけでもないが、カーテンも引く。

 そして私はソファにどっかり腰を下ろして、ミルカを見上げて訊いた。


「そもそもルイは納得してるの?」

「陛下の意向はわかりかねますが……」

「ふうん」


 先刻は「ずるい」などと言ったもののそれは子どもの頃のおやつが多いとか少ないとかの癖で、別に自分が“演習”をしたいわけではない。しかしルイだけとなるとついずるいと思ってしまう。

 そこでふと思いついた。


「練習だったら女性じゃなくてもいいんじゃない?」

「は?」

 私はソファから立ち上がって力説した。

「そうよ、男でもいいじゃない! “ウケ”なら感じるところなんて女性と一緒なのでしょ! 男にだって穴はあるのだし、ピー(自主規制)して、ピー(自主規制)して、ピー(自主規制)すりゃ同じことでしょう!」

「ひ、ひ、ひでんか~~~~~」

 読んだことあるのよ、FUJOSHIっていうのが好む男色の本をこの間郵便局留めでこっそり取り寄せたんだから!

 そうよ、男ならまだ許せる。女性なんて……女性なんて……女性?


「そういえば、その初陣演習とやらのお相手の女性は決まっているの?」

「そ、それは……」

「吐くのよ! 来期のボーナス査定に細工するわよ!」

「にょ、女官長と……」


 …………。


 女官長―――――――――ッ!!!!?


「えっ、あのヒト何歳(いくつ)なの!? そういえば年齢不詳の美魔女だわ!」

 言われてみれば年齢はもちろん既婚か独身かも知らなかったとにかく逆らえなかったから!

「女官長はまだ33歳ですよ。23歳でご結婚されましたがその3年後に旦那さまは亡くなられたと聞いております」

「そうなの? 知らなかったわ。生まれた時から女官長みたいな顔してるから」

「女官長になられたのは1年前ですよお忘れですか」

 そうだった、メインで育ててくれた前女官長が去年50で退職して、あの逆らえない女官が女官長になったのだった。


「そうか……あの女官長か……」

 ぼふんと、またソファに沈む。

「身元が確かで、年齢的にも合い、何より王室への忠心厚いことから選任されたそうですが……」

「じゃあルイも万々歳だわね……」

 ちょっとコワいけど綺麗なおねいさんが初めてのお相手してくれるのだものね。それに、不謹慎だけれど未亡人って、なんかそそる。気がする。

「妃殿下……」

「もう下がっていいわ、ミルカ。教えてくれてありがとう」



 ミルカを下がらせた後、ひとり窓辺にゆるりと歩みカーテンを少し開け、コモンオークの揺れる葉を瞳に映しつつ物思いに耽る。

 私とルイは、確かに物心つく前から夫婦で、一応これからも夫婦としてやっていくはずである。そしていつかはそういうことをして、世継ぎを産まなければならないこともわかっている。私だってカワイ子ぶるつもりはない。ルイとは別々にだが、そちらの教育も受けている(あくまで理論だが)。ただ実感は無かった。今ここで急に現実味を帯びてくる。


 恋も知らずに夫婦として育ってきた私たち。身近にいる同じ年頃の異性はルイしかいなかったし、ルイにとってもそうだった。城下へ行けば同年代の子はいるにはいるし友達ともいえる子もいなくはないが、やはりそうそう気軽にいつも一緒にいれるわけではない。圧倒的に、私とルイはセットだったのだ。夫婦なんだから当たり前だけれど。


 ルイはやんちゃなところもあるけれど、基本的には呑気で大らかだし、気も合う。近頃は私より体が大きくなったせいか、前より私の扱いが丁寧になった。国外の媒体(メディア)で紹介されたりするときはピシっとして王子さまっぽい。実際は王さまだけれどね。


 ルイは私でいいのかな。この先も、ずっと一緒にいるのは、私でいいの?

 他の女の人を知ったら、私じゃなくてもいい、とか思うのじゃないの?






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