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tale 3

 

 そんな政略結婚ではあったがルイと私は仲がよかった。きょうだいのようにいつも遊びまわっていた。乳母や教師や女官長などにはよく怒られたが、それでも毎日楽しく暮らしていた。

 奉仕活動といっては、牧場で乳搾りをし、それぞれ顔に牛の乳をかけあいっこしたり、バターを髪の毛に塗りたくったり、犬の代わりに羊を追いかけ回したり、ブドウの収穫といっては木に登ったまま食べ散らかしたり。平和だ……そして田舎だ……王族の威厳って……。


 私の両親が城にちょくちょく遊びにくると、ルイはそれこそ自分の親のように甘えた。というか、ルイあれ絶対自分の親だと思ってたよね最初の頃。

 ルイの母君は、ルイをお産みになってから父君、つまり前国王陛下のあとを追うように儚くなった。私には前述の通り両親がいたわけだが、早々すぎるぐらい早々にルイに嫁いだので、そこそこ頻繁には会えたけれど一緒に暮らしてはいない。母の膝に乗ったり父に肩車などされているルイを見ると、「私のお父さまとお母さまよ!」と言いたくなったりもしたが、ルイには両方いないのだ。私の方が年上というプライドも手伝って、私はルイがふたりに甘えるのを黙認した。年上妻はエルトリアの農作畑や牧場や葡萄園のように心が広いのだ。広すぎて奉仕活動がうんざりするくらい、広いのだ。


 それにまあ、やっぱり、ルイが笑っているのが好きだったから。



 7歳か8歳ぐらいの頃だろうか、一緒の寝台で眠りにつくとき、よく話したことと言えば、


「ルイ、いつ私たちに赤ちゃんが生まれるのかな」

「さあ、そのうちじゃない? ぼくらがあんまり小さいと赤ちゃんもできないんじゃないかなあ」

「でも早くほしい。私、弟か妹がほしかったの」

「マリは父上と母上がいるから、まだ生まれることもあるかもしれないよ」

「でも生まれても、ここでいっしょにくらせないじゃない」

「うーん、そうか。ぼくも、弟がほしかったんだよなあ。じゃあ赤ちゃんは男がいいな!」

「えー、女の子がいい。お人形あそびしたいもの」

「マリは木登りだって羊追いだってJUDOだってするじゃないか。男でいいよ!」


 それから男だ女だと言い争って取っ組み合いのケンカになって、寝室に控えていた例の女官が止めに来た。拳骨のオマケつきで。国王と王妃に拳骨。とにかく無礼なのに何故か逆らえないこの女官を誰かどうにかして。




 ──そして月日は過ぎる。


 私が12、ルイが11のときには背の高さが同じになり、私が13、ルイが12になったときには遂に抜かされてしまった。


 そしていま私は15、ルイは14。私は若干小柄であったせいか、去年やっと月の物がくるようになった。ルイはといえば何を食べたんだというぐらいにょきにょきと背が伸びて。



 そのあたりから私はルイと寝室を別にされるようになった。





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