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tale 1

 

 この世界で、一番幼く結婚したと言われる王族は、エルトリア王国の国王ルイ・アドルフ4世とマーリア妃である。彼らはそのときまだ歩くこともできない赤ん坊であった。

 ──『若者のための新しい世界史』より──




 * * *




 荘厳な大聖堂にて、静かに結婚式が行われている。

 中央には司祭、そしてその前に、それぞれ乳児を抱いた年若い女官が二人。


「…………」

「起きてくださいませ、陛下、ほら、起きてくださいませ」

 ぺちぺち。

「……う……」


「あうー、あおうー、ぶぎゅー、あやおあゆー」

「妃殿下、お静かに」

 ぺちっ。

「あう!」


 司祭は恭しく、宣誓を促す。


「汝ルイ・アドルフ・エルトリア4世は、この女マーリア・レイステンを妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」

「…………」

「陛下」

 ぺちぺち。

「……あう……」


「……汝マーリア・レイステンは、この男ルイ・アドルフ・エルトリア4世を夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」

「あうあー、うやおぅー、えあ、えあ! おいあ、えあー!」

 ぺちっ。

「あうっ!」


「………………よろしい。ではこれを以て婚姻の成立を認め二人を夫婦とみなします」




 これは、私とルイの結婚式の様子である。なんて式だ。


 ちなみにぺちぺちという音は、私たちを抱えている女官が太ももを叩いた音である。呑気なルイの場合はすぐ眠ってしまうのを起こすための遠慮気味なぺち、だが、私の場合はあうあうと可愛らしいおしゃべりが止まらないことに対しての「黙れ!」という意味合いのぺち! だ。なんて女官だ。無礼すぎる。この女官は女官長となった今はさらに無礼だ。たいがい不敬なのでどうにかしたいがどうしても逆らえない。おかしいな。私ってこの国の女性の中で一番偉いんじゃなかったっけ?





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