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5.あとは160~170℃に熱した油でこんがり揚げて完成です。

「ねえ、空。さっき先輩から連絡来たんだけど、携帯見た?」

「うえ、マジか。まだ見てない」

「なんかねぇ、今度……というか、二学期? に姉妹校から生徒さんが一人来るんだってー」

「ふーん? またなんでそんなことを連絡してきたんだ?」

「どうやらねぇ、その人あちらの学校で私たちの部活と似た感じのとこに所属してるらしくて。『もしかしたら一緒に活動することになるから知らせとく』って」

「……へえ」

 二人は部活の話(?)を始めてしまったようだ。

 そんな一方で。

「……」

「……」

 この沈黙……辛い。辛すぎる。何か話すべきか?


「あの……柄川くん」

「! 何っ?」

「あっごめんねお弁当食べてるとこなのに」

「い、いや! 大丈夫だよ」

「……えっとね。朝にお願いした数学のことなんだけど」

 きた! 先程の空の言葉を思い出す。そうだ、教えるついでに誘えばいいんだ。それなら……!

「ねえ殻尾さ「実は不安だったところ解決しちゃったんだ」

 !?

「ごめんなさい……」

 嘘だろ……まさか、そんなこと、あるのか……。

「そ、そうなんだ。まあ、問題は自分で解決するのが一番だよね」

 殻尾さんに向かって言ったの言葉も、自分に返ってくる。……そうだよ、僕は人の言葉に流された状態で彼女を誘おうとしていたじゃないか。

 それじゃあ駄目だ。僕の想いは、人の言葉に流されていいほど軽いものじゃない。

 僕は、彼女が好きなんだ。すごく好きなんだ。

 だから……!


「殻尾さん!」

「柄川くん」


「「……あ」」

 ハモった。彼女も何か言いたいことがあるのだろうか。

「殻尾さん、先どうぞ?」

 頬を赤く染めて黙ってしまった殻尾さんに、そう声をかけると、

「はっ、はいっ!」

 と声を裏返しながら返事を。驚かせちゃったか……?

「あのね、それで、せっかく柄川くんが教えてくれるって言ってくれたのに断っちゃって申し訳ないから……放課後、一緒にどこか行きま、せんか?」

 ……これは、夢か?

 今、殻尾さんに誘われた? え、現実(リアル)だよね?

 こんなに嬉しいことが続いて、僕はもうすぐ死ぬのか?

 そんなことをグルグル考えながら、僕はやっとのことで返事をした。

 答えは決まってる。だって、僕も同じことを言おうとしたのだから。

「……うん、行こう」


「そういえば、柄川くんもカラチューなんだよね?」

「うん。まさか殻尾さんもだなんて、思いもしなかったよ」

「……今まで、同じ人に出会ったことなかったから、嬉しい」

「……僕も」

「おうおう? 何だか我々の知らぬ間に仲良くなってますなあ、お二人さん?」

「そうですよぉ! 一体何があったのかな~? ほれ、アリスちゃんに言ってみ? ね?」

 本当、なんなんだこいつらは。

「おいおい、そんな睨むなよ。で、どこ行くんだ?」

 しかもしっかり聞いてやがる。飛鳥時代の偉人かよ。

「うーん、どうしようか?」

「そうだね……私もしっかりとは決めてなかった」

「そしたらさ! 景花の行きつけのあそこ行けばいいんじゃない? ほら、学校の真ん前にあるとこ」

「えっ、殻尾さんもあのお店によく行ってるの?」

 学校の目の前のお店といえば『烏龍(ウーロン)』だ。今まであそこで会ったことはなかったけど、彼女も常連だったのか!

「ということは、柄川くんも?」

「うん! いつも行くのそこだよ」

 すると、殻尾さんも花が開いたような笑顔を見せて、

「あそこ、とっても良いお店よね! お値段お手頃なのにサービスしっかりしてるし」

「そうだよね」

 樹矛さんのお人柄は勿論のこと、あのお値段であのボリュームは本当に素晴らしいよなぁ……。いけない、さっき食べたのにもう唐揚げ欲がっ……!

「よし、そこに行こう! 何なら今すぐにでも!」

「え……!?」

「「授業をさぼったらいけません!」」


✧✦✧


 キーンコーンカーンコーン……

 ……。ついに……ついに!

「放課後だ……!」

 結局、僕はあれから、殻尾さんとの唐揚げデートのことしか考えられなかった。授業は……数学と科学の教師が、何となく苦い顔をしながら僕を見ていたことしか覚えていない。

 まぁ、そんなことよりも殻尾さんだ。唐揚げだ! 

「殻尾さん。……行こうか」

「うん。……楽しみだね」

 やっぱり殻尾さんの笑顔は、唐揚げにも何にも換えられないな。


✧✦✧


「そういえば、柄川君はあのお店のどんなところが気に入っているの?」 

「うーん……。一番は、店の雰囲気を作り出している店の人たちかな。どんなに高級な店でも、店の人の雰囲気が悪かったら居心地が悪いし、何だか嫌な気分になるだろう?」

「そうだね。私も店主さんの雰囲気、好きだなぁ。それに、常連さんへの対応が凄いのよね」

「はは! 僕も、けっこうサービスしてもらっちゃってるんだよね。……ん、もうそろそろだね。今日も楽しみだな、樹矛さんの料理」 

「きむ……?」

「……どうかした? 殻尾さん」

「うっううん! 私もこれから六時間、楽しみ!」

「ろくじかん……?」

「あら?」

「え?」

「「……」」

「えっと、柄川くん。つかぬ事を伺っても……?」

「奇遇……だね。僕も聞きたいことがあるんだ」

「……じゃあ、せーので言ってみようか」

「うん……」


 せーのっ

「「これから入るお店ってこれだよね?」」



「「……」」



「「ええええええぇぇぇえええぇええ!!?」」


 その時僕が指差した店は、言わずもがなだが、中華料理店『烏龍(ウーロン)』。

 対する殻尾さんは、その烏龍の隣にあるカラオケ店『TGY』だったのだ。

 

 よみがえる、今までのこと。

そういえば、『学校の目の前のあのお店』とは何回も言っていたけど、店名は確認していなかったな、とか。

 そういえば、殻尾さんとの会話で夢中だったから気にしてなかったけど、弁当から唐揚げの匂いがしなかったな、とか。

 そういえば、“カラチュー”って、『唐揚げ中毒』とも『カラオケ中毒』とも言えるな、とか……。

 他にも色々と思い当たる点があるけど……。えーっと、こういう時は何て言えばいいんだ? うわっ頭の中唐揚げ! じゃない、真っ白!

 ……と、とにかくまず言うべきなのは!



「唐揚げ食べない?」



END

最後まで読んでいただきありがとうございます!


この作品は私にとって初めての連載作品で、色々読みにくい部分があったかと思います。一話目の短さは、今思うと頭を抱えたくなりますね!

この作品が生まれたきっかけは、カラオケ大好きな友人との会話でした。

友「カラオケ行きたい~! これはもう中毒かも」

私「てことはカラチューだね(笑)ん……これって唐揚げでもそう言えるんじゃない?」

そこから考えていくうちにどんどんアイディアが浮かんできて、これは是非小説として書こう! と決心していた作品なので、こうして完結までたどり着くことが出来て良かったです。

途中更新がとてつもなく遅くなってしまったのにも関わらず、お気に入り登録してくださったり「面白い」と言ってくださった方もいて、とても申し訳ない気持ちとともに、とても嬉しかったです。ありがとうございました。

実はこの後おまけ話も投稿する予定です。その際にはまた読んでいただけると嬉しいです。

それではひとまず。

この作品を読んで下さった全ての方々に、感謝の気持ちをこめて。

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