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監獄街  作者: 俊衛門
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第二十一章:1

 遠くで装甲車両のうなり声が聞こえた。微かで、よく聞かなければただの車の騒音と大差はない。普段ならば警戒するに値しないことかもしれないが、今は状況が違う。それが、その物音が何であるのか。見極めなければならない。

 遠ざかる音を聞いて、完全に消えるまで舞は息を殺していた。そうやって何かの音に怯えながらでなければ往来を歩くことも出来ず、エンジン音を捉えたならば立ち止まってその向かう先を見定めなければならない。ここ数日で舞は自分の感覚が鋭敏になったような気さえした

 もう十日が経っている。国連徽章をつけた軍服の連中は、一時期は街全体を埋め尽くすのではないかと思われたが、数日経てばそれほど目立たなくはなっていた。とは言え、依然として兵士はうろつき、街全体が監視されているかのような雰囲気に包まれている。何せ、南辺界隈には手配書が出回っているというのだから。

 手配書。レイチェル・リーと和馬雪久の行方を求めるもの。南辺と、西辺にも出回っているらしいこと。舞自身は実物を見たことはないが、数日の間に歩き回っているとそんな情報が入ってくる。そしてその手配書を片手にかつて『黄龍』の私服部隊として使役されていた西の破落戸ども、いくらかの金を手にしたい南の難民たちが、こぞってレイチェルと雪久を探しているらしいことも。その手配書に舞の名は入っていないことから、食料の調達は今のところ舞が行っている。

 通りを見回した。人通りはない。舞は缶詰の入った袋を肩に掛け、通りにでた。辺りの様子をうかがいたい気持ちをこらえ、まっすぐ前だけを見て歩く。路地裏に入り、ビルの合間を抜け、幾度も迂回を繰り返しながらようやくたどり着いた。

「舞です、あけてください」

 入り口に立ち、朝鮮語で声をかける。しばらくして扉が開いた。

「つけられていないな」

 劉剣は扉を注意深く閉めながら言う。外の様子をうかがうことを忘れない。

「女一人、通りを歩くのはさすがに肝が冷えましたけど、後ろだけは気をつけていました」

「俺が動ければいいのだが」

 腹の辺りをさすりながらぼやく劉剣の声には無念さが滲む。

 建物の、いくつもある扉を経由して最奥の部屋まで歩く。扉の前で舞は再び朝鮮語で話しかけた。

 ほどなく扉が開き、レイチェルが顔をのぞかせる。舞の顔を見るなり顔をほころばせた。

「戻りました、レイチェル大人。こちらを」

 部屋に入ると舞は袋を差し出す。レイチェルはすまなそうに顔をゆがめた。

「悪いね、あなた一人にこんなことさせて」

「気になさらずに。動けるのは私だけなのですから、当然のことです」

「そうはいっても、この危険な状況。あなただけ外を歩かせるのは心苦しいよ」

 舞は何も言わず袋を卓上に置いた。

「それよりも、レイチェル大人。雪久は」

レイチェルはかぶりを振った。

「戻っていないよ」

 レイチェルが嘆息して言うのに、劉剣もまたため息をつく。

 雪久がいなくなって三日経っていた。孔飛慈から分捕った長穂剣も消えていたので、おそらく雪久が持って行ったのだろう。一言も断りなく、誰も雪久が出て行ったところを見ていない。

「ここ以外に宛などないはずですけれどもね。こんな状況で、外には軍服がうろついているというのに」

「私が言い過ぎたのかな」

 レイチェルは気に病んでいるようだった。

「ああもはっきり言ってしまうと」

「あなたのせいではないです、あの男が甘すぎるだけだ」

 対して劉剣の物言いはなかなかに辛辣である。レイチェルの忠臣であるならば、雪久に対しての風当たりが強くなるのも当然と言えば当然のことではあるが。

「それより、あの男が連中に捕まりでもすれば、ここの存在を明かすでしょう。まずはどうにかして場所を移さなければ」

「雪久はそんなことはしませんよ」

  舞の言葉を受けて、劉剣は呆れた風に肩を落とす。

「手配されているのは奴だが、もし命を助ける代わりに仲間を差し出せと言われたらどうだ、奴はここのことをしゃべるだろう」

「多分、雪久はそういうことはしません」

「どうしてそう言い切れる」

「それは、まあ……」

 どうしてと言われても困る。根拠があるわけでもない。答えに窮していると劉剣は少し語気を強めて言う。

「何となくでものを言うなよ。あの男を信頼しているのか知らんが、人間追いつめられれば何をしでかすか分からん。奴が我々を売らないなんて言い切れるわけが」

「売らないよ、あいつは」

 と、レイチェルが口を挟んだ。劉剣はため息をついてかぶりを振った。

「レイチェル大人、あなたまで。信頼などたやすく寄せるべきでは」

「そりゃ確かに、ヒューイの時は奴を信頼しすぎて足下をすくわれたようなもの。だけど雪久の場合、信頼とかじゃない。あいつは自分がどういう状況でも、仲間を売ることはしない。相手に屈するぐらいならば死を選ぶような奴だよ」

「ずいぶん、あの男を買っているのですね」

「買っているわけじゃないけど、それなりに付き合いはあるから。ただそういう奴だ、というだけのこと」

 それを信頼しているというのでは、と舞は思ったが黙っていた。よけいなことを言うとレイチェルはそれを否定しようとするだろうから。

「レイチェル大人。私にはあの男のことが分からないですから、疑って当然です。だがあなたは、奴のことを分かると仰る。ですが、『黄龍』の中にもあなたと和馬雪久との間に何があったのかを知るものは少ない」

「そうかもしれないね。初期メンバーはほとんど残っていないし。扈蝶みたく、《西辺》にいなかった人間も多いし」

「一度、あなたの口から奴とのいきさつを聞いておきたいのですが」

 それを聞くなり、レイチェルは自嘲気味に笑った。

「言うことももっともだね。側近の言葉よりも、元々敵対していた者の言葉を信じるのでは人心も離れてしまう。これでは裏切られても仕方がないか」

「い、いえ私はそういうつもりで申し上げたわけでは・・・・・・」

「いいよ、一度でもちゃんと話しておかなかった私が悪いんだから」

 レイチェルは合成水の缶を手元に寄せ、ナイフでこじ開けた。一口飲むと、舞の方に向いて言う。

「あなたにとってはあまり目新しい話はないかもしれないけど」

 そう前置き、レイチェルは話し始める。一つ一つを思い出すように。

「あいつに、先に声をかけたのは私の方だったかな」



 戦い方を教えてやろうか――


 最初にそう声をかけられた。

「何だよ、こいつらの仲間か」

 雪久の足下に転がるのは、南辺に良くいる難民崩れのギャング。すでに五人を相手にした後だが、増援を呼んだのであれば容赦はしない。解いたばかりの拳を再び握り込む。

 ただ、声をかけてきたのは如何にもなギャングという感じはしない。そこらの破落戸連中と違って、小綺麗なスーツ姿で、しかも女だ。東洋系の顔立ちだが、痩身矮躯なアジア人ではなく筋肉質な西洋人を思わせる長身の女。そいつが見下ろすような目で、雪久と、雪久の足下に倒れている男を見ている。

「私の仲間にはいらないな、そんな奴は。目先のことしか考えず、相手の戦力も見極めずに挑もうという者は。だいたい、《南辺》のギャングなど私は知らない。私は《西辺》だからな」

「《西辺》だと」

 そこで雪久ははたと思い当たる。

「最近、西辺に台湾から流れてきた女がいるって、聞いたことある。もしかしてあんたのことか」

「レイチェル・リーだ、和馬雪久」

 名を言われると、雪久は反応する。

「俺の名を」

「その左目が、お前の名刺代わりなのだろう? 『千里眼』和馬雪久と、その取り巻き二人。路上のクソガキにしてはやるって噂」

「へえ」

 一度鎮めた左目を、雪久は再び起動させた。別に起動させようとしなくとも、気が逸れば勝手に作動してくれる。真紅の光が満ち満ちて、左半面が血のように染まる。

「それがなんだってんだ。西じゃ飽きたらず南にも来たってことか? 俺をやるってのかよ」

「勘違いするなよ。少々やるからって、お前は所詮路上のクソガキ。そんなの相手にしてもしょうがないだろう」

「クソガキかどうか試してみれば分かるんじゃね?」

 雪久は身を屈めた。いつでも組み伏せられるように、四つ足の獣のごとく身を低く構える。対してレイチェルは構えを取ることなく、冷静そのものだった。

「よしなよ、ここでやりあってもしょうがないだろう。それに、『千里眼』は使いすぎるとオーバーヒートしてしまう」

「何?」

「お前は知らないだろうけどね、その眼は生体内電流を使って半永久的に作動するものだが、それは一定時間間を空けてという条件の元に成り立つものだよ。連続して使えば、失明するだけでなく、脳までいかれてしまう」

「いや、それは」

「さっきの戦いぶりを見ていたが、最初から最後までずっと作動していたが、それは本来は必要なときのみ作動させる、オンオフはこまめに切り替えて使うものだ。悪いことは言わないからやめておきな」

 そこまで聞いて雪久は構えと『千里眼』の作動を解いた。

「お前、軍にでもいたのか」

「どうしてそう思う」

「じゃなきゃこの眼について、そんな詳しい理由が分からない」

「軍なんかにはいないよ。でも下手すりゃ、そこらの軍人上がりよりも知っているかもしれない。その眼は何せ、私も埋め込まれそうになったから」

「何だそれ、どういう意味だよ」

「お前のような人体実験の被験体は、戦争の前からざらにあった話だよ。ただ、機械を埋め込もうというのであればもう少し大がかりな実験施設が必要になる。私のように、生きている人間を創り出そうという場所とは別に」

 雪久はもう、その物言いからある一つの答えにたどり着いていた。

「お前、台湾にいたって言ったな。まさかお前のいたところってのは」

「それ以上は、ここでは言わない方が良い。部下が見ている」

部下とは何か。そう尋ねるより早く視界が明るくなった。闇の中に光の筋がいくつも切り込まれ、レイチェルの姿が逆光の中に沈む。一瞬、雪久は目をすがめ、次に見たのは車のヘッドライトをバックに映し出されるレイチェル自身の陰だった。

「西の『黄龍』」

 レイチェルがつかと歩み寄る。

「この街の西側で生きていくのであれば、一人の力では無理だ。だから、作る必要があった。私の手足になってくれる組織が」

「は、はあ?」

 車は全部で三台。いずれもレイチェルの背後に停まり、めいめいライトで照らしている。車の側には黒服の男が数人立っており、全員のスーツの下に何かを仕込んでいるであろう、懐に膨らみがある。

「まだ少数勢力だけども、いずれは西を掌握する。ここにいるだけが全てではない、南にも何人か派遣している」

「群れてんのか、白人どものギャングみたいに」

 気にくわなさを前面に押し出せば黒服の誰かが反応するだろうと思ったが、取り巻きどもは案外冷静だった。二人のやりとりをただ見ている。

「群れるのは嫌いか?」

「弱い奴のすることだ」

「だが、お前も一人ではないのだろう。日本人の難民が他に三人、そのうちの一人は空手遣いだったはず」

「何で知ってるんだよ」

「先日、うちのがそいつに殴られたからね」

 梁の奴か、と思い当たる。別に梁がどこで何をしようと構わないのだが、それでも一言ぐらいは言ってくれてもいいだろう。

「群れるのは弱いもののすることって、それは間違いないよ。そして私は、自分で強いなどと思っていない。確かに私は、人よりは身体能力は優れているように出来ているけれども、それでも一人で出来ることには限界がある」

  眩しさで目を開けきれないでいると、レイチェルはさらに言った。 

「私は《西辺》に基盤を作るつもりだ。いずれは東の連中と同等の力を手に入れる。それは今すぐに成せることではないものだが、闇雲に暴れるだけよりは確実な手だ。そういう力がなければ、戦うことは出来ない。お前はどうだ? 『千里眼』。ただその眼に頼るだけで、この街の片隅、《南辺》の一角で力を誇示するだけで満足か?」

なかなかに燗に障る物言いだが、雪久はもう何も言い返さなかった。

黒服の一人が車のドアを開け、レイチェルが乗り込む。乗り込む際に言った。

「力を求めるなら、戦い方を知らなければならない。知りたくなったら、西に来い。歓迎してやるよ」 

それが最初だった、和馬雪久とレイチェル・リーの出会いとは。南の破落戸一匹と、後に西を束ねることとなる龍の長。あまりに立場の違う二人のうち、歩み寄ってきたのはレイチェルの方だったのだ。

 その後のことはそれほど大したことではなかった。彰や梁とともにギャングに挑み、梁と舞が囚われた。それをきっかけに力を求め、『黄龍』に出入りするようになり、そこでレイチェルから拳の手ほどきを受けーーしかしそれもすぐに止め、《南辺》に戻ってユジンと出会い、人を集めて。それらの始まりと言えば、あの日の邂逅にたどり着く。《南辺》と《西辺》の境界上での出会いに。

 そういえばあの日も雪がちらついていた。毎年、この街に降る雪の量は大したことはないが、それよりも身に沁みる寒さだけは如何ともしがたい。じっとしていれば皮膚の下、肉が直接冷えてくる。その底冷えする空気は、重ね着をしたところで解決されるわけでもない。今も、雪久は皮の上着を羽織っているが、寒さはやはり堪える。

靴の先で蹴り飛ばすのは、瓦礫の一部。今やただのコンクリートの破片が積み重なるだけのこの場所が、地下通路の入り口とは。誰も信じられないことだろう。つい一週間も前には、普通に出入りしていたこの場所。完全に埋まったここを掘り起こしたとしても、おびただしい死体が埋まっているだけだろう。

「大したもんだな」

少々強めに入り口を蹴飛ばすと、瓦礫の山が崩れた。

ここに来たからといって何をするでもない。ただレイチェルと一緒にいるのは苦痛だった。レイチェルはいつにも増して遠慮もなく説教じみたことを言うのだからたまらない。『黄龍』を飛び出したのもレイチェルの口うるささに耐えかねてのことだった。

ただ口うるさいだけならば我慢は出来る。一番堪えるのは、それがいちいち的を得ているということだ。レイチェルは雪久のなにもかもを見抜いていて、それを直接的に伝えてくる。無意識にでも意図的にでも目をそらしていたことを、レイチェルから突き付けられてくる。それがたまらない。ユジン、彰を失った今はそれが一層、強まっている。

 だから飛び出した。軍が探していようが手配書が回ろうが、あそこにはいられない。哀れむような舞の視線もまた、堪える。だからといってこんな場所に来る意味もないのだが。

 きびすを返しかけたとき、後ろの方で気配がした。

「おい、『千里眼』」

ぴたりと足を止める。声のした方向とは別の、右手側から人影が現れた。

続き、左手側。廃墟の陰からボロ布を引きずって、アジア系の男が現れる。同様に物陰、暗がりから難民らしき者共がぞろぞろと出てくる。

「『千里眼』だろ、お前」

 声をかけた者は最後に出てきた。白髪で痩せこけた初老の男。手にしている鉄パイプから、何が目的かは明らかだ。

「ああ、あんた。どっかで見たなあ、どこだったか」

 わざとらしく雪久は悩んでみせた。

「あ、そうだ。あれだろ? 第一ブロックで、道ばたでゴミ売ってた奴」

「俺は第一には行ったことねえよ」

「あ、そうなんだ。難民なんてどこでも同じだから分かんなかった。いっつもゴミ溜めにいて、ゴミと一緒に暮らしているからよ」 

 もちろん挑発のつもりだったが、男は激高するどころかさげすむような笑いを浮かべた。

「そのゴミ溜めに、お前も落ちたんだよ。まだ《南辺》の支配者気取ってんなら、哀れだからやめろよ」

 周りの者が笑った。明らかに見下した笑いだった。

「調子に乗って、南辺に君臨したつもりで、だけど最後は瓦礫の中で細切れになって終わり、ってか。連中からは死体でも良いって言われてんだ、せいぜいいたぶってから終わらせてやりてえ」

「一応訊いとくけど、お前たち程度に俺が遅れをとるとでも?」

「だって「千里眼」、使えねんだろ? お前」

 舌打ちした。もうそんな情報まで知れ渡っているとは。

「金、か」

 いったいいくらの懸賞金がかけられているのか知らないが、米ドルで支払われればそれだけで難民から脱することが出来る。ならばしとめない手はないのだろう。

「そんなんだから、いつまで経ってもゴミくずなんだよな、難民ってな」

 雪久が発したことに、全員が反応する。

「誰かが何とかしてくれるって期待して、結局自分じゃ何にも動かない。風向きが変われば別な方について、ことを始めるにもてめえ一人じゃ出来ないからってすぐに群れる」

「ほざくなよ。機械頼みの、ストリートのガキ一人」

 一人がナイフを抜いた。徐々に包囲がせばまった。

 剣を、抜こうとした。が、すぐに納める。この程度の連中、刃を抜くまでもない。

「機械頼みかどうか、試してみるかよクソ難民ども」

 雪久が言った瞬間、背後から襲いかかってきた。 

 鉄パイプが叩きつけられる。天頂に降りかかる。雪久は身を翻して打ち込みを避け、避けたとともに後ろ蹴りを放つ。下手人の喉に踵がめり込む。

 二人、左右から。やはり鉄パイプ。

 雪久、剣を短く持つ。手中で転回、鞘尻を突き出す。一人の喉にめり込ませ、身を返してもう一人の側頭を打つ、二秒。

 三人同時に掛かってくる。ナイフを振り回し、短刀を腰だめに突き刺してくる。

 間合いに踏み込む。雪久の脚が躍る。鞭のような蹴りが男どもの手を打ち、刃物を叩き落とす。あっけに取られる男たちの顔面に、拳を、鞘尻を、手刀をめり込ませてやる。

 三人が倒れると包囲の一角が崩れた。雪久はその方向に向けて走る。

 一人、回り込んできた。鉄パイプの老人。振りかぶり、体ごと打ち込む。

 避ける、紙一重。鼻先を通過する、鉄パイプ。

 雪久、体を転回。後ろ回し蹴り。右の踵が老人の顎を直撃する。老人の軽い体が吹っ飛ぶ。

 銃声。

 右肩に痛み。ふと見れば、難民の一人が拳銃を構えている。まだ年若い男だ。銃になれていないのか、構える腰はひけ、おっかなびっくりといった様子で撃ったのだと伺える。

 男が再び構えた。

 雪久、足下の石を投げつけた。男の顔面にめり込む。

 男が倒れる直前に発砲。銃弾は雪久の頭をかすめた。

 廃墟の入り口で足音がした。誰か応援を呼んだか、あるいは銃声を聞きつけてきたのか。難民たちならば者の数ではないが、軍服の連中がかぎつけてくればことだ。

「くそっ」

 雪久は足音と反対方向に向けて走り出す。

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