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P8 1月20日Cパート

 バカみたいに広い魔王城は、もちろん部屋も大きい。たかが応接室とはいえとても広い。

 しかし、主に面積上の関係で入口付近にある応接室はそれなりに小さく設計されている。


 少女と幼女を案内すると、彼女達の目が丸くなったのを感じた。振り返って部屋に入るように促すとようやく彼女達の硬直もとけたようだ。


「し···失礼します」

「···」


 無言で椅子に座る幼女。まだこちらを睨み付けている。


「妹、失礼ですよ」

「だって真凰さんが"胸のでかい女性"は簡単には信用するなって言ってたもん」


 姉のたしなめにこの返しをする幼女。どうやら私は相当に嫌われているらしい。

 姉の顔が青くなった。多分このままだとまた先ほどの様にごめんなさいと言い続けると思われので、すかさずフォローする。


「大人の言い付けを良く守って偉い子ね」

「すいません···妹が無礼な事を申しまして」

「いいのよ、これくらい真面目な方が子どものときはいいわ」

「すいません···」


 あれ?フォロー間違えたか?まぁいい。微妙な空気だが、話を進めるとしよう。


「まず、名前をお伺いしてもいい?」

「わ···私はアリス=イナーチェスと言います。それでこっちが妹の」

「アデル、アデル=イナーチェスよ」


 ん?どこかで見た名前だな。


「わかったわ。申し訳ないけどこの紙にサインしてもらえないかしら。書類を作るのに必要なの」

「あっ、はい。わかりました」

「アデルは書かないもん」

「はいはい」


 魔王城の入城許可の書類を渡すと、アリスが署名の欄に二人分の名前を書いた。アデルの方はまだ文字が書けないのだろう。でも、スペルはわかった。姉はAlice=Inachece妹はAdele=Inacheceか。どうりで見覚えがあるはずだ。これは先日の魔王様の報告書に有った名前だ。だとすると、要件も大体察しがつく。

 署名された書類を受け取ってから、私は口を開いた。


「ありがとう。それでは本題に入るわね。今日いらしたご用件は何かしら?」

「えっと、魔凰さんがこの護符のちゃんとした物を下さると先日おっしゃっていまして」


 アリスは胸元から小さなお守りを引っ張り出した。特徴ある星形···これは魔王様特製の簡易封印符だ。大魔人クラス位ならば一週間ほど封印できるだけのキャパをもっている。しかしこれは文字どおり簡易的な物で、それから放出されている魔力を完全に封じ込める訳ではない。

 魔王様の報告書の日時より求めれば、もうすぐ一週間。中にいる存在が悪しきものではないとはいえ、放出されている魔力の量も相当な物になっているはずだ。報告書どおりなら一般人のはず。―ならばこの少女、一体何者だ。

 アリスの話は続く。


「その受け取りの日時が今日の午後、だったので受け取りに伺わせて頂きました。本当は午後来る予定だったのですが、午後は村の転移ゲートが予約で一杯だったので、予定を早めてお昼に来ることにしたんです。···もちろん公共の転移ゲートを使うつもりでした。せっかくの魔都ですから何か美味しい物でも食べようと思って」

「なるほど···良くわかったわ」


 腑に落ちない点も幾つかあるが、魔王城のプライベートナンバーを知っていた時点で彼女達は信用するに値する。本当に魔王様への客なのだろう。それならばこのまま追い返すのも少し悪い気がする。ちなみに魔凰は魔王様の偽名だ。


「でもごめんなさいね、いま魔王様はいらっしゃらないの。その代わり、とは言っては何だけどお昼、食べて行きなさいな」


 私の答はこれだった。何があったかは知らないが、そんな事情が有るならただ追い返すよりも魔王城で待たせた方が良い。

 すると真面目な話に今まで黙っていたアデルが、


「えっ!!奢ってくれるの?やったぁ!!」


 私とアリスの目が丸くなった。···この娘は怖い物を知らないのだな。見ず知らずの他人にこれをやったら大変なことになっているはずだ。私位の貴族だと、首が一発で落ちたりするし、そうでなくても手鎖200日とかいくんじゃないだろうか?


「も、も、も―申し訳ございません!不調法な妹をお許しくださいっ!!」

「いえいえ、子どものころはこれぐらい元気な方がいいわ」


 ところで、と私は無理矢理話題を変える。お昼のことはひとまず保留だ。ちょっとした質問をしてみる。


「先ほどから話に出てくる"魔凰さん"って、ここの当主様のこと?」

「え、···ええ。自慢してはおられましたが、お城みたいな凄いお屋敷にお住みですよね」

「実際、お城なのよ」

「ええっ」

「そーなの?」


 当たり前だ、ここを何処だと心得る。天下の魔王城だぞ。


「ととということは、魔凰さんって魔王様直属の」

「凄い人何だよね!魔凰さんって格好いいし釣りは上手いし料理は上手だし、何より強いし。おねーちゃんも大好きだもんね!」

「い、妹ー」


 姉が妹をポカポカ叩く。かわいい反応をする彼女の顔は真っ赤だ。魔王様のハーレム候補確定だ。するとかなりの確率で後々追い返す羽目になる。···辛いなぁ。


 その時、ドアがノックされた。


「サタナキア様。メイドのシーラでございます」

「入れ」


 失礼します、と言って、シーラが部屋に入ってきた。何やら黒いボードを片手に持っている。


「魔王様がお帰りになられました」


 ええええええっ!!!!????



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