P7 1月20日Bパート
―コンプリート!!!
時間にしてみれば一分程のこと。転移ゲートで魔王城エントランスに到着した私は、ひどい光景を見た。
「すいませんすいませんすいませんすいません···」
と、頭を下げて謝る少女とその妹らしき幼女と
「いえこちらの責任ですのでどうかお気になさらずに···」
そんなことを言う魔王城のメイド達がいた。
侵入者ではなかったのか···と安堵していると、メイドの一人が私を見つけた。
「サ···っサタナキア様!!」
一瞬で騒然となるメイド達。一方、少女達はポカンとしていた。うん多分、突然現れ私に驚いているのだろう。そうだと思いたい。
「静まれ。何があった」
そそくさとメイド達が脇へ引き、待機姿勢をとる。そして今いるメイドの中の責任者が前へでた。
「あちらをご覧下さい」
と言って左側を示す。そこには完全に沈黙した転移ゲートが有った。精緻な彫刻も豪華な装飾も見事に吹き飛んでいた。
「これは···!」
一体何があったらこうなるんだ。転移ゲートの耐久性は、常時起動型の魔具らしく、恐ろしく高い。さらに、精緻な彫刻は同時に魔術的防壁の意味合いも兼ねている。豪華な装飾はその一つ一つが秘宝級の魔具の防衛能力を有していたはずだ。
それが、粉微塵、だと!?
私が驚きを隠せずにいると、先ほどのメイドが説明を始めた。
「お客様が待機空間に着いたすぐ後。サタナキア様のお言葉をお伝えしたところ魔力系統にて突然、異変がおきまして、待機空間が崩壊しそうになりました」
それはヤバい。もしそのままそこに残っていたら、そのまま異次元に取り残されていたところだった。
「そこで仕方なく―まだ入城許可も獲らないまま無理やり城内に入れてしまいました」
「···そのせいで警報が鳴った、と」
メイドは猛烈な勢いで頭を下げた。
「申し訳ございません!今回の責任は全て管理責任者である私にあります。私この責任命に変えましても」
「いや。ご苦労だった」
私は言葉を遮った。メイドどもはすぐにこういう形で責任をとろうとする。まだ原因も判明していないというのに、誰が罰するというのだろうか。いやしない。これが反語。一度やってみたかった。
メイドは驚いているようだった。すぐにその目に涙を浮かべ、
「あ、ありがとうございます!」
「すぐに解析チームを呼べ」
私は声を大にして
「全員聞け!ここにいるメイド全てで原因究明チーム及びゲート修復チームを結成する。エントランスのAチームからCチームは原因究明チーム。DチームからFチームまでは修復チームだ。諸君らは最低限の仕事レベルを維持し、かつ一週間以内に原因の究明とゲートの修復を済ませろ。いいな!」
ハッ!!っとメイド全員が唱和した。城内に無駄に響く。それが止んでから、
「―行動開始!!」
メイド達が統制のとれた動きをする中、空気の様に取り残されている少女達に声をかけた。
「巻き込んでごめんなさいね。用件を聞きたいのだけれど、着いて来てくれるかな?」
声をかけることで、彼女達は意識を取り戻したようだった。
「···は、はい」
「···」
う~ん。姉の方はともかく、妹らしき幼女には完全に引かれちゃってるな。あれを見せればそうなるか。幼女は姉の後ろに隠れたまま出てこない。とりあえず私は、最寄りの応接室を目指した。
もう、お昼だ···。