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 魔界歴4000年 1月15日。


 魔王様に日記を書けと命じられたので日記を書こうと思う。けれども私の日常など結局は魔王城での勤務なので、そのことを中心に書くつもりだ。また魔王様のお達しで、日記は誰かに読まれても恥ずかしく無いものにしろとのことなのでこれは記録中心、かつ私の意見を織り交ぜた物にする。誰も読まないとは思うが、一応書くときはその日の重大なことをその瞬間の心情を中心に事細かに書いていくつもりだ。


 さて、自己紹介といこう。


 私はサタナキア=ダンタリアン。これは魔王様に頂いた名前で有名な悪魔二人の名を冠しているらしい。


 役職は魔界の執行官。魔王様の補佐をするのが仕事だ。魔王様の管理やスケジュールの調整なども私がしていたりする。魔王様にはマネージャーとかメイドリーダーとか呼ばれているが、何のことだかさっぱり解らない。普段はもちろん魔王様の元で働いている。


 私のことはこれぐらいで済んでしまうので魔王様についても書こうと思う。


 第25代魔王「矛盾の境界」というのが彼の称号だ。長らく戦乱にあった魔界を統一し平和をもたらした万能の覇王とか魔族の頂点に立つ最強の使い手とかなんとかかんとか巷では言われているが、実態はただの引きこもりである。もちろん、変な言い方だが昔はちゃんと魔王していたのだが、彼が議会というものを造り上げてから仕事しなくなった。重大な行事のときはきちんと顔を出すものの、それ以外のときは魔王城の奥の一室で何やらしている。月収は民からの税金で30万ゴールドほど。魔王にあるまじき低額にして定額だ。魔王と言えばもっと華やかな、豪華絢爛、贅沢三昧、酒池肉林、と文字通り想像できるような生活をしているものだが、魔王様曰く性に合っているといると、そういうことらしい。休日には、近辺のスーパーに買い物に行き食材を購入、そして自分で調理する。そんなものはそれこそ配下にやらせたりすれば良いものを自分でやってしまう。(というか魔王様は家事全般を難なくこなす。)そして私や唯一の同僚のルナに振る舞うのだ。これが結構美味しい。それを言うと魔王様は嬉しそうに笑って、またやるかーなどと言う。趣味にはちがいないのだが、いいのかそれで。


 魔王様についてもこんな感じでいいだろう。


 あとは···そういえば魔王様が魔界についても書いておけとおしゃっていたな。書く意味は不明だが一応。


 魔界は私達魔族や魔物が暮らす世界だ。長らく―およそ400年ほど戦乱の中にあったが魔王様がそれを平定し今に至る。今の魔王様の治世は20年ほど。その間に彼は先ほど書いた議会を造り上げたり、教育を普及させたり、法律を施行したり、貨幣を導入したり、とまぁ、普通の魔王では考えられないようなことばかりしてきた。そのおかげか魔界は現界と同じ様に発展した。種族間のいざこざは減ったし、非力な者でも名を上げることが可能になった。本当に平和になった、と思う。以前は昼も夜も区別なく戦いが続き、砲火が、怒号が、悲鳴が絶えなかった。


 そうそう、書いていて思い出した。もうひとつ魔王様に書けと命じられていたことがあった。魔界の言い伝えのことだ。


 魔界には「勇者襲来伝説」なる言い伝えがある。曰く4000の年を数えしとき、終わりをもたらす者が訪れると。


 魔界ではポピュラーな伝説で、最近では小説のネタになったりする。もちろん真に受けている者などほとんどいないことだし気にする必要ないと思うが、魔王様は異様にこれを警戒している。襲来する「勇者」という存在は小説の中では大抵巨悪を倒す者として描かれる。だが、魔王は普通、その対極を行くお方だ。だが今の魔王様は王道を敷き魔界その物を変えてしまった。そんな彼の魔界に終わりが訪れる?冗談ではない。理不尽だ。もし、そんなことをする輩が居るのなら、私は会ってみたい。会って、話してみたい。そいつの元には、どんな大義が、そしてどんな正義があるのか聞いてみたい。たとえ、直後に殺しあうことになろうときっと有意義な機会だと思う。


 あくまでも、そんな存在がいるとしたら、だが。


 余白もなくなったことだし、この辺で筆を置かせてもらうとしよう。


 また明日。良い日でありますように。

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