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暗闇
暗闇。暗闇を恐れたことのない人は、恐らくいないだろう。
なぜ、人間は暗闇を恐れるのか。暗闇の中に、もしくは先に、何が潜んでるのか明快に察し見ることができないから、というのが一番に挙げられるだろう。
オレは、そんな〝暗闇〟の中を歩いていた。
ずいぶん長い間歩いているようにも、さっき歩き始めたばかりにも思える。暗闇はどうやら、時間感覚まで狂わせてしまうらしい。
暗いところに長くいると、目がだんだん冴え、あたりが見えるようになる。しかし、暗闇はそんなやわなものではなかった。
暗く、重い。いつまでたっても視界に飛び込んでくるのは闇ばかりだ。
どうしてオレはこんなところを歩いているのか。
〝境界〟に足を踏み入れてしまったのがすべての始まりだった。
境界、つまり境の世界。
勘違いしないでほしい。
この世とあの世の境目の世界というわけではない。