第8話 奥さん!パイナップルが安いですよ
「ホモモーン!!!!!!!!!」
「ママモーン!!!!!!!」
一匹は数時間前に倒したヘキサホーンの子供を大きく、いかつくした風貌で、時々ボディビルダーのパフォーマンスのような筋肉をピクピクさせる行動をしている。こいつはまず雄ですよね。
もう一匹は金髪縦ロールのカツラを無理にかぶったような格好である。おそらくこいつは雌だろう。
まあ……自分が多少落ち着いて見てられるのは、ヘキサホーンの周りにハンターらしき人間が30人ほど応対していたからだ。なんかそれなりに善戦してるように見える。
あれがおそらく前に言っていた近くの街にいたハンターの一団なんだろう。
しかし彼らが足止めしてるとはいえ、下手に暴れられてこちらに突っ込んでくる可能性も無いわけじゃあないので保険をかけておく必要がある。
だいいちヘキサホーンの子供をしとめたのは俺なわけで、ヘキサホーン(親)を呼び込んだ原因は俺にあると言われても反論できない。それが逃げた後に村に被害が出るとなると、とんでもなく立場が悪くなる気がするよな……
「テフィさん、メディちゃんを連れて安全なところまで逃げられますか?」
「リ、リオンさんはどうするんですか!」
「あいつらを倒すような手は無いんですが……、最悪の場合は俺がひきつけて村から引き離します……」
「無理ですっ! 死んじゃいますよ! 絶対に!」
「りおにー……、死んじゃやだぁ…」
(涙でぐしゅぐしゅのメディちゃんがかわいすぎる! ってなんかいつのまにかハンターの数少なくなってるような気が……)
「大丈夫。俺は死なないさ。メディちゃんの笑顔を見るために戻ってくるよ」
(にあわねえっ、俺にはこのセリフまったく似合ってねええええええ、はずかしすぎて死ぬうううううううう)
振り返って考えても死亡フラグ満載のような気もするが、流れの雰囲気的にどうにもあれ以外の態度がとれなかった。
俺は2人に別れを告げて、けさぶろうで怪獣どもに対処しやすい位置、戦いの中心から100メートルほど離れた村はずれに移動する。
(むう……あんな怪獣、どうやって対処すりゃいいんだよ)
普通に考えてもあれだけの巨体に有効な手段がまったく見つからない。
ファンタジーによくある剣や槍やハンマーは、今の俺が使っても無意味に近い。
魔法はまだまったく使えない。
銃は悪くないが、拳銃程度じゃ歯が立たないし、そもそも入手手段がない。
(ヘキサホーンのあの動き、まるで牛マトリックスの動画だぜ……)
ハンターたちの様子もやばくなってきている。どうやら前線のナイトというかメイン肉壁が沈んだらしくて苦戦気味だ。
彼らが倒れたら、まず暴走トラックスキルで突っ込む。まず効かないだろうが牽制にはなるはず。
そのまま街から引き剥がすようにけさぶろうを走らせるしか出来ることはない。
そう考えていると突然、神様バッジが振動した。
(なんだ? こんなときにメール? また爺か!)
『……相変わらず運が悪いのう。おぬしは。
どこまでトラブル体質だか。
そんなおぬしに、イケメン爺ちゃんからの攻略ヒントじゃ。
[ポイントカードでお買い物]の取り扱いジャンルの中には
[ブラックマーケット]もあるんじゃよ。
ふおっふおっふおっ
ワシが直接安く買い付けたコレクションがいっぱいじゃぁー。
それを使ってせいぜい楽しませてくれよ?』
躊躇してる暇も考えている暇もない。
俺は迷わず、ブラックマーケットのジャンルのリストを見た。
(ちょっ、ハンドガンにライフルに重火器まであるのか、何考えてるんだよ、爺さん!)
「って、手榴弾が1個で1ptで売ってるーーーっ? 本物の手榴弾って1000円程度で買えるもんなのかよー」
「っというか、なんでこんなにポイントたまっているんだーーーーーーー!!!」
総合取得ポイント 277pt
使用済みポイント 3pt
使用可能ポイント 274pt
本物の手榴弾って安いのだと1000円で買えるものなんですね。
ネットで調べて驚きました。
大体15メートルの殺傷範囲。
かなり恐ろしいですよね。こんなのが1000円とか。
まあ種類にもよるんでしょうが。
タイトルにあるパイナップルは、勘のいい人はわかったと思いますが、
手榴弾の形がパイナップルに似ていることからくる隠語のようなものです。
他にもレモンやアップルがあるらしいです