第2話 タルタルソースは魔法のお味
「こんなん聞いてないって。どうすんのよ、コレ……、唯一の公式チートがオート三輪……ブツブツ……」
俯いて何やら呪文のごとき独り言にふける。
低位とはいえ神様補正で外見だけは良いはずであるが、これではただの危ない人に。
「よし、ネガってても仕方ない。初ドライブといこうか」
転生トラックは普通のトラックとはまったく構造が違う。
どちらかというと馬に近い意識があり、初乗り時には独特の技術が必要となる。
「よちよち、いい子だね~~~ 僕が新しいご主人様ですよ~~」
(ハア……、手懐けるのに一時間もかかってしまった。疲れたよ……)
「よいしょっっと」
早速けさぶろうのシートに乗り込む。
「しゅっぱ~~~」
「こんにちわ~」
「えっ?」
(馬鹿な、この俺の背後を取るだと……、まったく気配に気づかなかった…… 不覚っ、なんたる不覚っ!)
「こんにちわ、お兄ちゃんっ」
(てか、なにこれ、妙に女の子っぽいおっとりした声じゃね? あれか、これがもしかしてトリップテンプレ即美少女との遭遇イベント。まさかこの俺にそんなものがっ)
「何してるの~?」
(でも何か美少女ってよりも、美幼女ってのがしっくりくる声だな。まあそれはそれで妹かわいがりをしてやろう。大丈夫だ、問題は無い、それいくぞ!)
「ハーイ、僕、お兄ちゃんだよ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
「………………………………」(←おびえる美幼女らしきもの)
「………………」(←変態と紙一重なお兄ちゃん)
「これはっ、まさかのタル○ル。FF11のタ○タルにクリソツ、俺の目の前にあのタルタルがっ。リアルタルタルマジ萌えっ。号泣ぅぅぅ」
「あの……その……」
「ハイ、なんですかお嬢ちゃん、わたしはアヤシクはナイデスヨ」
「そっかー、君はコボルト族だったのか」
(先入観マジ恐るべし。コボルトと言えば小汚い犬頭のモンスターの印象が強すぎて、こんなに萌えれるものだとは思いもよらなかった。よく考えれば犬でもいろいろあるしな、マルチーズのコボルト版とか上品そうだし)
「うん、あのね~、今日はお父さんが人族のお祭りにつれてってくれるの~」
「お祭り? 今日あるのか、知らなかったな」
(ちょうど良いじゃないか、どさくさにまぎれて露天の食べ物で腹を膨らますことが出来るぜ! 金が問題だが)
「それでね、それでね、とっておきのドレスが着られるの!」
「ドレスか、綺麗なんだろうな~」
「うんうんっ」
「あ、あのさ、そのお祭り俺も一緒に行けないかな?」
「じゃあお父さんに聞いてみる~」
「頼んだ! で、どこ行けばいいかな? ついでに送っていくかい? これで」
バンバンとけさぶろうをたたく。
「これ……お馬さんはどこ~?」
「お馬さんは居ないよ。これはトラックだから」
「トラック、トラック……」
「そう、トラック。トラックは馬よりも速いのですっ」
「乗ってみたい! 乗せて~」
「お望みのままに。小さいお姫様」