第13話 コボルトまっしぐら!
「でもリオンさんはただでさえ目立つからその方が良いかもしれません」
「リオにぃのおかお見えにくくなった……」
「目立つって?」
「気づいていませんでしたか? お祭りの間中、かなり注目されていましたよ。主に女性から」
「うっ」
(やっば……、失念してた。ただでさえ昔から女難の卦があるってのに……)
「男の人からも注目されていましたよ? こちらは敵意丸出しの眼でしたけど……」
「あー、うん、ここしばらくはまともなところに住んでいたせいかうっかりしてたよ。どれだけ人の心が小さいか思い出したわ。やっぱりこれは必要だね」
(顔だけで騒ぐ女も寄り付きにくくなるし、嫉妬に狂った醜男も無視出来るしで、一挙両得。こいつを付けていないって選択肢はありえないな。俺の場合、神界のように完全に近い法整備がある所でもない限り、素顔を見せるメリットがゼロに等しいから)
「ああ、そうだ。テフィさん、やっぱりこのままけさぶろうに乗っていくことにするよ。心の準備はオッケイ?」
「え? 本気ですか? まあ僕はかまいませんが」
「うんうん。大丈夫。というか大丈夫になった」
「? 何だかよく分かりませんが凄い自信ですね……」
門番の詰め所は意外に明るくて感じの良い場所だった。
別に不審人物だから連行されたわけじゃなく、身分証明書の発行の為だ。
小説とかでは冒険者ギルド等で発行というのが定番だが、こちらでは各種ギルドの事務員が門にまで出張して手続きをしているみたいである。その中でも最も自分にあったギルドを選んで登録をするのである。
確かにこの方が、身分証明の無い人間が街をうろつくことは避けられるのでシステムとしては優れているだろう。
「というわけで、ハンターライセンスGETだぜぇ!」
「何をしてるんです……」
「おー、テフィさん、待たせてごめん」
「やっぱりハンターギルドを選びましたか」
「ん? 何か問題でもあるの?」
「いえ……、ただリオンさんはそそっかしそうだから心配です」
「なんとかなるよ!」
「心配だなあ……」
「けさぶろうも何とかなったでしょ?」
「何も言われなかったのが不思議ですけど」
王都は思っていたよりもスケールが大きなところだった。
入る前から見えてはいたのだが、中心の王城はまるで小山のようで、よくあるヨーロッパのお城が数十個隙間無く配置された感じの巨大な建物である。
遠くから見ると非常に幻想的な眺めで、絵葉書の題材としても相応しいほどの荘厳さに思える。
街中は石造りというか煉瓦の建物が多く並び、通りはゴミなどは見たところ落ちていなく、ある程度清潔感もあり、中世と言うよりはヨーロッパの田舎街のイメージに近い。
広場や主要な道にはモザイク状に配置された色とりどりの石が独特の雰囲気を醸し出している。
道行く人々の表情も明るい感じの人が多いようだ。大半は普通の人間だがちらほらとドワーフやらの亜人も歩いている。
『 ライラック雑貨店 』
ちょうどソフトクリームの上の部分が何かの拍子で地面にべちゃっと落ちたときのようなフォルムの建物が目の前に鎮座している。
高さは三階建てで、色合いは童話によく出てくるような淡い感じだ。
けさぶろうから皆で降りて、テフィさんを先導に雑貨店内に入ると、フライパンやら籠やら小物入れやら、色んなものが所狭しと置いてある空間に人のよさそうな老婦人の姿を見かける。
「おや、テフィちゃんかい。久しぶりだね」
「お久しぶりです、ライラさん。今、アイネさんは居ますか?」
「ふふっ、今ちょうど帰ってきているところだよ。アイネちゃ~ん。降りといで~」
トコトコと階段を降りてきた真っ白なコボルトのその姿としぐさは、普通とはかけ離れた上品な美のオーラを振りまいていた。
「アイネさん!」
「テフィ?」
(このモ○プチのCMにでも出てきそうな、気品にあふれた美美美コボルトはナンデスカ!?)
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