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足跡  作者: 大窟凱人


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7/10

ユニコーン

 2026年の始め、ユニコーンが突然現れた。


 ユニコーンはわたしによく懐いた。伝承によると純粋な女性には懐くようだ。複雑。



 とりあえずうちの牧場で飼い始めた。するとどうだ。このユニコーン、角に触れるとたちまち病気が治り、肉体労働でたまった疲れが一瞬でなくなり、不眠不休で働くことができ、顔も体も心も美しく若返り、草木は育ち、動物の糞尿で汚れた水もたちまち湧き水のようにきれいになった。なんか、ユニコーンのまわりだけキラキラしている。



 わたしはユニコーンのゆっちゃんを特別な厩舎に隔離し、存在を隠した。そして、この素晴らしい力を使って荒稼ぎすることにした。都会に出て、男をつくり、騙し、ビジネスを興した。なんでもできるような気がして、事実、なんでもできた。少し疲れるたびにゆっちゃんのもとに戻って角に触れれば、また超回復。片田舎で疲弊したまま望みも叶わず孤独に死ぬ運命を覆した。ありとあらゆる欲望を満たし、人生を謳歌した。都会で家族もつくった。人生最高!



 そうして、十年くらいそんな生活を続けた。実年齢は四十を超えているけど、この間行った健康診断では十代となんら変わらない肉体らしい。見た目もそう。でもまた疲れちゃったから、ゆっちゃんのところへいったん帰ろう。



 牧場へ到着して、ゆっちゃんのいる厩舎に入る。愛しのゆっちゃん。今日も癒してちょうだい。わたしはゆっちゃんの角に触ろうとした。



「うっ」



 手は空振りし、ゆっちゃんは頭を動かしてわたしのお腹にその角を突き刺した。血がぽたぽたと滴って地面を濡らした。



 なんで……。



 ゆっちゃんを見ると、荒々しく憤っていた。もうキラキラしてない。傷もぜんぜん治らない。思えば、ゆっちゃんを飼って何年かたったあたりから、なんだかゆっちゃんがそっけなくなっちゃった気がしていた。ちょっと汚い手を使ってお金を稼ぎ始めたころからかなあ。やっぱりゆっちゃん、純粋な人じゃないとダメなんだね。ごめんね。ごめん。

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