闇のプレイリスト
アプリで好みに合った曲を自動再生させながら仕事をしていたら、気になる曲が流れてきた。
「良いなこれ」
どれどれ。「torime」知らないバンドだ。新しい人たちかな。女性ボーカルか。ジャケットもセンスいい。私は彼らの曲をお気に入りのプレイリストに追加した。
それから、私はtorimeにドハマりした。プレイリストはすべて入れ替わり、一日中聞いても疲れないどころか力が漲ってくる。新しいCMのコンペも勝ち取ったし絶好調。しかし、彼らの曲をクライアントに提案したら却下された。耳が腐ってんのか。
もう彼らなしでは生きていけない。ライブに行きたいしグッズも欲しいし売り上げにも貢献したい。全財産渡したい。できれば結婚してほしい。だが、彼らの情報は公表されていない。素晴らしい音楽を聞かせてもらってるのに、お役に立てていないなんて。私は罪深い。
そんな時。アプリを経由して彼らが肉声を発信した。
「1月20日にライブやります! 遊びに来てね!」
歓喜。その場で踊り狂った。しかも同じファンがたくさんいるのか!
私はマッハで有休を取り、仕事を片づけ、引継ぎを完璧に終わらせた。
ライブ当日。
100人規模のライブハウスだが、満員だった。みんないい顔をしている。
胸を高鳴かせながら彼らの登場を待った。
そして――。
「みんな! 来てくれてありがとう!」
彼女はそう高らかに宣言した。生のtorimeはもはや神。私は泣いた。
演奏が始まった。デジタル音源を聞くのとは違う生音が私の魂を揺らす。
この時間が永遠に続けばいい。
「いいねみんな! いい感じ! それじゃあ行くよー!」
彼女はそう言い、ステージ上から飛び降りてファンの一人にかぶりついた。
血が大量に噴き出てライブハウスに赤い雨が撒き散らされる。
おお、神が! ファンたちを喰い始めた!
腕が、頭が、内臓が、手が、足が、目が、鼻が、歯が。人間のあらゆる部位が神たちに食い荒らされ、舞った。狂乱の演出!
最高だ……一心同体になれるなんて!
ボーカルの彼女と視線が合った。ついに私の番。
ああ、その口、目、牙、爪、翼。やはりあなたは神だった。




