絶望おみくじ
神社に初詣に行き、おみくじを引いた。出たのは「最凶」だった。
「ダイキ。どうだった? オレ中吉」
「え、あ。俺は……小吉」
友達にはとっさにでまかせを言った。最凶だなんて、見たことないぞ。大凶よりも悪いのか? 何が書いてあるんだ?
願望:絶対に叶わない。
待ち人:滅しにくる。
失せ物:そなたは消え失せる。
恋愛:望みはない。
旅行:この地で終わらせる。
いやいや、ここの神様、殺意込めすぎ――
ふいに視線を感じ、悪寒が走った。圧倒的な敵意だ。見ると、一緒に来ていた友達がいっせいに襲い掛かってきた。
「なにしてんだお前ら!」
大学のサークルで一緒の友人五名に羽交い絞めにされた。正気を失ってるなこりゃ。
さらに、神社の奥から破魔の矢を持った神主たちがぞろぞろをこっちへ向かってくる。やべェ。
頭を前後に振り、後頭部で背後のひとりの鼻を潰した。「うごっ」という声とともに羽交い絞めが緩まる。するりと腕の拘束を抜け、ありったけの力で両サイドの四人を殴り、蹴り、投げ飛ばした。どよめきと悲鳴は……聞こえない。代わりに、無数の来場者たちが迫りくる。まるでゾンビの群れの波だ。だけどなァ、波乗りならサークルでやりまくってるからよォ! 俺は来場者の上に飛び乗り、頭や肩を踏みながら軽快に鳥居の外へと向かった。
「はっ! 楽勝!」
神社から脱するまであとわずか。その時だった。
強烈な光。神主が鏡に太陽の光を反射させていた。それが全身に降り注ぐ。鏡には俺の本当の姿が映し出されている。
動けねェし意識が飛びそうだ。ありゃ、そんじょそこらの鏡じゃねェぜ。
あと少しでここから出れたのにクソがァ。あのおみくじが発見機になっていたとはなァ。おまけにこんな大勢に神憑きまでできるなんて、たいした神だ。恐れ入ったぜェ。ちっ。しゃあねェ。
俺は肉体を捨てて離脱し、神社の外へ逃げた。憑代の大学生は力を失い崩れ落ちた。
はァ。危ねェとこだった。ま、この街ではけっこう楽しんだからなァ。勉強にもなったしよォ。もういいぜ。次はどこのどいつに取り憑いてやるかなァ。




