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※cold sleep〜コールドスリープ〜  作者: def


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4/15

4話 消えた声

少し昔のはなし⸻


乾いた風が、砂を運んでいた。


異国の訓練基地。

焼けたアスファルトの匂い。

遠くで鳴る銃声は、もう日常だった。


「次、制圧訓練入るぞ」


ミネソタは短く指示を出す。


特殊部隊アルティメット。

彼は――隊長だった。


「隊長、相変わらず容赦ないっすね」


若いサーベイジが笑う。


「戦場は待ってくれない」


それだけ言って、ミネソタは前を見る。


この国にいる理由は、任務だけじゃない。

この街の一角に、妻と息子が住んでいた。


訓練が終われば、必ず顔を見に行く。

それが、唯一の救いだった。



その日。


空が、割れた。


――ドォンッ!!!


爆音。


地面が跳ねる。


無線が一斉に鳴り響く。


『市街地で大規模爆発!』

『武装集団によるテロ行為!』


ミネソタは即座に地図を確認する。


……色が、抜けた。


家族が住んでいる区域。


「アルティメット、出動!」


声は冷静だった。

胸の奥だけが、異常な速さで鳴っていた。



街は、地獄だった。


燃える車。

倒壊した建物。

泣き声と怒号。


「隊長、指示を!」


「市民救出優先!

 二班は東、三班は――」


指示は正確だった。


足だけが、勝手に走っていく。


「ミリア....」



「……ナラ……」


名前は、喉で消えた。



家が、見えた。


半分、崩れていた。


「ミリア! ナラ!!」


その瞬間――


――ドンッ!!!


至近距離の爆発。


耳鳴り。


世界の音が、消えた。



口が、動いている。


小さな影が、こちらへ走ってくる。


ナラだ。


泣いている。

叫んでいる。


……はずなのに。


声が、聞こえない。


ミネソタは叫ぶ。


「ナラ!!」


自分の声すら、届いていない。



瓦礫の向こう。


妻が、いた。


こちらを見て、何かを言おうとする。


唇が、動く。


――でも、音は戻らない。


次の瞬間。


崩れた天井が、

彼女の姿を飲み込んだ。



時間が、跳んだ。


ミネソタは、息子を抱えていた。


熱。

粉塵。

血の匂い。


ナラは生きている。


必死に、しがみついている。


「……大丈夫だ……」


そう言ったつもりだった。


その時。


ナラの顔に、温かいものを感じた。


……赤い。


「……?」


ミネソタは、最初それが

自分の血だと思った。


だが――


ナラの顔を見ると


右目に太い鉄の棒が刺さっていた。



血が、止まらない。


そこで初めて、

“守れなかったもの”が、はっきりした。



「隊長!!」


サーベイジが駆け寄る。


「……奥さんは……?」


ミネソタは、答えなかった。


答えられなかった。



数週間後。


ミネソタは、隊を抜けた。


理由は語らなかった。


ただ一言。


「俺は……もう、何も守れない」


夜になると、

爆音が蘇る。


息子の口が動く。

でも、声がない。


妻の最後の言葉も、

永遠に――聞こえない。



現在。


バーガーキングコング。


油の音。

ポテトの揚がる匂い。


ミネソタは、カウンターに立っている。


「……店長?」


サーベイジの声に、

一瞬、反応が遅れる。


「……あぁ、悪い」


無意識に、

出口と客の配置を確認していた。


まだ、隊長の目だった。



サーベイジは、その背中を見ている。


かつての隊長。


今も、隊長。





とある病院。


看護師が病室に入ってくる。


「ナラ君ー。点滴交換の時間だよぉ。」


「変わりはないかなぁ?」



ベッドにはずっと窓の外を眺める



右目に眼帯をつけた幼い少年が



無表情で座っていた。



第四話・完


次回もお楽しみにぃ!

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