2話 たんこぶ
静寂は、長くは続かなかった。
「……は?」
最初に声を出したのは、ねる子だった。
目の前で起きた出来事が、脳の処理能力を完全に超えている。
謎の少女。
潰れたマンイーター。
そして、その死骸を完食したあと、口元を拭いている少年。
「え、なに……今の……?」
「……あー……」
無礼は自分の手を見て、首をかしげた。
「なんか……うまかった」
「感想それ!?」
クラッカーが叫ぶ。
サーベイジは一歩引き、鉄パイプを構えたまま無礼を睨んでいた。
「……少年。君は、何者だ」
「俺?」
無礼は照れたように頭をかく。
「無礼。六才児無礼。ここに住んでる」
「住んでない!!」
ミネソタのツッコミが飛ぶ。
その瞬間、無礼の背後で、
尻尾が、ぴくりと動いた。
サーベイジの目が、鋭く細まる。
「……人間じゃない、な」
「えっ」
無礼は自分の尻尾を見て、今さら気づいたように叫んだ。
「うわ!!マジで生えてる!!」
⸻
「……僕の子供だよ♡」
その一言で、空気が凍った。
全員の視線が、こすりに集まる。
こすりは、何がそんなにおかしいのか分からないという顔で、
首をかしげている。
「え、違うの?」
「違う!!」
「法的にアウト!!」
「倫理的にもアウト!!」
鬼女羅マネージャーが額を押さえた。
「……ちょっと待って。
とりあえず、全員落ち着きなさい」
「落ち着けるかぁ!!」
ミネソタは叫びながらも、
無意識にこすりを自分の背中側へ庇っていた。
こすりはそれに気づき、少し驚いた顔をする。
「……おじさん、優しいね」
「うるせぇ」
⸻
その時。
店の隅から、
カリッ
という音がした。
全員が振り向く。
そこには――
デブネズミ。
いや、正確には、
耳と鼻が無くなったネズミがいた。
「……あれ?」
ねる子が指差す。
「さっきより、キモくなってない?」
ネズミは、こちらを見て、
自分の尻尾をじっと見つめた。
次の瞬間。
「カリッ」
「食ったああああ!!?」
自分の尻尾を、ミミズと勘違いして噛みちぎった。
「いや待って!!それ自分!!」
ネズミはしばらくもがいたあと、
何事もなかったかのように立ち上がる。
そして――
「……チュ」
どこか誇らしげに鳴いた。
「……名前、つける?」
ねる子がぽつりと言う。
「いらん!!」
「……たんこぶ」
こすりが、小さく言った。
「この子、たんこぶっぽい」
「うん、まぁ決定で!!」
⸻
サーベイジは、無礼とこすりを交互に見てから、
無線に手を伸ばした。
「……アルティメット本部。
状況は――想定外だ」
『詳細を』
「化け物を喰った少年と、
……“原因”と思われる少女を確保した」
こすりは、その言葉に反応しなかった。
ただ、無礼の袖を軽く掴む。
「ねぇ」
「ん?」
「ミミズバーガーおいしかった?」
「んー....控えめに言って」
「98点」
「うれしい♡」
こすりは、にこっと笑う。
この異様な光景を目の当たりにし、
サーベイジの背後で、ギロチンボーイが息を呑んだ。
「……隊長」
「分かっている」
サーベイジは低く言った。
「この街は――
もう、普通じゃない」
その頃、
街の地下深く。
無数の“何か”が、目を覚まし始めていた。
――ヤギが、見つかった。
――次は、奪う。
闇が、蠢く。
⸻
第二話・完
カオス....次回もお楽しみに!




