15話 チャリオット
無礼は、動かない。
割れたアスファルトの上に、
白目を剥いたまま倒れている。
その周囲を、
白いマンイーターたちが円を描くように群がっていた。
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その群れを散らしたのは、
轟音だった。
「撃てぇぇぇ!!」
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ドォォォォンッ!!
白い体が吹き飛ぶ。
続けて――
「進路確保!!」
「無礼を回収する!!」
アルティメット部隊。
バズーカ砲を持った隊員が並ぶ。
先頭に立つのは、
両手斧を構えた――ジャックハルト。
そして、その横。
血走った目で前を睨む、ギロチン。
「……化け物ども」
「今度は、俺たちの番だ」
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白いマンイーターが一斉に動く。
斧が振るわれ、
銃声が鳴り、
肉が裂ける。
アルティメットは強い。
だが――
数が、異常だった。
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「チッ……!」
ジャックハルトが無礼の体を担ぎ上げる。
「生きてる! 気絶だ!!」
「離脱するぞ!!」
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その瞬間。
――カツン。
ブーツの音。
戦場のど真ん中。
白いマンイーターたちが、
一斉に動きを止めた。
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「……?」
ギロチンが、息を呑む。
前方。
煙の向こうから、
“人影”が歩いてくる。
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黒に近い深緑の軍服。
金の装飾。
古いイギリス軍を思わせる、整った装い。
白手袋。
そして――
人間の顔。
口元には縫い目のようなヒビ模様
冷静で、
理知的で、
完全に“理性”を宿した目。
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その男は、帽子を軽く持ち上げた。
「はじめまして」
流暢な言葉。
「人類の皆さま」
一同、言葉を失う。
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「私は――」
「フレンズの一人」
「チャリオットと申します」
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空気が、変わる。
白いマンイーターたちは、
彼の背後で、兵士のように整列した。
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「フレンズ?」
ギロチンは眉を歪めた。
チャリオットは間髪入れずに答える。
「フレンズとは」
「“闇の主”に選ばれし、数名のマンイーター」
「それぞれが――」
「この星を滅ぼせるほどの力を持っています」
「な.....!」
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チャリオットは、穏やかに続ける。
「最近地上に現れたマンイーターズ」
「それらはすべて――」
「私が、生み出しました」
「……なに?」
誰かの声。
「私たちは、長い時間をかけて調査してきました」
「この地上」
「人類」
「文明」
「武器」
「そして――」
チャリオットの視線が、
無礼に向く。
「異様な力を持つ個体」
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「観測」
「試験」
「測定」
「非常に、興味深い結果でしたよ」
微笑む。
「あなた方は人類はとても"脆い"」
「だが、心は“壊れにくい”」
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ギロチンが、歯を食いしばる。
「……ふざけるな」
「じゃあ、今までの犠牲は」
「実験か」
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チャリオットは、否定しない。
「ええ」
「ですが――」
一歩、踏み出す。
「本日をもって」
「正式に」
「地球侵攻を開始します」
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その言葉は、
宣戦布告だった。
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白いマンイーターたちが、
静かに膝をつく。
主君への礼。
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店内。
床に無礼を寝かせ、
隊員たちが必死に応急処置を施す。
「意識は!?」
「全然戻らねぇ!!」
「あの軍服やろうの一撃だろうな」
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その時。
「……はぁ」
低く、苛立った声。
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鬼女羅マネージャーが、
仁王立ちで無礼を見下ろしていた。
「ちょっと」
「うちの戦力」
次の瞬間。
ゴッ!!
容赦ない一蹴り。
――股間。
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「ゥ゛ッッ!!?」
無礼の体が跳ねる。
「お゛ぉぉぉぉ!!?」
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「起きなさい」
「営業時間中よ」
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無礼は転げ回りながら跳ね起きた。
「いっっっっってぇぇぇ!!」
「殺す気かババア!!」
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その様子を見て――
「うおお!!」
「生き返った!」
たんこぶが泣きそうな顔で駆け寄る。
「チュー!」
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外から、爆音。
地鳴り。
白いマンイーターの群れが、
店を包囲している。
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無礼は、外を一瞥した。
「……」
「あの兵隊さんか」
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戻ってきたミネソタが言う。
「無礼」
「行けるか?」
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無礼は、笑った。
「殺してくるわ」
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次の瞬間。
扉を蹴破り、外へ飛び出す。
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白いマンイーターを、
殴り、
蹴り、
引き裂く。
だが――
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ズズズズ……
また、地面が盛り上がる。
新たな白い個体が、次々と生まれていく。
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チャリオットは、その光景を眺めながら言った。
「さあ」
「どこまで持ちますか」
「歪な人間さん」
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無礼は、血まみれで笑う。
「てめぇさっきの一発忘れてねぇからな」
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白い軍勢が、押し寄せる。
終わりは、見えない。
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第十五話・完
次回もお楽しみにぃ!




