1話 冷凍少女
⸻時は2222年の地球⸻。
「ありがとぉございましたぁ!」
バーガーキングコングの店長、ミネソタは客に向かって元気に手を振る。
エプロンの下に隠れた筋肉は元特殊部隊の名残で、濃い髭と相まって、常連からは「エロ髭ゴリラ」と呼ばれている。
「店長マジで声デカすぎだって...」
バイトのねる子がブツブツいいながら仕事をしている。
「ねる子、パティの補充頼む!」
バイトのクラッカーが叫ぶ。
彼はITオタクだ。
「あと、いい加減デブネズミの駆除頼むって。あんなの客にみられたら....」
⸻
次の瞬間だった。
世界が、白くなった。
目を焼くような光。
遅れて、地鳴りのような轟音。
「な、なんだぁ!?」
バイトのねる子は悲鳴を上げ、クラッカーは即座に端末を取り出す。
ミネソタは反射的にドアを蹴り開けた。
外のアスファルトに鉄の筒が突き刺さっていた。
湯気のような冷気を吐きながら。
筒の側面には、無機質な文字。
――※cold sleep
「....コールド.....スリープ?」
筒のガラス窓から中を覗いた瞬間、全員が息を呑んだ。
そこには、女の子が眠ってた。
頭から、ミミズのような触覚が二本、ゆらりと浮いている。
「冷凍保存系女子だな」
クラッカーが冷静に言う。
「じゃあ解凍しないとだよね?」
ねる子が目を輝かせる。
「……よし、風呂だ」
誰も止めなかった。
こうして鉄の筒は、店の業務用風呂でグツグツ煮込まれることになった。
その頃、町では人々の悲鳴が響き渡る。
皮膚のないような肌に目の下から無数の血管のようなひび割れ模様の人型の化け物――マンイーターが、通行人を引き裂き食べていた。
そこへ通報をうけて到着したのは、特殊部隊「アルティメット」。
隊長のサーベイジは両手の鉄パイプでマンイーターの顔面をおもいっきり殴打。
マンイーターは吹っ飛ぶ。
「皆さん早く避難を!」
サーベイジが叫んだ瞬間。
「隊長ぉぉぉ!!」
顔面包帯グルグルのギロチンボーイが叫ぶ。
彼はサーベイジの前に滑り込み2本の刀で何かを受け止めた。
それは吹き飛ばされたはずの化け物の伸びた腕だった。
⸻
そんな最中、バーガーキングコングでは命名会議が始まる。
「コールドスリープだから……」
「略して?」
「こるす……り」
「こす.....」
「こすりちゃんで!」
満場一致だった。
拍手喝采がおこっていたその時⸻
「あなた達何をしているの!?」
現れたのはメガネをかけた女性。
マネージャーの鬼女羅である。
ミネソタは呑気に答える。
「いや、今俺たちの新たな仲間の命名式を....」
「町でとんでもない化け物が暴れてるのよ!!」
ピロリン♪⸻
客が来た
「いらっしゃ...」
「............!!!」
化け物が立っていた。
マンイーターは匂いに誘われるように、バーガーキングコングへ来たのだ。
ねる子が来る。
「いらっしゃいま....」
「ぎゃあああああ!」
「ドきしょぉぉぉっ!」
パニック。
その時だった。
ガンッ!
鉄の筒が内側から突き破られた。
湯気と共に現れたのは、目を覚ましたこすりちゃん。
彼女は、辺りを見回す。
店内が大パニックになる中、唯一食事を続けている猛者がいた。
⸻
彼の名は「無礼」
この店に居座り店長から食料廃棄をもらっているいろいろアウトなホームレスボーイだ。
「……食べる?」
こすりちゃんが何かを差し出した――
「えっ...!?」
ミネソタ達はゾッとした。
バンズの間にはパティの代わりに大量のミミズがはみ出ていた....
ミミズバーガーだ。
「えっ、いいの? いただきまーす」
一同が止める間もなく、無礼は躊躇なくかぶりついた。
よく見ると横からデブネズミがミミズを一本こっそり食べている。
すると、、
ニョキっ
無礼の尻から、ミミズのような尻尾が生えた。
「なんだこれぇぇぇ!かっけぇぇ!」
無礼は無駄に喜ぶ。
その時⸻
後ろからマンイーターが襲いかかる。
だが。
サーベイジ達が駆けつけて
ギリギリで守る。
「逃げろ!少年!」
しかし、マンイーターの手がいくつも増え。サーベイジ達を襲う。
彼らは経験したことのない
恐怖に襲われる。
その時
「うるせぇなぁ」
グチャっ!!!
無礼は化け物を殴り潰し、
そのまま化け物を
喰ってしまった。
静寂。
こすりちゃんは、血まみれの無礼を見上げ、にっこり笑う。
「君は今日から――」
触覚が、ぴくりと揺れた。
「僕の子供だよ♡」
第一話・完
⸻こすりちゃんの目的は?
すべての歯車が動き始め、コールドスリープという謎が少しずつ解け始める...




