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第2話 平和の渇望

ヒストリアが地球管轄となって数ヶ月、本来ならばすぐにでも適合する少女を探し当て滅龍の討伐を進めなければならなかった


ゲンム「アテナ!いい加減に変なこだわりを辞めないか!お前の望むバディは条件が高すぎるぞ!」


ヒストリアをまとめる管理長である ゲンム・シードは当時まだバディのいなかったアテナと話していた


アテナ「ゲンムおじさんが見せてくれた子達みーんなパッとしなかった!アテナはアテナの心をときめかせてくれる子がいい!じゃないとアテナの力は貸してあげないよーだ」


ゲンム「お前のわがままを聞いている場合じゃないんだ!…………頼むから自分の立場を理解してくれ…」


アテナ「………ふん、お出かけしてくる!」


アテナは人間の姿のまま本拠地を出ていき、適当に原宿辺りを歩いていた

アテナの着ている服は簡単に言えば地雷系のようなものであり、原宿を歩いても違和感はさほど無い

すれ違う少女の潜在能力を確認しながら前へ進み、ため息をついて空を見あげた


アテナ(…はぁ…アテナにピッタリな子いないのかなぁ……というかお腹空いた…人間の姿になると普通に空腹感が出るから…お金なんて持ってきてないし…元の姿に戻った方がいいのかなぁ…でも戻ると…こんな道端の真ん中で落ちることになるし…………)


アテナが壁に背中を預けて人混みをジーッと見てると灰色の世界にまるで鮮やかな色が現れたかのように目を奪われる少女が視界に入った


アテナ「……っ…まって…そこの子!」


アテナが慌ててその少女を追いかけ、手首を勢いよく掴むとその少女は怯えるかのように驚きアテナの方へ顔を振り向いた

その少女こそ天音であったのだ


天音「…ヒッ……な、なんの御用ですか…?」


アテナが天音の顔をちゃんと見た時の第一印象はなんて弱々しいんだろうという心配と哀れみの感情であった。手入れされてない髪に、暑い夏なのに長袖と長ズボンを着ていて頬にはまるで殴られた跡のような痣が見えていた


アテナ「……あっ………その……」


アテナ(何も考えずに話しかけちゃったぁ……どうしよう…この子のこと知りたいのに…こういう時ってなんて言えばいいんだろう………)


天音「……お話があるなら……道端で聞きますよ」


天音の提案で2人は道の端に寄り、静寂に包まれた気まずい雰囲気が現れていた

アテナは何か話をしようと世間話を出し始めた


アテナ「あ、あなたの名前ってなんていうの??…その……あなたは誰よりも輝いてたから…あっ!こういうのって人間では失礼に値するんだっけ……」


天音「……私は天音です。貴方は?」


アテナ「アテナはアテナ!」


天音「あてなさん…可愛い名前ですね」


アテナ「でしょーー!?お気に入りの名前なの!」


天音「……」


アテナ「……え、えーと……じゃああまねって呼ぶ!あまねは他の人間とどう違うの?」


天音「………え?…私が…他の人とどう違うかですか…?…………私は弱いです、どうしようもなく」


アテナ「………その頬の痣ってもしかして誰かに殴られたの?」


アテナは恐る恐る聞いた。エンゲージストーンである以上人間の心情や常識は学んではいないが、ゲンム達と話していくうちにある程度の常識は学習していた。

相手の闇に無闇に関わるべきではないと思っているが、アテナの天音に対する興味はどんどん膨らんでくばかりであった


天音「……あぁ…これは…私が悪いんです。ちょっと相手を怒らせてしまって…でもこれぐらいすぐ治るので」


アテナ「………アテナで良ければ治すよ?…あまねには元気でいてほしいって…なんか思えるから」


天音「…気持ちだけ受け取っておきますね、あてなさんって医療系の方なんですか?」


アテナ「……あっ、えっと…医療というよりかは…うーん…簡単に言っちゃえば医療に入るのかなぁ…」


天音「………」


アテナ(や、やばい…本当に話題が思いつかない……やっぱりいきなり話しかけるのは良くなかったよね!!絶対変なやつって思われてるよーー!)


アテナが内心ソワソワしていると、天音のカバンから電話の音が鳴り響き天音がその音を聞くと同時に慌てて携帯を取り出して少し震えながら電話に出た


天音「…も、もしもし…?お母さん…?………あ、えっと…今原宿で……う、うん今すぐ帰るね、ご飯も作るから…」


アテナ「…帰っちゃうの?」


天音「せっかく話しかけてくれたのにごめんなさい…お母さんに早く帰れと言われたのでこれで失礼しますね。また会えたら今度はちゃんと話のネタある状態になっときます、それでは!」


天音が会釈をしてアテナの元から離れ駅の方まで小走りする姿を見たアテナは「天音と離れたくない」と「でも天音に迷惑が」という2つの気持ちに葛藤したが、天音に気づかれないように周りの人に気づかれないように一瞬で天音のカバンにエンゲージストーンとして潜り込んだのだ


アテナ(あまね……)


そうしてカバンの中から天音の様子を確認しながら、静かにしていると鍵を開ける音が聞こえ、カバンの縁まで浮遊し、辺りを確認していた


アテナ(ここがあまねの家なんだ…なんか…寂しい所だなぁ…)


天音「ただいま、おかあさん」


天音がそう言うと、奥から銀色の飲み終わったビール缶が飛んできて天音の足元に転がった


天音母「酒、早くご飯」


天音「う、うん。待ってて」


アテナ(ちょっと!あまねに向かって物投げるとか当たったらどうするのよ!あまねにまた傷が増えたら……)


天音はカバンを床に置いて台所へ行き、冷蔵庫から必要な材料を取り出して母親の為にご飯を作り始めた


アテナはカバンからこっそりと出て、天井の方へ移動しそこから見下ろすように天音と天音母を見ていた


アテナ(人間としての家族の在り方は詳しくないけど…こんな寂しいものじゃなかったはず…………人それぞれ複雑なものなんだね…)


アテナがそう思っていると、天音がご飯を作り終えたのか出来た料理を皿に乗せて母親の元へ届けた


天音「お酒とご飯だよ、お母さん。今日は麻婆豆腐を作ってみたの…どうかな…」


天音の絆創膏だらけの手がはっきりと見えた

家の中だからと長袖も捲っていて、青紫色の痣がチラホラ見えた


アテナ(うぅ…後で絶対治療するからねあまね…それにしてもまーぼーどーふってやつ美味しそう…流石あまね!…人間の姿になってもいいかなぁ…こういう時どうすればいいのか分からないや…)


天音の作った麻婆豆腐を見るやいなや、天音母はいきなり取り皿を手に取り天音の方に向けて投げたのだ


アテナ(………は?)


天音「………お母さん?…」


皿は天音の頭に激突し、天音はぶつかった所を手で押さえながら後ろへ足をひいていた

天音母は息が荒くなり、髪の毛をワシャワシャとし始め急に叫び始めた


天音母「天音ぇぇぇぇぇ!!あんた私の事を馬鹿にしてるのかぁぁぁぁ!」


天音「馬鹿にしてない!」


天音母「この麻婆豆腐はあの人の…浮気相手が得意だった料理だろうがよ!!!!!!」


天音「えっ…………ごめ…ごめんなさい…ごめんなさい!知らなかったの!もう作らないから!」


天音母「あんたも私の敵なのね!!!」


天音母は机に拳をぶつけ、静かな空間に殴る音だけが響いていた


天音「……私はずっと…お母さんの味方だよ…」


天音母「………………ならあの人を取り戻してきて」


天音「………お父さんを?…」


天音母の目はまるで正気を失っているかのように焦点が合っていなかった。天音は恐怖で体が動かず、母親と目を合わせずに何すれば母が怒らずに済むかをずっと考えていた


天音母「……あんたって本当私に似てないわよね…綺麗な顔立ちしてて……あんたみたいな顔がどれほど羨ましかったか…あの人はあんたを連れていこうとしてたけど、天音…貴方まで幸せになるのは許せないから………なんで傷があるのに…あんたは…それでも醜いほどあの人みたいな顔してるのよ!!その目で私を見るなァァァァァァァ!!!!!」


天音母は床に落ちて割れた皿の破片を掴み、天音に向かって投げた

アテナは人間の姿になって助けようとしたが、ここで介入するべきなのかと思いとどまった

原宿で天音と話した時にアテナは何となく察していたのだ、天音から深く介入しないで欲しいという遠慮の距離感というものを。このまま助けたとしてその後どうするのかという話になり、こういう場面に慣れていないアテナは動けずにただ見ているしか出来なかった


天音は両腕で防ごうとしたが腕の隙間を通り抜けてきた破片が頬の痣を掠り、切り傷が長くできてしまった

傷口を両手で押さえ、涙を流しながらただ母親の顔を見つめていた


天音母「だから私をその目で見るなと言っているだろうが!!!!!!!このバカ女がぁぁぁ!」


天音母が天音の方へ歩き出し、胸ぐらを掴んで顔を殴ろうとする素振りを見せた瞬間具現化したアテナがその拳を片手で軽く受け止めた


アテナ「……今すぐ辞めなさい、反抗する意思を見せたらこの拳壊すわよ」


天音「っ……あてなさん…!?なんでここに…!?」


天音母「だ、誰よ貴方!!!!どこから入ってきたのよ!!!!」


天音母は必死に振りほどこうと力を入れたが、アテナの怪力に敵わず睨んだような目つきをしていた


アテナ「……あまねを虐めるのやっぱ許せない、アテナは人間じゃないからこういうのよく分からないけど………このままじゃ…あまね死んじゃいそうだったから…」


天音「…………あてなさん…その手を離してあげてください」


アテナ「…嫌だ」


天音「えっ」


アテナ「離したらまたあまねを殴る、あまねが傷つく、あまねが泣いちゃう…そんなの嫌だ。あまねはアテナの運命の人だと思ってる。あまねと仲良くなりたい、あまねのこともっと知りたい、あまねのやりたいことを尊重したい………だからあまねを護る、それだけだよ」


天音母「あんた天音のストーカーとでもいうの!?!?早く離しなさいよ!化け物!」


アテナ「…化け物……アテナから見たらあまねを傷つける貴方が化け物に見えるけどね、じゃあ離してあげるよ」


アテナは天音母の手首を軽く折るように力を入れ、天音母に激痛が流れ悶えていた


天音母「いやああああああああああぁぁぁぁっ!!!!!!」


アテナ「…んー…こんだけで骨折?だっけ。しちゃうとか弱すぎ………あまね!やっぱりアテナがあまねを護る!あまねを傷つけるやつは全員アテナがボコボコにしてあげる!」


天音「…………あの……あてなさん…」


アテナ「ん?なぁに?」


アテナは天音の頬を優しく触り、治療を行っていた


天音「………あてなさんは………本当に変な人………さっきも思ったんですけど……距離感の詰め方が異様に早かったりとか…人間と言ってたりとか……まるで人間じゃないように思えます」


アテナ「………そうだよ、アテナは人間じゃないもん。アテナは人間の言葉で翻訳するとエンゲージストーンって呼ばれるの。だからアテナは人のことがよくわからないの、さっきだってずっと見てた。だけど人間関係はどこまで介入していいのか分からなかったの、あまねに嫌われるかなって。話を聞いたことはあるから………変に関わって…嫌われたみたいな?……でもあまねが死にそうになるのはもっと嫌、あのまま傍観してたらあまねは死にかけてたと思う」


アテナが頬から手を離すと頬の傷はすっかり無くなっており、痣も綺麗に無くなっていた


天音「……痛くなくなった…傷口もない…」


アテナ「良かった……じゃあこの女殺しとくね、やっぱり危険因子は消しておく方がいいし」


天音「お母さんを殺さないで!!!お願いします……殴ったり…するけど……それでも大切な母親なんです……」


アテナ「…………あまねは優しいね……………こんな人間の塵屑のような女を守ろうとするなんて…あまねの意志を尊重するよ」


アテナは天音母の頭を右手で鷲掴みにし、軽々と持ち上げた

天音は「何をしてるのっ」と慌てていたが、アテナは「殺さないよ」と天音をなだめた


アテナ「…………アテナの名のもとに命じる、今後一切あまねに危害を加えてはならない」


アテナがそう言うと、天音母は脱力したかのように床に倒れ口から涎を出した

驚いた天音は慌てて母親のところへ駆け寄るが、アテナはその天音の手首を掴んだのだ


天音「あてなさん!?お母さんに何したんですか!?」


アテナ「大丈夫、もうあまねに危害を加えないように言質の攻撃をしただけ。今は脳が処理してるから倒れちゃったんだよ。このまま放っておいたら数十分後ぐらいには起きてるからさ。それよりもアテナと一緒に本部へ行こう!」


天音「ほ、本部…?」


アテナ「アテナとあまね!きっと最強のペアになるから!あそこなら誰もあまねを傷つける人はいないから!」


天音「………は、離してください!さっきから本当…何なんですか……お母さんに変なことするし…変なところ連れていこうとするし…………」


天音はアテナの手を振りほどこうとしたが、体格に似合わないほどの怪力で逃がすものかと握られている為振りほどくことができず、ただ目の前にいる可愛い姿をした狂人に何をされるのかという恐怖があった


アテナ「………ごめん………アテナはあまねの気持ちが分からないんだ、泣いているとか…顔に出てるなら分かるんだけど…執拗いとかウザいとか心の中に秘めてる感情は全くわからなくて………あまねの迷惑だったよね、でも、でもね、アテナの力はあまねの力になるの!あまねのやりたい事を叶えられるかもしれない大きな力が!……ずっと探してたの、アテナが心の底から一緒にいたいって…守りたいって…アテナの大切な力を使って欲しいって思える存在…今日やっと会えたのに……嫌われたくない………ごめん……ごめんなさい…もしあまねに嫌われたら…アテナ自害するからぁぁぁ!!!!」


天音「えっ…ちょっ!あてなさん自害とかしないでください!」


アテナ「自害って意外と簡単なんだよ、アテナの場合は体内にある85620個のコアを順番通りに破壊すれば…見たかったら今実演するよ…」


天音「しなくていい!しなくていいからぁ!」


天音(この人…本当にめんどくさい人だぁ……)


天音「………分かりました…自害を絶対にしないというならついて行きます……ただし本当にヤバそうなところだったらすぐ帰りますからね…」


アテナ「えぇっ!?本当!!やったぁぁあ!それじゃあ行こう!」


天音(感情の切り替えはやっ!?)


こうしてアテナが天音を連れて本拠地へ向かい、ゲンム一向に紹介をした

あの頑なに力を貸そうとしないアテナがバディを連れてきたことは歴史管理課の者たちが全員立ち止まるほどの衝撃を受けていた


天音「……なんかの機関…?ここで何をするんですか…?」


アテナ「あまねの素質を見るの!!アテナとあまねの相性も確認して〜!もし相性が良かったら武装して~」


天音「……え、待ってください。ぶそうってなんですか…?武装?…」


アテナ「ん?あまねがアテナの力を使うには武装しないと負荷がかかりすぎて大変なの!ゲンム!あまねをよろしく!」


ゲンム「……君がアテナの連れてきた子か…アテナが多大な迷惑をかけて本当にすまない。誘拐みたいに連れてきてしまってるようだが…後できっちりと説教しておくと約束する。そして君にもお詫びとしてなにか…」


天音「あ…大丈夫です…あてなさんには色々助けてもらったので………変わった人ですけど…」


アテナ「あまねの為ならアテナ頑張る!」


ゲンム「……そうか、それではまず最初に聞きたいことがある。君は野望を持っているか?」


ゲンムがそう質問すると天音は少し驚いた顔をして、うーんと悩んでいた。

そして呟くようにこう言った


天音「……私は…平和が欲しいです…」


この願いが後のアメリアになる為の必須条件なのであった












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