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2話 孤独からの解放

「傷が治ってる」


 こ、これはまさか再生能力? 寝たら治る的な。


 落ち着いて周りを見渡してみると、何か異変があるように感じる。


「これ、周りの草が成長していないか? いや枯れているやつもある」


 それに、忘れてたけど…。


「さむっ!!」


 これ何度だ。めちゃくちゃ寒いのだが。


「ついさっきまで灼熱だった気がしたんだけど」


 どういうことだ。一体僕どんだけに寝てたん?


 その時、どこからか声が聞こえる。


「だ、誰か居ませんか〜」


 人だ。人がいる。助けてもらえる。一緒に喋ってくれる。一緒にいてくれる。一緒に悲しんでくれる。


 ああ、やっと「孤独」から解放される。


「います!!」


 僕はできるだけ大きな声で叫んだ。


「ひゃ!」


「います!」


「わ、わかりましたから」


「あ、あの、その、突然申し訳ないんですけど。た、助けてくれませんか…?」


 僕はその顔をちゃんと見たとき驚きで声が出なくなった。


 それはこの人が金髪のガキンチョだったからではない。


 耳が長かったのだ。


「えええええ、エルフ!?」


 僕がそう叫ぶとそのエルフも顔上げ、僕の顔をちゃんと見る。


「ににににに、人間!?」


 どうやら相手もかなり驚いていたようだ。それにしてもエルフか。エルフねぇ。


「耳、耳触らして!!」


「へ? い、いやです」


「ちょ、ちょっとで良いからさ」


 僕は、鼻息が荒くなって、セクハラをするおじさんみたいになってしまった。


 しょうがないのだ。これは不可抗力だ。エルフなんていうアニメ要素が目の前に立っているのだ。そんなの触らずにいられるわけがない。


「い、いや!」


「ぐはっ!」


 彼女の振り上げた拳は僕の顎にクリーンヒットし、僕は宙を舞う。


「良いパンチだね……うぐ…」


「あ、す、すみません!」


「い、いや、僕が悪かったよ。ぶん殴られたおかげで冷静さを取り戻した」


 僕はゆっくりと体を起こす。


「それで助けてほしいって?」


 正直こっちのセリフなんだけど……。


「そ、それは、その……」


 もじもじして話そうとしない。


 めんどくさいガキだな。


「早く言ってよ」


「でも…」


「早く!」


「はい…。その、私も連れて行って下さい…」


「いいよ」


「へっ!?」


 僕が即答すると、少女はすごく驚いたような顔をする。


 これ以上、孤独に耐えるのは正直もう無理だ。100人殺した犯罪者だろうが、一緒にいて欲しいくらいだ。


「わ、私のようなエルフをあなたのような人間が連れて行ってくださるのですか!?」


「別にエルフも人間もないでしょ」


「ありますよ! エルフは昔から奴隷として扱われてきた種族。人間にとっては家畜同然です……」


「僕は異世界から来たしそういうの分からないけど、エルフは可愛いから家畜と表すのはナンセンスだね!」


 よし、言いたい言葉ランキング57位のナンセンスを言えたぜ。


「せめてメイドとか、役人とかの方がいい」


「でも、実際エルフは家畜のように扱われてきてるんですよ……!」


 少女は噛み締めるように言う。


「そりゃあセンスのない人たちだね。そんな奴ら僕が全員ボコボコにしてやるから気にすんな」


 僕が言い切ると少女は小さく泣き始める。


 あれ、ちょっと言い過ぎちゃったかな。僕は毒舌だからね。小学生の頃はよく友達を泣かせたものだ。


「ついて行きたい。あなたについて行きたいです!」


 少女は顔を上げて決意を固めたような目でこちらを見て言う。


「よろしく」


 これが、種族を超えた熱い友情ってやつかな。


 少し違うか。


「そういえば、魔法について何か知らない?」


「魔法ですか? 基本的な知識くらいは知ってますよ」


「教えて!!」


 僕は食い気味で顔を近づけ言う。


「は、はい。魔法は基本的に自分のことを強化する画面を想像して使うのです」


 ん? 何か思ってたのと違うぞ。


「その画面のようなものをシステムと呼びます。そこではあとどれくらいでレベルアップするのか、自分の体力や魔力などを見ることができます」


「後は、詠唱すると使えるとか何とか」


 なんていうか、思ってたのと違うな。こんなゲームみたいな感じなんだな。まあ魔法が使えるなら何でもいいけどね。


「へぇー、なら早速やってみるよ」


 うーん。頭を回して……。


「………出来た!!」


「えぇ!?」


「で、できたんですか!?」


「うん、普通にできたよ。でもなんかぼやけてる」


 別に想像するだけなんだから、簡単にできるに決まっているだろ。


「こんな簡単にできるなら、みんな使えばいいのに」


「できませんよ! 普通は!」


 中二病だったおかげで妄想力が働いたかな。よかったよかった。


「ていうか勇者じゃないんですか? なんでシステムのことも何も知らないのですか!」


「勇者?」


「だって異世界から来たんですよね?」


 ああ、多分僕はシナリオ無視してしまったんだろう。まじか、何をするのが正解だったんだ? 難易度高すぎるだろ。


「うん。でも水も確保できてないし、食料も確保できてないし、異世界のことも何も知らないよ。つい最近来たばっかだし」


「ええ!? 生きるためについてきたのに私死ぬんですか……?」


「うん」


 僕は笑顔で親指を立てる。 


「僕なんてもう相当何も食ってないと思うよ」


 どんくらいか知らんけど寝てたしね。


「そ、それにしてはしっかりした体してません?」


「それに関しては、僕もよくわからん」


 そういえば、さっきの何だったんだろう。傷も治っているし。


「こ、これじゃ2人揃って飢え死にしてしまいますよ……」


 あれやばい。泣きそうになってる。まあこんな少女だし、無理もない。なんなら今僕とまともにしゃべっているのが異常なくらいだ。成人した大人でもこんな状況じゃあまともな精神は保てない。


「お前何歳だよ……」


 僕がぼそっとつぶやく。


「年齢は360歳ですが、人間の年齢で言うなら六歳ですかね……」


「ふぁ!?」


「360歳!? クソババアじゃねーか!!」


 正直、人生で1番びっくりした。


「むぅー! まだまだぴちぴちですよ」


 そう言ってこの婆さんは頬を膨らませる。


 ま、まあ360年間働き続けてただけだろうし、精神年齢は20歳くらいだろう。うん、そう信じよう。




  







 


 


 





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