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【BL】古魔道具屋の女房と猫  作者: 丁銀 導


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021 カロン川心中②【レオ】

「一週間前の俺の精神状態はもう最悪で、本当にもう苦しくて、

 ジュナイさんを電話で呼んで、死にたいどうしようって言ったんです。

 …そしたらジュナイさんは「そうか…じゃあそろそろ死ぬか」って、優しく笑って…

「で?どこでどう死にたい?」

 そう聞かれて、俺は助かりたくないから、入水がいい。

 それも、この時期のカロン川がいいって、答えたんです。

 …イーサンから聞きましたか?

 昔、黒ギルドから密漁やらされて、冬のカロン川に腰まである

 ゴム長みたいの履いて入ったって。

 あれが本当にキツかったんで、それを憶えていて。


 それで、ジュナイさんと夜道を延々歩いてって、カロン川まで行きました。

 川べりって当然だけど、灯りとか全然なくって…

 物凄い量の水が闇の中をごうごうと海まで流れて行くのが、

 化け物みたいに見えるんです。

 でも、不思議とその時は怖くなかったです。

 ただ、もうすぐフレデリック作に会えるなぁって…嬉しくて。


「じゃあ行くか」ってジュナイさんに手を引かれて、

 川の中へザブザブ入って行きました。

 それがもうほんと冷たくて…というか、

 冷た過ぎて骨の髄に凍みるくらい痛くて!

 

なんかこう、ぽやんと夢心地だったのが一気に醒めたっていうか…

 早い話、俺は早々に怖気づいたんです。

 …ほんとお恥ずかしいんですけど。


 でもジュナイさんは俺の手首をぎゅっと握って、川の中を進んで行くんです。

 俺がどれだけ名前を呼んでも返事をしてくれなくて、何かに取り憑かれたように

 深みへ深みへと進んで行くジュナイさんは…本当に怖かったです。

 俺なんかよりも、死に焦がれていたのはこの人だったんだって…

 その時になって、ようやく分かりました。


 それで、思ったんです。

 俺はいいけど、なんでジュナイさんが死ななきゃならないんだって。

 だってこんなに…ジュナイさんはこんなにいい人なのに!

 

 似たような生い立ちだからって、

 俺たちみたいな野良犬同然のガキに親身になってくれて、

 ラルフ先生の他にも、この人に救けられた人は数え切れないのに、って……。


 そんな感じで、死ぬ気なんか全然なくなって…

 あとはもう無我夢中でよく憶えてないんですけど、

 気が付いたら全身ずぶ濡れで川べりで焚き火に当たってました。

 ジュナイさんも無事でした。


 ほっとしてたら「飲め!この大馬鹿野郎!」っていきなり

 アスラさんに罵られて頭殴られてコーヒーカップ渡されて…

 アスラさん?

 …ええと、黒ギルドのエライヒトです。

 すごく怖くて、俺はなんか目の仇にされて、よく苛められたんですけど…

 よく見たらその辺、黒ギルドの人がゾロゾロいました。

 …裏稼業も最近は儲からないんですね…上納金が払えなくて、

 下っ端にモモ貝の密漁させて、アスラさんは見張りだったみたいです…。

 飲まないと殴られるし、アスラさんから貰ったコーヒーを飲んだら、

 すっごいあったかくて…なんか滅茶苦茶に涙出て。

 ジュナイさんを見たら

「死ぬのは、もうヤメだな」って、にこって笑って…


 俺はジュナイさんに抱きついて、

 バカみたいにわんわん泣きました…

 

 俺もジュナイさんも生きてる。

 それが、本当に嬉しかったです」


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