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家族の反応

冬の寒さが和らぎ、春の兆しが見え始めたある日。篤志は、緊張と決意を胸に、斎藤家の居間に座っていた。向かいには厳格な父・文蔵と、優しくも心配そうな母。いつもは温かい家だが、今日はどこか重苦しい空気が漂っている。


「父上、母上。私、香月屋の柑乃さんと結婚したいと考えています。」


篤志の声は震えていたが、真剣な眼差しは揺らがなかった。文蔵はその言葉を聞き、しばらく沈黙した後、ゆっくりと口を開く。


「香月屋は名高い薬問屋である。しかし、柑乃は薬師だ。医者の嫁としてこの斎藤家にふさわしいか、疑問だ」


その言葉には医家としての誇りとしきたりへの固執がにじみ出ていた。母は心配そうに息子を見つめるが、言葉は発しない。


「父上……柑乃さんは私にとってかけがえのない存在です。医と薬、それぞれの立場で互いを支え合い、共に未来を築いていきたいと心から思っています。」


篤志の目は真っ直ぐに父を見据えていた。しかし、文蔵の表情は険しく、昔ながらの医家の伝統が彼の心に深く根付いているのがわかる。


篤志の胸には、不安と期待が入り混じりながらも、決して揺らがない想いがあった。


―――――――――――――――――


一方、香月屋では、宗助がゆったりと座敷で孫娘の話に耳を傾けていた。


「篤志殿と結婚する、か……」


目を細めているが、どこか複雑な表情を浮かべている。


「お爺様、私の決意は固いです。篤志さんと共に生き、薬師としても一人の女性としても成長していきたいのです。」


宗助はしばし沈黙の後、ぽつりと呟いた。


「……だが、おまえが嫁げば、香月屋の看板はどうする?おまえなしでは、店は回らぬぞ。」


その言葉には、看板と後継ぎへの深い想いが込められていた。


柑乃は負けずに答えた。


「お爺様、香月屋は私だけのものではありません。皆で力を合わせて守っていきます。」


宗助の顔にはほのかな笑みが浮かぶが、その瞳にはまだ心配の影が残っていた。


―――――――――――――――――


そんなある夕暮れ、篤志と柑乃は、神田の町を歩いていた。


「父上の反応は、やはり厳しかったな。」


篤志がぼそりと言う。


「でも、先生の真っ直ぐな気持ちは届いていると思いますよ。」


柑乃は笑顔で返すが、心の中はまだ不安でいっぱいだった。


「俺たち、不器用だけど、これからも支え合っていこう。」


「はい、先生。」


二人は自然に手を繋いだ。夕焼けに照らされて、温かな光が差し込む。

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