エピソード6 模擬戦?戦うのに模擬とかあるの?
「じゃーん! 模擬戦特化の副会長、ジーク・ハウルです!」
アナウンスと共に歓声が響き渡るどっかの訓練場。
全校生徒が集まり、空気がざわついている。
私は、もう、やる気ゼロ。
「……どうせまた、『抑えてください』って言われるパターンでしょ。全力出したら怒られるやつ」
「その通りだけど、できれば怪我人は出さない方向でお願いね!」
と笑顔で言ってきたのは、運営担当となったエイミ。
「そんな軽く言うことじゃないと思うんだけど……」
対するジークは、爽やかイケメン。
剣を片手に颯爽と登場し、手を振ると女子生徒たちが悲鳴をあげた。
「君がリヴィア・ノースフェルか。よろしく頼む。手加減はしないよ」
「私はしたいんだけどね……」
手加減しなかったら、魔物みたいに木っ端微塵にされる恐れが…
試合開始の鐘が鳴る。
ジークが風をまとって一気に距離を詰めてきた。
「風刃連舞!」
刃のような風が何重にも重なってリヴィアへ襲いかかる。
その瞬間、リヴィアの瞳がほんのり紫に輝いた。
(魔力隔壁)
頭の中で音を発する。
音もなく風刃が霧散する。
観客がざわめく。
「なにそれ!? 無詠唱!?」
「防御結界か…?見えなかったぞ……!」
ジークは間髪入れず接近し、剣を振るう。
「まだまだッ──!」
魔術で剣を生成して、相手の剣を弾く。
「剣も扱えるって聞いてたけど、ここまでとは……っ」
「じゃあ、次はこちらから」
紫色の魔力がリヴィアの足元に集中する──瞬間、彼女は消えた。
「上か──!」
見上げたジークの目に、魔力をまとって急降下するリヴィアの姿。
「《重魔剣・穿》!」
爆風と共に地面が抉れる。土煙があがり、会場が静まり返る。
──次の瞬間、土煙の中からふたりの姿が現れた。
ジークは気絶寸前、剣を杖で受け止めた体勢のまま、膝をついていた。
「……ま、負けた……完全に……」
「えっ」
「副会長が……!?」
「何が起きたの……!?」
「はい! 今のは『魔力による瞬間加速+斬撃増幅+爆発干渉』の三重魔術でした!」
そんな実況しなくていいから。
「……でも、楽しかった……また、戦って……くれ……」
「全力出してないのに」
また、なんだかんだ言われそうな予感。