エピソード30 国外外交官来訪。私はただクロワッサン食べてたんだけど?
「今日は王族様のお墨付きで、国外から大勢の外交官が学園に来るらしいよ」
寮の食堂で、ルシアンがにこにこ顔で言った。
「外交官……? なんか、めんどくさそう」
そう思いながらも、朝食のクロワッサンをぱくり。
外交官が来るとなれば、何か“挨拶”とか“お披露目”とかあるんだろうけど、正直めんどくさい。
案の定、食堂に外交官たちがぞろぞろやってきて、学園長や王族たちが歓迎の挨拶を始める。
「リヴィア・ノースフェル嬢にもぜひ、面会を」
王族の第一王子アルセリオがにこやかに言う。
「えー、私はいいよ。クロワッサンまだ食べてるし」
しかし押し切られて、仕方なく外交官たちの前に立つことに。
外交官の一人が敬意を込めて言った。
「あなたの魔術は、我が国でも伝説です。ぜひお話を伺いたい」
「伝説? そうなの?」
正直、私は外交の話には興味がなくて、次のクロワッサンに気を取られていた。
すると別の外交官が質問した。
「冒険者ギルドの特級ライセンスもお持ちとか。どうやってそんな実力を?」
「うーん、まあ、努力かな」
自然にさらっと答える私。
外交官たちは「努力……?」と口々に首をかしげていた。
「それにしても、魔術に剣術に多才で、素晴らしい若者ですね」
「そんなに褒められても、私はただ普通にやってるだけ」
外交官たちはますますリヴィアの天然さと実力のギャップに戸惑いながらも、深い興味を持った様子。
「もしよければ、こちらの国との魔術技術交流をお願いできませんか?」
第一王子が話に割って入った。
「……まぁ、考えておくよ」
私はまたクロワッサンにかじりついた。
(外交って、なんか疲れるね……)




