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エピソード28 知り合いの冒険者ギルド受付嬢からダンジョン攻略が難航してると聞いたので、認識阻害かけてちょっと行ってくる

わたしもクロワッサンは大好きです。


角型?か菱型。どっち派ですか?

「ダンジョン、詰まってるんです。今週で三件目……」


そう言ってため息をついたのは、冒険者ギルドの受付嬢――マリナさんだった。


たまたま、パンを買いに出た帰り。久しぶりにギルドに立ち寄った私は、何気なくカウンターに顔を出しただけだったのに。


「中層階で出現した魔物が異常で、討伐隊が何組も撤退してるんです……。中堅クラスが何人も重傷で……」


(……うーん)


私はクロワッサンをひとくち食べながら、マリナさんの話を聞いていた。


「報酬はかなり積んでるんですけど、さすがにこのレベルになると、特級以上じゃないと太刀打ちできないって……」


「ふーん。お金、今けっこうあるから別にいらないけど……」


「えっ?」


「ちょっと、行ってくる」


「えっ、えっ、リヴィアさん!? ちょ、装備とか! 準備は!? 誰か連れて――」


「大丈夫。認識阻害、かけたし」


「そこじゃないっ!!」



ギルド裏のゲートからダンジョンへ入る。

何度も来た場所なので、構造はだいたい覚えている。

私は無言で歩きながら、空間歪曲の気配を探った。


(……この感じ、魔力が溜まりすぎて、魔物の構成が変異したか)


しばらく進むと、前方から魔物の気配。

歪んだ魔力を纏った三つ首のトロル種が咆哮してきた。


(あれ、これ前いた種の亜種? ……うん、ちょっとだけ試そう)


右手を前に出し、魔力の流れを集中。


「雷裂――」


放たれたのは、極限まで圧縮された雷の刃。空間を裂くように一直線。

次の瞬間、トロルは動きを止めたかと思えば、三秒後に静かに崩れ落ちた。


(……やっぱり、雷の通りはいいね)



深層階に到着。

さすがに魔物の密度が濃く、壁面の魔石すら活性化している。


「反応速度型の魔法結界が張られてる……けど、構成が単純すぎる」


結界を三重展開で上書き。魔力干渉で無効化。


目の前の巨大魔獣――全身が金属化した獅子型のものが、咆哮とともに襲いかかってきた。


(これがボスか。ふむ……)


私は、そっと目を閉じた。


「動きを止めたいだけだから……氷結で十分だよね」


指先で空気を引くように円を描く。


「“絶凍結晶陣”――展開」


次の瞬間、空間が白く染まり、魔獣の動きがピタリと止まった。

時間すら凍ったかのような静けさの中、氷に封じられたそれをひと突き。


「……終了」



帰り道、またクロワッサンを食べながらギルドに戻った。


「おかえりなさい……って、え、まさかリヴィアさん!?」


マリナさんが絶叫した。


「え、何その服……ちょっと血ついてる!? それに、まさか……ダンジョン……!?」


「うん。終わった。魔獣は凍らせて倒したよ」


「倒したって……あのダンジョンの!? え、えぇ……」


「あと、魔石一部採ってきたけど、使う?」


私は、ポケットからキラキラ光る魔石を取り出して差し出した。


「お高いんでしょうこれ……」


「べつに。寄付でもいいけど」


「……お高いんでしょうこれぇえええぇっ!?」



翌日、ギルド内では噂になっていた。

「認識阻害かけた状態でダンジョン突っ込んで、誰にも気づかれずにボスを倒した“透明の魔術師”がいるらしい」

「目撃したって言う奴が、全員“夢みたいだった”って証言してる……」

「伝説の冒険者“リヴィア・ノースフェル”が、また一歩神話になった……!」

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