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エピソード2 Fクラスの男子ってきいたけど…?誰だっけ?

「……あれ? お前、ノースフェルか?」


昼下がりの中庭。

パンを食べ終わって魔術の動作確認をしていたところに、声をかけてきたのは一人の男子生徒だった。


「……?」


リヴィアはゆっくりと顔を上げる。声に覚えはなかったが、その顔には微かに見覚えがある。


金髪に、やけに整った制服。

無駄に高そうなブローチ。

そして、何よりその薄く見下した笑みが印象的だった。


「やっぱノースフェルだよな? 見違えたわー。昔はFクラスの最下位で、ちっちゃくて貧相で、魔力もスッカスカだったのにな」


「……誰?」


リヴィアの一言で、男子の眉がぴくりと動いた。


「おいおい、忘れたのかよ。俺だよ、ヴェイル・ランサード。かつてのFクラスのエース様だぞ?」


あー、いたっけ?いたっけ―――。うん、なんかうるせー人いたな。

「……ああ。いたね、うるさくて自己評価だけ高い人」


「なっ……!」


ヴェイルの顔に怒気が走る。

どうやら、彼のプライドは未だに『自分は優秀』で保たれているらしい。


「お前さ、二年以上も姿くらまして修行? なにそれ、頭腐ってんじゃね?どーせ底辺のままなんだろ?」


底辺、かぁ。


なんにも変わってないんだねぇ、君の頭は。


まぁ、他人の心配よりも自分の魔術。


「そう思うなら、別にいいよ」


「なにぃ……? だったら、証明してみろよ」


ヴェイルはリヴィアの目の前に立ち塞がった。

周囲にいた生徒たちが、面白がって近づいてくる。


「お、喧嘩?」

「いや決闘じゃね?」

「やば、ヴェイルとあの人って元Fクラス同士だったの?」

「てか、あれノースフェル!? 嘘だろ」


ざわつきの中、リヴィアは軽く肩をすくめた。


「ここでやるのは周囲に迷惑だよ」


「ビビったか?」


「……そうだね。じゃあ、練習場で」




王立学園・訓練場 第五区画。


「魔術による模擬戦を開始する。生徒同士の同意により、正式な勝負とみなす」

教師がそう宣言した瞬間、観戦席から歓声が上がる。


「いっけー! ヴェイル!」

「かつてのFクラス対決とか、胸熱すぎる!」

「ノースフェル、かわいいけど……マジで弱いって噂だったよな」


リヴィアは、試合用のローブをひらりと翻しながら中央に立った。


「どうせまたビリになるんだろ? 今さら学園戻ってきて、恥晒してどうすんだよ」


うーん、恥晒すって言われても。

「そっか。じゃあ、始めようか」


その瞬間。


風が止まった。


周囲の空気が、ぐらりと揺らぐ。

魔力の圧力。


「な──っ……」


ヴェイルの顔が引きつる。

リヴィアの身体から溢れた紫の魔力が、地面に“文様”を刻んでいた。


「高位構文式……? おい、冗談だろ……これ、上級術じゃ──」


深淵雷槍(アビス・ランス)


ピシィッ……!


紫電が空を裂き、雷槍がヴェイルの足元数センチを貫いた。


ドゴォォォンッ!!


訓練場に轟音が響く。


爆風の中で、ヴェイルは膝をつき、顔面蒼白で叫んだ。


「ちょっ、ちょっと待て! なにそれ、聞いてないって!!」


聞いてない…?


「ちゃんと宣言したよ? さっき」


リヴィアは首をかしげる。

目はアメジストのように淡く光っていた。


うーん、なんか物足りないなぁ。

「せっかくだから、あと二発くらい撃とうか」


「ごめんなさい!!! ごめんなさいいいい!!!」


試合終了。




その日、訓練場の壁には「雷槍の跡」が残された。


やっちゃった―――


その後、ヴェイルは回復魔術で治療され、無事だったものの──


「あいつ、あの『雷』一発で完全に白旗だったらしいぞ」

「ノースフェル、あれで5%の出力らしい」

「5パァ!? じゃあ100出したらどうなるんだよ」


噂は爆発的に広まり、元Fクラスの「エース様」はその日から「雷槍ビビり王子」と呼ばれるようになった。


一方。





「うーん、魔術の制御もう少し調整しないと。今のじゃ、ピンポイントで外しきれないな……」


私は真剣に反省していた。

完全に狙いを逸らしたつもりだった。


だけど、今回は結構ぶれてしまったかも。



相変わらず、魔術一筋である。

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