表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/35

エピソード27 王国軍から“指導官をお願いしたい”と文書が来たけど、課題があるので断りました。でも、たまに行くくらい、いいかなぁ、とも思ってる

その日、教室の机の上に置かれていた封筒は、明らかにただの手紙じゃなかった。


封蝋には王国軍の紋章。

差出人――王国軍上層部、第一軍司令本部。


(……は?)


私はクロワッサンをもぐもぐしながら、手紙を開いた。

中身は、丁寧な筆跡でこう綴られていた。


《王国軍第一部隊より正式な要請》


貴殿、リヴィア・ノースフェル殿を特別魔導指導官として招致いたしたく、ここに書状を送付いたします。


本部訓練施設への定期出張、および若年兵士への魔導訓練のご指導をお願い申し上げます。


(…………)


(……いや、課題あるし)


放課後、即答で断りの手紙を送った。

丁寧に、「課題と授業が優先なので無理です」とだけ書いた。


けれど――


「というわけで、週末だけでも! どうか、お時間いただけませんか!?」


後日、王国軍の副官らしき人が学園まで来た。


なぜか半泣きで土下座してる。


(あの手紙、そんなに重要だったのかな……)


「……一応、魔導の訓練施設くらいなら、見学には」


「ほんとうですか!? それだけで士気が上がります!! 軍神の再臨です!!」


(そこまで言ってない)


王国軍訓練場――


「な、なんか……来てる……」「あの子が、噂の……?」


完全に視線が集まっていた。


しかも、視察するだけのはずだったのに、

「ぜひ模範演習を!」と騒がれ、結局、訓練兵との模擬戦になった。


(……仕方ない)


対戦相手は、若くして中隊長補佐を務めるという、優秀な青年将校。


「本気でかかってこい。俺は誰にも手加減しない主義なんでな!」


(うん、そういうの、嫌いじゃない)


私は木剣を受け取ると、魔力を最小限に抑えて構える。


「始めッ!」


瞬間、相手が地を蹴った。


早い――が、目で追える。


(剣術も強化されてる……でも、単調)


私が一歩踏み出し、軽く木剣を合わせた瞬間。


「うぶっ!?」


青年将校は吹っ飛び、三回転して地面に叩きつけられた。


場が、静まり返る。


(……あれ、ちょっと強く振った?)


その後、なぜか王国軍上層部が集まってきて、正式に「特別顧問」扱いにされた。


けれど、私はきっぱり言った。


「ごめんなさい。課題と、魔導史の再試あるんです」


満点だったのに。


「再試ィィィィ!? そんなものより、軍の未来を――ッ!」


「いや、ほんとに再試なんです」


(数学もあるし)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ