表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/35

エピソード22 とうとう教育省から「指導要請」が届いたんですが、私は学園の一生徒です

その日の夜、寮のポストに妙に分厚い封筒が入っていた。


宛名は――《リヴィア・ノースフェル殿(個人宛)》。


妙に丁寧すぎる字体と、国章入りの封蝋。


(……また面倒な匂い)


私は椅子に腰かけ、封を切る。

中から出てきたのは、予想以上に堅苦しい文体の正式公文書だった。


魔術学習者 リヴィア・ノースフェル殿


貴殿の提出された論文ならびに実地指導記録において、貴重な成果が認められました。


よって、本国教育省より、以下の要請を正式に通達いたします:


一.教育省認定「臨時講義指導者」としての承認

一.若年魔術師育成制度における協力依頼

一.王立教育局認可機関との共同プログラム開発に関する協議


……(以下、長文略)


「……いやいやいや、待って?」


(私、まだ学園の一生徒なんだけど!?)


しかも最後のページ、署名欄には

「文部行政最高顧問 兼 教育監査官 レネリウス・アルト=フィレイユ」

……って、あの“魔術官僚の鬼”って呼ばれてる人じゃないの?


そのとき、部屋のドアがノックされた。


「リヴィア様、すぐに通達を確認いただけたでしょうか?」


開けると、立っていたのは教育省の文官――らしき人。

妙に汗をかいている。


「本来は、ご家族への説明から入るところですが……」

「ご家族……いませんが?」


「あっ……(やべぇ顔)」

「まぁ、単独交渉で支障ありませんね。問題ございません!」


(……雑すぎない?)


「……何が目的です?」


「えー、要するにですね、教育省としてはリヴィア様の才能と手法を“教育資源”として――」


「“資源”って言いましたよね、今?」


「いや! あの、そういう悪意のある意図はなくっ」


私は書簡をもう一度、ペラ、とめくった。


(“魔術指導カリキュラムの根幹構築に関与”……えぐいな。学園じゃなく、国レベルで私を取り込もうとしてる)


「ところで、拒否したらどうなります?」


「えっ……あっ……えっと……」


(詰まった。これ、脅しじゃなくてガチだな)


「とりあえず、今日のところは寝ます。明日考えます」


「は、はい……!」


文官は深く頭を下げて帰っていった。


【翌朝|学園・掲示板前】

「おい、見たか!? 今日の掲示板!」


「本校に所属するリヴィア・ノースフェル嬢が、教育省臨時講師に任命されました、だって!」


「え、まじ? もう先生じゃん」


「そっちより、特別休講:リヴィア嬢特別講義ってなんだ!?」


寝て起きたら、私、先生扱いされてたんだけど。


これ、静かに暮らすどころか、国家案件になってきてない?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ