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エピソード18 走り書きのメモが独自研究判定?

その日は、特に変わったことのない昼休みだった。

私はいつものように食堂の隅っこで、パンをもぐもぐ食べながら、魔導書を読んでいた。


そこへ、学院の教務主任が、汗だくで駆けてきた。


「ノースフェル、至急、校長室へ!」


「パン食べ終わってからでいいですか?」


「ダメだ! 最優先だ! 命に関わる!」


……なんの命?




校長室。


いつも静かなその空間には、知らない老紳士たちが数名。全員、ローブ姿で、いかにも重鎮という感じだった。


「……来たか、ノースフェル嬢」


校長の声が緊張している。


その隣にいたのは――王立魔導学会の重鎮。

魔術界の最高権威、第一研究員・ガーヴェル卿だった。


「ノースフェル嬢。これは正式な依頼である。我々は、君の独自研究を確認した」


「え、研究? どれのことですか?」


「これだ」


そう言って彼が掲げたのは、私が以前、図書館の端に置いていった走り書き。

魔導式の補完案と、既存理論への逆解析を試したメモ。


(え、あれ回収されてたの!?)


「あれはただの落書きで……」


「……あの落書きで、王国の第三魔導法則が崩壊しかけた。だが同時に、新たな理論への道が拓かれた」


「え、崩壊させちゃったの……?」


「ついては、王立魔導学会より正式に依頼したい。君の研究を論文としてまとめてほしい」


「……論文って、何文字くらいですか?」


「五万文字以内で構わん」


「長いですね」


「そこか」




翌日。


私は図書館の一番奥の席で、静かに論文らしきものを書いていた。

とはいえ、難しいことは苦手だ。私はただ、自分が試したことや、気づいたことを順番にメモしていくだけ。


――数時間後、提出。


そして、その数日後。


王立魔導学会内会議室。


「……審査終了です。満場一致で、ノースフェル理論の第一段階を承認」


「早すぎる。しかも彼女、まだ十代では……」


「もはや魔導学会の面目丸潰れでは?」


「いや、これは逆にチャンスだ。正式に彼女を特別協力研究員に任命しよう」


「だが、本人は静かにしていたいと……」


「……難題だな」




さらに数日後。


リヴィアの部屋のドアに、巨大な封書が届いた。


【王立魔導学会より通達】

あなたを「最年少特別研究員」に任命します。

今後、貴殿の研究成果は、王国の基盤理論として活用される予定です。

なお、ご要望の「静かに過ごしたい」という件については、最大限の配慮をいたします。

※ただし、取材・会合・講演依頼は免除対象外です。


「……やっぱり、静かには無理なんですね……」


私は封書を抱えながら、そっとため息をついた。

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