表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/27

エピソード1 学園に久しぶりに帰ってみたら、なんか騒がれてるんだが。

王立アルフェン魔術学園。

帝都にそびえるその広大な敷地と、真っ白な建造物は、魔術師を志す若者たちの憧れであり、選ばれし者しか足を踏み入れられない聖域。


と、聞かされていた―――気がする。


その正門前に私は立っていた。


「うーん。外壁の結界構成は三年前と変わってない……魔力密度の流れも安定。うん、問題なし。

いやー、懐かしいね。あの頃は荒れてたなぁ」


一応、学園に来るので、ちゃんとした格好しないとなと、

青紫がかった長髪をひとつにまとめ、制服の代わりに軽装のローブを身に着けた。


これでいいのだろうか。






私はかつて、この学園のFクラスに在籍していた。


最下位常連。

魔力は最底辺、詠唱速度は鈍足、制御はおぼつかず、そして何より家柄は没落。


「……懐かしいな、ここの石畳。よくつまづいたっけ」


ぽつりと、誰に言うでもなく呟く。


三年前、誰にも期待されず、誰にも顧みられず、私は学園を去った。


──修行します、とだけ、机の上に残して。


当然、教師陣からも「逃げた」と笑われただろう。

旧クラスメイトからは「消えてせいせいした」と囁かれただろう。


だが。


もう、そんなことはどうでもいい。


なんか、名誉とか、印象とか、


正直どうでも良くなってきた。




「さて……そろそろ行こうか」


静かに歩みを進めたが、

正門を通った瞬間。


魔術感知式の結界が、一瞬だけ──いやな音を出した。


バヂッッ……!


「ん?」

何かが反応した音に気づいて、こちらも反応する。


「あぁ、危険人物判定?いいけど―――」




そのころ、正門受付所では。


紫電のような魔力が走り、結界の核が震える。


「えっ……今、魔力警告反応……!? 誰!?」

「Sランク以上の反応!? 学園内に侵入者!?」

「違う、生徒だ! 入構記録がある──えっ、ノースフェル? ノースフェルって、あの?」


騒然となる正門受付所。






本人は?


「―――やっぱり感知式結界、昔のままだよね。値の調整甘すぎる……これ、基礎防御すら抜けるよ?」


と、結界の不備を素で呟いていた。



いや、普通に魔力量が膨大すぎて、感知結界が「異常事態」と判定したのだ。





「まぁ、いいやっ。中入っちゃえ」

なせばなるである。


使い方よくわからんけど。



私が受付所までを歩くだけで、近くにいた生徒たちがざわめく。


「……は? ノースフェル? あの最下位が? 嘘でしょ」

「いや、でも結界の反応、見た? フォルムも似てたし、でも別人じゃ──」

「ていうかあの空気、なんか圧っていうか、胃がキリキリするんだけど……」



すれ違う生徒たちが振り返り、息を呑み、距離を取る、

けど。

正直どうでもいいし。


本人はそれをまったく気にする様子もなく、受付へと進んでいく。


「ノースフェル、リヴィア。Fクラス出身。……編入申請、という形になるのかな。届けは事前に提出済みです」


「は、はいっ……! あ、あの、えっと、こちらに、再検査の──」


受付嬢の手が震えている。

用意された魔力量測定器に手を置くよう促され、素直に従った。


──ピーーーーーーーーーーーーーー……ッッ!!


測定器が、爆ぜた。


「……あっ」

やっちゃった…のかな?


「……うそでしょ」


次の瞬間、受付が静寂に包まれる。


「えっと……壊れたの、私のせい?」


「ノースフェルさん、あの、ちょ、ちょっと奥の部屋へ……学園長が直接お話を……!」




その日の学園中が、「最下位が帰ってきた」話題で持ちきりとなった。


しかも──


「なんか、かっこよくなってね?」

「……わかる」

「てか、あの目……アメジストみたいに光ってなかった? 魔力で?」

「ふつうにタイプなんだけど」

「やば、話しかけてみようかな」


なんか私の知らないところで、噂されてるんだが。


ま、いっか。



筋金入りの、スルースキルである。




ちなみに、当の本人は。


「うーん、校舎の配置変わったかな……魔術教室が南棟って、魔力流の効率悪くない? あれ、誰か設計見直した方が──」


そんなことばかり気にしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ