閑話休題 第三王子?あれは変人枠だよ
「リヴィアちゃん、最近、王子様と仲良くない~?」
そう言ってきたのは、同じクラスの女子・ミーナ。お昼のパンをかじってた私は、そのまま素で返した。
「え、王子ってルシアン? あれは変人。変人枠」
「ちがうちがう! そうじゃなくて! なんか距離が近いっていうか、ほら! 顔赤かったし!」
「……あれは日差しでしょ。今日は太陽が本気だった」
「いや、そういう意味じゃ──」
「それに、あの人たまに詩みたいなこと言うし。ちょっと眩しい。目が疲れる」
ミーナは机に突っ伏した。
「もうダメだこの子……」みたいな顔で。
なんで? 私、何かおかしいこと言った?
そこに、例の生徒会監視人・エイミがずかずか登場。
「はいはいはいはい! リヴィアさん、今日のお昼の魔力操作は、左手でパン持ちながら右手で魔力流してた! めちゃくちゃ器用! 記録っと!」
「記録しなくていいから」
「あと王子様との距離感、観察対象としてとても興味深い! ニヤニヤしながら話してたでしょ?」
「それ、あなたがニヤニヤしてただけでは?」
「違うの! あれは、初々しい青春の香りがだね!」
「香りなんて出てた? パンの匂いしかしなかったけど」
「リヴィアちゃん……ほんとに恋とか知らないの?」
「んー。恋って魔術より強い?」
「違うベクトル!!」
ミーナとエイミが頭を抱える。
──ほんと、意味がわからない。
私はただ、強くなりたいだけ。
恋とか……戦闘に役立つの?
でも最近、胸のあたりがざわつくことがある。
もしかして、それが……魔力の暴走……?
「「それ恋だよ!!!!」」
教室に響くツッコミ。
──やっぱり私、何か間違ってる?
いや、正しい。多分。
でも「恋」って
──食べられないし、強くもならないし、たぶん魔術の材料にもならない。
だから、いらない。
……たぶん。




