プロローグ 魔術不適合者
え〜、片っぽの山に百合、2作目です。
正式に言うと3作目なのですが。
それはまぁ、置いといて。
今度は、まぁよくある、ざまぁ系ってやつですね。
シリアス系じゃなくて、コミカルに描いていくことにします。
異世界転生ってわけじゃないんです。
そこで、このページを閉じかけたあなた!
ちゃんと見てってくださいねぇ?
暖かい季節になり。
私は王立アルフェン魔術学園に入学する。
「やっと、今の魔術が学べる」
「友達はできるだろうか」
「学園の最高峰の授業も楽しみ」
ずっと独りだった私にとってそんなふうに、新しい舞台は輝いて見えた。
でも、輝いて見えたなんて、今じゃ、絶対に言えない。
霞んで見えてただけなんだ。きっと。
――――――
「ねぇ、才能がないくせに、貴族の真似ごと?」
才能がない?
「いや、真似事じゃないでしょう。一応まだ、貴族ですもの」
まだ?
「ノースフェル? あぁ、あの没落した家の──」
没落?
「まだいたんだな? 最下位さん」
最下位?
なぜ、私を嘲うの?
学園って、生徒の立場は平等じゃないの?
でも確かに、教室の空気は冷たい。
ここは王立アルフェン魔術学園、Fクラス。
その中でも、私──リヴィア・ノースフェルは、「最底辺」だった。
魔力量、最下位。
制御適性、最低ランク。
詠唱速度、試験中に寝られるほど遅い。
「魔術をやる気があるだけマシだよね」って、「努力」すら失笑の対象だった。
クラスメイトたち、それに全学年。
果までには教授たちも。
私は悔しかった。
嫉妬や憎悪を抱く以前に。
悔しくて、悔しくて、与えられた寮の自室を飛び出した。
必要なものだけ、全部ひっくるめて。
「強くなって、絶対に見返してやる。あいつらに吠え面かかせてやるんだ」
あの瞬間、そう決めた。
そのときは、13歳。
それから2年。
私は一人、山の奥のだれもいない小屋で修行を続けた。
誰にも見向きされず、誰からも期待されず、
魔術の基礎と理論と実戦だけを、血と泥にまみれて叩き込んだ。
ときには、病に臥せって、
ときには、魔力暴走を起こし、
ときには、魔物の大群に襲われ、
ときには、自然災害に恐れを抱き、
ときには、四肢が知らない方向に曲がって、
ときには、―――
貴族の誇り?
そんなくだらないもの、必要ない。
それは、一人じゃ何もできないやつが言うもの。
そんなものじゃ私は立っていられなかった。
必要だったのは、魔術だけ。
魔術だけが、ノースフェル家―――いや、私の誇り。
15歳くらいまで。
そして私は、戻ってきた。
死の境地に立って、悟りでも得たかのように。
かつての学園に──
全ての人間が目を疑う、「最強」として。
これで、だれも私を蔑んだりしない。
対等な存在として扱ってくれる。
……でも、なぜか今、男子が寄ってくる。
いや、違うでしょ? 私は最先端の魔術を極めに来たんですけど?
学園って、そういうところでしょ?
はぁ?私にくる前に、自分でやりなさいよ。
──恋愛フラグを魔術で粉砕する、最強少女の物語が、ここから始まる。