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プロローグ 戦国の夜明け
ついに念願の織田家に士官を果たした藤吉郎とその弟・小一郎。
だが、与えられた役目は、鍛冶場の掃除係という地味なものだった。
「小一郎、この鉄粉……拭いてたら雑巾が温かくなってきたぞ」
「兄上、それは……もしかして、熱を発しているのでは?」
研磨くずを拭いている最中、藤吉郎は不思議な現象に気づく。
試しに鉄粉と水を小さな袋に詰め、揉んでみたところ、じんわりと温かさが続いた。
「寒さに凍える野営の兵に持たせれば、命が救えるやもしれぬぞ……!」
兄弟は試行錯誤を繰り返し、簡易保温具――現代で言うところの"ホッカイロ"を完成させる。
信長はその妙案に目を細め、藤吉郎兄弟をお側衆へと引き立てた。
知恵と工夫で未来を切り拓く兄弟。
この時、誰もが思いもしなかった。
彼らの小さな発明が、やがて戦国の常識を変えることになるとは