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復讐代行のマエストロ  作者: ただの紅茶好き
第一章 マリオネットと勇者
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プロローグ 復讐代行

「はぁ…はぁ…はぁ…」


 夜の闇に紛れて一人の男が己の疲労など気にすることなく走り続けている。

 それは天敵に狙われて逃げる獲物の様とも取れる様で必死に走り続けていた。


「おやおや、いったいどこにお逃げになるのですか?」


 突如、目の前に漆黒とも呼べるスーツを見に纏い、目元全体を覆う黒の眼帯をした男が一人その男の前に現れた。

 現れた男の手には槍が握られておりその槍の刃には逃げる獲物を捉える為か返しのようなものが付いていた。

 男はその事実に驚き腰を抜かしてしまい、歩く事も出来ない様子であった。


「お、お前いったいなんなんだよ!?俺が何かしたってのかよ!?」


 逃げていた男は全く身に覚えがないというような様子で両手を前に突き出して目の前の男を静止している様だった。

 もう一方の男は腰を抜かして逃げることすら出来なくなった獲物を前に態度を崩さず男の質問に答えた。


「貴方が何をしたか…と言われると見ず知らずの家族の家に強盗を行う為に侵入して家主を殺害し、あまつさえその家の子供に性的な暴行を振るったこと…ですかね」


 男はその言葉を聞いた途端顔色が真っ青になり身体全身が震え出していた。

 だが同時に何かに気づいたのか全身の震えを抑え込み、言葉を吐き出した。


「た、確かにそうだが俺が襲ったのは女のはずだ!お前はどう見ても男だ!!お前にはなんの関係もないだろ!!」


 おそらくそれは獲物にできる最後の抵抗だったのだろう。

 もしこの男がただの無関係な他人であるのなら、その一縷の望みに賭けて絞り出した言葉だったのであろう。

 しかし、目の前の男はその獲物にとって絶望とも言える事実を突きつけてきた。


「もしかして貴方は最近この国に越して来たんですか?だとしたら知らないのも無理ありませんね」


 その男は笑顔のまま顔の前で手をパンと合わせ、次の言葉を紡いだ。


「この国にはとある暗黙の了解があるんですよ。恨まれる様なことをしてはならない。いったいなんでこんな了解が出来たか知ってますか?」


 獲物は訳が分からないという様な表情のまま必死にその場から逃げようとするがまるで蛇に睨まれたカエルの如くその場から動くことが出来ないでいた。


「理由はですね…恨まれる様なことをすると復讐代行者に復讐されちゃうからです」


 獲物はその言葉を聞いた途端全てが頭の中で繋がったのか顔を絶望に歪ませ、声にならない悲鳴を夜の闇に響かせた。


「さてと…説明も終わりましたし、貴方には死んでいただきます」


 男はそう言うと笑顔のまま獲物を引きずり壁際に連れて行く。

 そして獲物を壁が背になる様に押し付けると手にしていた槍を構え、獲物の首を刎ねる。


「あぁ…やはり恨まれた人間の最期は…最も美しい芸術だ…」


 その男の顔は恍惚の表情に歪める。跳ねられた首から出た血が悪魔の翼に見える様な作品を見つめながら。


「ですが…25点、赤点ですね。やはり題材がクズだと上手く表現出来ませんね、要練習です」


 男はそう言うと、槍を拳を守るガントレットに変形させその場から去っていった。


「あぁ…次はいったいどんな作品が作れるのか…今から楽しみで仕方ありません…」


 そして静寂が訪れた。まるでその場には初めから誰も居なかったと言えるほどの静寂が。

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