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春が盗まれた

作者: 出雲 寛人

春が盗まれた。


人が盗んだのか、神様が盗んだのか、自然が盗んだのか、それは分からない。


ただただ、春が来なかった。


去年からだ。


桜も見てないし、チューリップやたんぽぽもあれから全く見ていない。


温かくて華やかで、新鮮な空気を纏う季節がなくなった。


学生達の入学式の写真には、桜ではなく、ひまわりや朝顔が写っていた。


華やかではあるものの、やはり、入学式には桜が似合うと思う。


そして暑い中で着るスーツは、顔に汗を生み出す。


入学式の写真を見るだけで、その温度がひしひしと伝わる。


1番困っていたのは、春に誕生日を迎える人だ。


ある程度年齢がいっている方々からは、「歳を重ねなくて安心するわ」という声も出ているが、誕生日は周りの人たちから祝福される素晴らしい1日なので、残念だという声の方が多い。


そしてどうやら、蝶や蜂も、花粉が運べなくて困っているらしい。


なるほど総じて、春が来ないと困るわけだ。


最近の研究で分かったことだが、季節にも気分があるらしい。


めんどくさいなと思えばなかなかその季節は出てこない。


気分が上がれば長く居座ることもある。


あ、そうそう、春を盗んだのはこの私です。


春から、「私の重要性をもっと分からせてほしい!」という依頼があったので、仕方なく盗みました。


やはり、失ってみて初めてその価値は分かるものだと思うので。


成功報酬としては、春から、“希望”をいただく契約になっています。


ほら、春って新しい生活が始まる人や動植物が最も多いでしょう?そういう生き物達のワクワクする気持ちこそ、希望なのです。


だから春に発生する希望全てをいただくことになっています。


私は誰かって?


私は、未来の春です。


春というのは、気候変動や環境問題の結果、無くなってしまいそうな季節になっています。


だから未来で私に対して希望を抱く人が大幅に減少してしまいました。


懐かしい“希望”を胸いっぱいに感じたかったのです。


それでは、移りゆく季節を噛み締めて、これからの生活に希望を抱いていってくださいね。


その希望たちが、私の希望になるので。

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