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正体を隠せていると思っていた俺と、正体をご存知だった彼女

作者: けむりぬ

ハイファンタジーじゃないかと思い、恋愛移行しましたm(_ _)m

正体を隠せていると思っていた俺と、正体をご存知だった彼女 



王都初級ダンジョン〜迷宮洞窟〜


「冗談だろ……」


 1人の学生服を着た男子生徒が呟く。

彼の視線の先には、禍々しい雰囲気を放つ異質の存在が佇んでいる。


「ね、ねぇ……あれって……」


 彼と同じく学生服を着た女子生徒は、涙声のまま呟き、震えた指先を異質の存在に向けた。


ーーシュウゥゥ


 目の前のそれは人の形を成してはいるが、人外めいた異常な強さと、禍々しいその雰囲気から人ではない異物として恐れられている。


ーーギィン

ーーギィン


 金属と硬物がぶつかる不快な音がダンジョンに響く。


「し、死にたくな゛い」


 ソレと遭遇してしまった者たちの中に、一人も欠けずに戻ってきたパーティはない。


「……はは、本当に、初見で、わかった、よ」


 ソレに出逢ったことがない者でも、出逢えば必ず分かる存在。


「誰かが、殺される」


 パーティが全滅することはないが、

ソレに出逢えば、必ず誰かが死ぬ。


 1人だけ生き残ることもあれば、

1人だけしか死なないこともある。


 犠牲者を決めるのは……


 ソレの気分次第。


ーーシュウゥゥ


 誰かが生きるために、誰かが死ぬ。


 贄を決めるのは、ソレ次第。

 

 それは誰かにとっての[死]そのもの。


「ギニエ……」


 複数あるパーティの内の1人が、ソレの名を口にする。


ーードッン!

 

 その言葉を待っていたかのように、ギニエは学生パーティ目掛けて跳躍した。


「ぎゃあ!」

「ぐわ!」

「きゃー!」


 1人、また1人とギニエの攻撃を食らう。攻撃を受けた生徒たちは、重傷を負いつつも、辛うじて意識が残っている。


 残念ながら、致命傷を自ら避けたわけではなかった。


 ギニエという異物は、すぐに相手を殺さない。


 絶望した相手の顔を十分に楽しんだ後で……殺すのだ。


 残虐非道で、自らの快楽を優先する。


 それがギニエだ。


 次々と同胞が倒れていく恐怖に、無傷な学生たちは逃げることも、声を上げることすらできなくなっていた。


ーーうぅぅ

ーーいだい゛よ゛ぉ

ーーはぁはぁ


 うめき声に、叫び声、乱れる呼吸が入り混じる地獄がそこにはあった。


(我、力を欲する者なり)


 恐怖を具現化した空間で、凛とした声を脳内で響き渡らせる者が1人。


(恐怖を切り裂く轟音)


 ギニエに気づかれないよう脳内で魔法の詠唱をしているようだ。


(瞬く間に闇の世界を照らす超光)


 魔力の位置を辿ると、そこには青髪の女子生徒が佇んでいる。


 彼女だけはギニエに遭遇してもなお、心折れずに魔法を詠唱していたのだ。


 マナリア・トレリス・マギベスト


 由緒正しき辺境伯の生まれであり、

魔法に愛され、魔法を愛するご令嬢。


 周りからの期待を軽々と超え、学生でありながら、名だたる研究者たちから声をかけられている傑物。


 良くも悪くも、彼女は有名だ。


 そんな有名人と化しているマナリアは、学園に来てから初めて本気を出そうとしていた。


 周囲とのレベルが合わず、手加減しても相手を傷つけてしまう力を有する彼女は、ほぼ全ての魔法関連授業を免除されるほどだ。


 これが学内のみであれば優秀な生徒としての評判だけで済むだろうが、彼女を必要とする声は学外からも聞こえてくる。


 彼女は優秀ではなく、魔法に愛される天才だから。


 そんな彼女が瞬時に選んだ魔法。

ギニエを確実に殺せる一点集中超高火力の雷鎚。


(イリティ)


 彼女は魔法を愛し、魔法に愛されている存在。


 とはいえそれは、誰にも邪魔されずに魔法使える場合の話。


 よく聞く話しと似ているかもしれない。

勉強ができても、それを社会に活かせなければ意味がない。


 彼女には戦闘の経験値がほとんどないのだから、そうなるのも当然。


 経験さえ積めれば、戦闘面でも引っ張りだこになる存在であろう。


 しかし、タイミングが悪かった。


 そしてなにより……。


(カルド)


 ギニエの性格がどれほど捻くれていて、どれほど魔力に敏感なのかを。


--ニチャア


 彼女は知らなかったのだ。


ーーヅガン!


 詠唱完成間際、それを待っていたと言わんばかりにギニエは彼女目掛けて跳躍した。


 普段から表情が変わらないで有名な彼女でさえ、この時ばかりは呆けてしまう。


(嘘、ステルスもしてるのに。

詠唱も脳内で、魔力も抑えてたのに、どうして分かったの?)


 詠唱中だったことすら忘れて、彼女は疑問を優先してしまう。


ーーニチャア


(あ……)


 マナリアの前にピタリと止まるニギエ。


 急停止したことでニギエの周り風が生じる。マナリアが深く被っていた三角帽子を落とすほどの勢いのある風だ。


 三角帽子が落ちたことでマナリアの視界が開ける。


(う、ニギエの魔力……。

禍々しくて、気持ち悪いわ……。

い、息が乱れて、苦しいの……)


 過呼吸になりそうな呼吸をどうにか抑えて、視線を合わせないよう努力するも無駄に終わった。


 悍ましく気味の悪い顔に取付けられたかのようないくつもの目玉が、マナリアの前に現れたのだから。


(ころ、される)


 さすがのニギエも自分を殺せる相手を放置しておくわけがない。ニギエにとっても自分を殺せる者がいることは、誤算で、ひどく不快なことであった。


 だが、ニギエにとって都合のいいことが起きてしまう。マナリアがニギエ相手に姿を隠せていると本気で信じていたことだ。


 なにせ、彼女は魔法を愛し、魔法に愛される存在。その圧倒的な自信が枷となった瞬間である。


 気づかないと思わせておいてから、絶好のタイミングでネタバラシ。


 それが成功すれば、どれほど気持ち良いだろう。


ーーニチャア


 快楽的で残虐非道な捻くれもののギニエであるが、殺す殺さないの優先順位はつけられる。


 そして、今がその時であった。

万全のタイミングからの強襲。相手が最も動揺し、嫌がるタイミングをニギエの嗅覚は逃さない。


(体が動かない……これが恐怖なのね)


 初めての恐怖に体が動かず、顔を青ざめるマナリア。


 彼女の脳内では、ゆっくりと時間が流れている。


(今から、撃てる魔法は……ないの)


 彼女は天才であり挫折を知らない。

折れることを知らない心が、初めて折れてしまう。

 

 心が折れたことで抵抗力そのものが、木っ端微塵に砕け散る。


(無理だ)


 全てを諦めたのか、彼女の顔色が更に酷くなり、身体全身が小刻みに揺れていた。


 ようやく見せた彼女の恐怖の色に、ギニエは満足そうに汚く笑う。


ーーニチャア


 気味の悪い音を立て、人を殺すために使い続けたであろう血がべったりと付着した大鎌のような腕を存分に振るう。


(あー、もっと、魔法を知りたかったわ)


 涙一つ流さないながらも、もっと生きていたかったという思いが、彼女の脳内を巡った。


 魔法の思い出を考えながら死んでいこうと思った彼女は目を瞑る。


 気味の悪いギニエの顔より、魔法を考えながら死んだほうがマシと考えたから。

 

(走馬灯にしては、長いの)


 だが、いつまで経っても意識が残ったままなことに疑問を感じる。


(……来ない?)


 いつまで経っても来ない痛みに、恐る恐る目を開けて、状況を確認する。


「……あれ」


 彼女の瞳に映ったのは、気味の悪いギニエの顔から、大きな人の後ろ姿。


(私はすでに死んだ?

でも、ここは同じ場所の洞窟、精神だけが残ったっていうの? 魔法も使えるし、足も生えてる、痛みもあるの。

……そもそもこの人は誰だ?)


 視界が滲みながらも彼女は懸命に目の前の人物に問いかけようとした。


「あの」

「今のでは無理か」


 声をかけようとしたタイミングで相手の独り言と重なる。


 マナリアの声は、相手に届かなかったようだ。先程起きたことの動揺と恐怖によりマナリアの第一声は小さく掠れていたことが原因だろう。


(男の人ね)


 声からして男だということは分かるが、それ以外の情報は入ってこない。


 脳内が大混乱中のマナリアは、あたふたを体で表現し、どうしていいか分からない表情を見せる。


ーーGYAaaaaa!!!


 劈く悲鳴のような咆哮が、ダンジョンに響く。


 マナリアは耳を塞ぎたくなる声で我に返る。


(そういえばニギエは……あんなところにいるの)


 先程まで彼女の目の前にいたはずのギニエは、ダンジョンの壁に埋め込まれていたのだ。


 壁から抜けだそうとするニギエだが、男は魔法でニギエを壁に押し付ける。


(早い……詠唱そのものを破棄して、魔法名すら言葉にしてない……無詠唱の重力魔法)


 脳内で詠唱したとしても、どうしても魔力は滲み出る。


(魔法を発動するまで魔力を感じなかったわ。……この人、とても強いの)


 男からは魔力の気配が一切なく、瞬時に発動したことから、マナリアは瞬時に男の力量を察した。


「終わらせよう」


 男が前に手を出す。

瞬間、幾つもの眩い光を放つ魔法陣が展開され、1つの魔法陣にまとまる。


 瞬きすら許されない速度で、魔法が完成した。

  

イリティカルド・グラディウス

【雷闘神の轟剣一閃】


 ニギエまで一直線に放たれた雷撃。

ダンジョンに光が満ちたと思えば、ニギエが雷撃を喰らって炭とかし、遅れて地獄と化したダンジョンに爆撃音が響く。


 1秒もかからずに、男はニギエを倒したのであった。


 ニギエを倒したと理解しているのは謎の男と、男の背後に隠れていたマナリアのみ。


 そのマナリアは、一歩も動かずに男の放った魔法陣を凝視していた。


 マナリアは大きな目をさらに大きく開けて、炭と化したニギエと謎の男を交互に見る。


(多数の魔法陣を1つに統合した直後、ニギエが炭になった……この魔法、間違いない)


 先程マナリアがニギエ相手に姿を消し、時間をかけて放とうとした魔法そのもの。

 

(イリティカルド・グラディウス)


 雷闘神イリティカルドが大剣を振り下ろし雷鎚を生んだ一撃を模した魔法。


(こんなにも早く出せるなんて……しかも、とても簡単そうに見えたわ)


 魔法の才が無ければ放てない超難関魔法を、目の前の男は初級魔法の如く放ってみせたのだ。


(詠唱破棄で……私より威力の高い魔法なの。それだけじゃない……魔法の完成速度、魔力コントロール、何もかもが私より上だ)

 

 魔法の扱いが全てにおいて自分より上の存在。


 いつかは現れると思っていたマナリアであったが、本当に現れるか疑問を持ち始めていた。


(私、自分は頂点に立てる人間だと思ってたのにね)


ーードックン

ーードックン


 しかし、マナリアを超す人物が突如として現れた。


 その人物とは、得体のしれない外套のフードを深く被った目の前の男。


(でも、違ったの。

上には上がいる……私より優れている人がたくさんいる)


ーードックン

ーードックン


(心臓の音……うるさいわ)


 チラチラと謎の男を見るマナリア。


 マナリアが、謎の男に向けた視線と瞳は……恋する乙女そのものであった。


「終わったな」


 そんな視線を向けられてるとは思っていなさそうな男は一言呟くと、ダンジョンの出口へ向かおうとする。


「ま、待ってほしい!」


 震えた声でマナリアは、さらに煩く喚く心臓を無視して、謎の男を精一杯呼んだ。


「どうした?」


 どっしりとした男らしく低い声だが、優しく包み込むようなトーンに、マナリアは心を貫かれたような痛みと温かさを感じた。


「う……」

「まさか、怪我を?」

(お日様の香り……)


 男の匂いにさらに胸が温かくなるが、質問には答えなければと、凛と答えている……つもりのようだ。


 顔は赤く、視線は泳ぎ、口元は緩んでおり、彼女が思う凛とした顔は保てていなかった。


「う、ううん、あなたが守ってくれたから大丈夫」

「そうか、なら良かった。

ここで待つのは怖いだろうが、ニギエのような異物はもう出てこない。

それに、そろそろ大人がくる頃だろうから、安心して待っているといい」


 そう言って、男はもう一度去ろうとする。


「あ、あの!」


 マナリアは咄嗟に男の手を掴んでしまう。今まで1度も異性に触れたことのないマナリアは、手を掴んだ瞬間に思考が再停止する。


「どうした?」

「あ、あの……」


 マナリアが何を聞きたかったのか必死に思い出す中、洞窟の奥から声が響いてくる。男が言うように、大人が来たようだ。

 

「すまないが、面倒事になる前に帰らせてもらう」

「そ、その、せめて名前を……お、お礼もしたいの、で!」


 精一杯勇気を出しましたと真っ赤な顔と、お腹からでた声が証明している。


(言えたの!)


 男を知らない初心な彼女なりの精一杯の言葉。


 ここまで触れてこなかったが、マナリアは容姿も優れている。


 ウェーブが柔らかくかかった暗めの青の中に隠れている濃い桃色インナーが特徴的なウルフヘア、気怠げそうな垂れ目に神秘的な銀色の瞳、身長は女性の中では平均、出てるところは出ており果物サイズ。


 婚約相手には困らないくらいには、引く手数多の美女である。


 簡単に言えばマナリアは、男であれば恩の1つでも売っておきたい容姿をしているということだ。


 マナリア自身も容姿に自信がないわけではない。男からのそういう視線にも気がついている。


 だからこそ、マナリアにも多少の自信があった……のだが。


「名乗るほどの者じゃない」

「え」


 まさかの回答に固まるマナリア。


「ではな、美しきご令嬢」


 男は落ちていた三角帽子をマナリアに深く被せて視線を遮る。


(振られたわ……)


 初めての失恋に近い感情がマナリアを襲い、握っていた手を話して三角帽を掴む。


(……命を救われたというのに、何もしないのは貴族の恥だ)


 貴族のことなんて普段これっぽっちも、微塵も考えないマナリア。こういう時の言い訳に使えることを深く感謝してから、若干涙目の顔を上げ再び手を伸ばす。


「待っ……え」


 しかし、すでに男の姿はなく、マナリアの手は虚空を掴む。


(ステルスの……魔法ね)


 本当にあの男はいたのかと疑問に思うほど、お日様のような香りも、足跡も、魔力の痕跡も、何も見当たらない。


(すごい……本当にいなかったみたいなの)


 虚空を掴んだ手を胸に戻し、ギュッと拳を作る。


(それでも……諦めたく、ない。

もう一度会って、話がしたい)


 初めて感じた思いが、マナリアを突き動かす。


 天才が1つのこと集中すればどうなるか。


 答えは簡単。


 満足のいく結果が出るまで、ひたすら走り続ける。


 天才とは、そういう生き物だから。




〜〜〜夜の男子個室寮にて〜〜〜



「……ふぅ、我ながら、完璧な去り際を演出できたな」


 まさか授業中に異物であるギニエが出てくるとは思わなかったからな、友人を撒くのが大変だった。


 さすが異世界、何が起こるか予想できん。


「それにしても……マギベスト令嬢のあんな顔、初めて見たな」


 貴族の爵位も、学園のクラスも向こうが上だからな、俺とは住む世界が違う人だ。


 しかし、無表情で有名なマギストス令嬢も可愛い顔をするんだな。正直、いいものを拝めたが、これ以上関わる気はない。


「学園にいる時はやめようと思ったが……。正直、こういうのがあるとやめられる気がしないな」



 謎の男の正体、実は俺です。



 元々そういう設定に興味はあったが、実際にやってみると承認欲求が満たされてやめられなくなってしまったんだよな……。


 まぁ、なんだ。

人様に迷惑は掛けてないし、なんなら人助けをしてるわけで。

謎の男が目立つのはいいが、俺自身は目立ちたくもない。


 とはいえ、謎の男を気に入ってるからやめたくない。

 


「姿隠しは完璧で、バレる余地なし。

魔法の申し子と言われるマギベスト令嬢でさえ、俺とは気づかなかったはず。


天才を欺けたのなら、謎の男の正体、実は俺でした生活を継続できそうだ」


 学園で何か起きるわけがないと高を括っていたが、これからはある程度の警戒は必要だな。


 今回は、クラス関係なく合同の訓練だったから全員を救えたものの、今回のように全員が無事に助かる保証はないだろうし……。


「準備しておいて損はないか」


 とはいえ、今日は疲れた。

久しぶりに力を解放したせいだろうな。

たまにはギルドに行って、依頼を受けてこないと。


 最近サボり気味だったし……。


 ニギエも出たことだし、学園は休校になると思ったが……さすが、数多の強者を輩出する学園。明日も普通に授業があるんだよな。


 まぁ、明日の放課後にでも依頼をもらっておこう。明後日は休みだから、修練にはもってこいだろう。


「寝るか」



ーーニキャア


「!」


 馬鹿な、今日間違いなく殺したはずだぞ?


 ダンジョンからではない。

かなり弱っているが、窓の外からニギエの反応がする。


 まさか、仕留め損ねたのか?

いや、でも何か違和感があるような……。


 まぁ、調べるとするか。


ーーバタン


 仮に生きてたとしても、相当弱っているはずだ。これならベランダから、誰にもバレずに殺せる。


 ……ん?


「いない?」


 そんな馬鹿な……確かにニギエと似た魔力を感じ取ったぞ。ニギエの魔力を辿ろうとするが、やはり消えている。


 ……なら、勘違いか。

油断してはならないからと、いきなり気を張りすぎたのかもしれん。


 まぁ、反応からしてだいぶ弱っていたし、放っておいても勝手に死ぬな、ありゃ。


 明日騒ぎにならなきゃいいけど。


「つか、やべ」

 

 今の見られたか?

魔力探知で確認するか……。

あー、上のクラスの奴らには俺の姿を見られたっぽいな……。


 まぁ、大丈夫か。

上のクラスの奴らは、下のクラスのやつに興味ないだろうし。


 何か聞かれても、たまたまベランダに出ただけと答えよう。そうすれば、納得するはずだ。


 よし、今日のことは忘れて、さっさと寝よう。


〜〜〜同刻、男子個室寮前の敷地内にて〜〜〜


(私が発した擬似ニギエの微弱な魔力を感知した人間、4人。内3人は、同じクラスで優秀な3人ね。3人はニギエの存在を知らないとは言え、気味の悪い魔力は無視できなかった様子なの。でも、この3人は無視でいい。わざわざ姿を隠す連中じゃないものね。気になるのは残りの1人なの。個室寮の中間に住んでる男子生徒。個室寮の位置からしてクラスはC、名前も顔も知らないけれど、間違いなく擬似ニギエの魔力に気づいてたね。ううん、気づいていただけじゃないと思うの。指先に溜めていた魔力で間違いなく殺そうとしてた。指先に魔力を溜めるのはできるけれど、それを維持させるには魔力コントロールに長けていないとできないはずね。周りにバレないように高濃度の魔力を魔法で隠してもいたの。それだけじゃない、敵の位置を把握しようと他にも魔法を使っていた。指先の魔力と、それをごまかすための魔法に、探知の魔法、3つの魔力操作をいとも簡単にやってのけてるなんてね。こんな芸当、Cクラスなんかではとても無理なの。……とても怪しい。でも、これと言った確証は得られないから、無闇矢鱈と動くわけにもいかないわね。1度だけでもいいから、魔法陣が見たいの。明日は召喚獣と契約する授業がある。私も明日それに参加するけれど、Cクラスとは時間が異なるわ。ステルスの魔法で隠れ身するの。うん、それで行こう)


 彼女は考えをまとめると、その場から颯爽と駆けていくのであった。



〜〜〜放課後のとある教室にて〜〜〜


「話したいことがある」

「どなたかと間違われているのでは?」

「ガルガン・セントゥム・フリベルテ、私は貴方と話したいことがある」

「……承知いたしました」

「場所を変える、ついてきて」


 こうして、彼女と彼は出逢った。


 彼女は自身に満ち溢れ、彼は冷や汗を垂らしながら彼女について行く。


(や、やっぱり、バレたのか……?)


 ガルガン・セントゥム・フリベルテは正体を隠し通すことができるのか。


(……逃げてない)


 それとも、マナリア・トレリス・マギベストに状態を見破られてしまうのか。



 果たして、ガルガンの運命やいかに。



 これは、正体を隠せていると思っているガルガンが、マナリアの手のひらの上で転がされ、なんやかんやあって幸せになる物語である。



続く……といいね。

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