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ハンター ジャック

彼、又は彼女は雪原を渡る。

幾日も日光に照され粒の大きくなった雪が光を反射して煌めき眼を刺激する。

いつもならソレはウキウキと高揚するが今は余計な情報として煩わしいとすら感じていた。

追跡者の気配を感じる。

視界のどこかに影が動いた様な気がした。

姿は無い。だが澄んだ空気に混じり獣の臭いが鼻を刺す。

先程まで何もなかった場所に現れ気付けば本能的に駆け出していた。

しばらく逃げて一息つく。

だが追跡者の方が上手だった。


脇腹から心臓目掛けて矢が突き抜ける。

身体の中が熱くなり呼吸が苦しくなる。

ぶぇと不自然な音を喉から出し地面に倒れこむ。

必死に呼吸をするが肺が空気を吸い込もうとする度に熱い塊が波打ち胸を満たす。

雪を踏みしめる足音が聞こえるが立ち上がる事さえできず四肢で空を蹴るのが精一杯だった。

足音は止まりしゃがみ込むと脇腹に手と刃物をあて一気に心臓まで突き刺し刃物を捻り心臓から血液を噴出させた。


肺に血が流れ込みシカは絶命する。

ハンターはナイフを引き抜くと地面の雪に突き立てる。晴れた日が続き雪質が少し硬くなっているからできるが油断すると雪の中で抜き身の刃物を探す羽目になる。


先ほどシカを追い立てて来た二匹の犬が駆け寄って来た。

早く褒美が欲しいのかシカの周りを嗅ぎまわっている。

足に縄を掛けてソリまで引きずる。どこか近くの木でざっと血抜きだけでもしておきたい。

贅沢を言えば不要な内臓も切り落としてしまえると犬たちの褒美にもなる。


少し遠いが道具のそろった山小屋の近くまで戻るか近場の野営地にしている一本松に戻りシカを解体して野営するかのどちらかだろう。

片付けや山小屋を汚したくないので一本松で解体し野営をしながら今日はこいつを食べようとジャックは考えた。


程なく一本松にたどり着き皮をそぎ落とし首を切り血を抜ける様にする。

二匹の犬はジャックの合図を待って興奮をしている。

ジャックの掛け声と同時に二匹は奪い合う様に内臓にかぶり着いた。

ナラの木にシカを吊り下げキツネや狼が来ても届かな高さまで上げる。おそらくカラスには啄まれるだろうが大した問題ではない。


野営の準備のため簡易テントに入り弓と矢を下ろし焚火の燃え殻を掘り火種を探す。

酸素を見つけた火種が赤く煌めく。松の枯れ枝を近づけ火種に息を吹きかけると煙が立ち込めるが一気に火が大きくなる。ほかの枯れ木に火を移し焚火を安定させる。


少し多めに切り取ったシカ肉を枝で作った串に刺す。少し血が滴っているがご愛敬である。

焚火の淵に突き立て塩を掛ける。上には鍋に雪を入れお湯を作る適当に蒸した松の葉を入れて煮立たせる。二匹は外で丸待っている。


3本用意したシカ串の2本面を頬張るうちに二匹が立ち上がり走りだした。

過去に経験があるのは熊と狼だが何か様子が違う。

特有の獣臭さや鳴き声が聞こえないのだ。

もしかすると遠いのかもしれない。

突然二匹の吠えたてる声がした。

ジャックは弓を構え外に出る。鳴き声の方向とは逆の木の陰に入り簡易テントの明かりすら来ない位置まで下がった。

しばらくして二匹に吠えたてられながら木の枝でけん制する女が現れた。


雪山に来る様な恰好ではない。薄着に裸足である。

ジャックは声を掛けた。

「あんたは何もんだ?なんでこんな所にいる?」

女は答えた。

「私が聞きたいわ。ここはどこなの?出来れば助けて欲しいのだけれど貴方は見たところ狩人かしら?そこの木の上にシカが吊るされているのを見たわ。」

「ここはトリバーの村の外れの山中。俺はハンターのジャック。あんたの名前は?」

「ごめんなさい。私は旅人のシエラ。王都へ向かう途中で捕まっていたのだけれど逃げ出した所なの。」

ジャックは怪訝な顔を一瞬見せたがシエラの腹の音を聞き我に変える。

シエラは腹を抑えてテントを見つめた。

「よかったら食うか?」

シエラは少し恥ずかしそうに頷いた。


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