09 お代わりの馬場馬術
翌日、学院に行くと教室に生徒会の役員が待っていた。
「あぁリリー様、お願いが・・・午前中の馬術競技に出て貰いたいのです」
「は?」
「それが、朝、選手が階段から落ちて参加できなくなりました」
「棄権でいいのではないですか?わたし筋肉痛が」と言って気がついた。治せるのでは?
「それが・・・選手が少なくて見栄えがしなくて・・・来賓もたくさん来ます。それで、お願いします」
「リリー出たらいいんじゃない。馬も大きいし」とパトラが言うので
「大きさは関係ないでしょ」と大きな声で言ってしまった。
「ほんと。わたしお父様に話をしたらお父様見に来たの。とっても褒めてた。いい馬だって。あっリリーのことも褒めてた」とナタリーも言った。
付け足しで褒めないで!
「出たらいいじゃない。あぁ?服はあるの?」とパトラが言うと
「学院長が用意してくれました。大丈夫です」
「出ますから、リリー着替えてらっしゃい」とナタリーは言うとわたしを教室から押し出した。
なんてこと!わたしは自分を少しずつ治しながら歩いた。改めて思った。わたしってたいしたやつなんじゃない?
着替えて厩舎に行った。馬は元気でわたしを見て喜んだ。
わたしが会場にはいると、ナタリーとパトラが手を振っていた。それでわたしも手を振った。
その時、雷の音が立て続けにした。わたしは吃驚してビクッと鞍の上で跳ねたが、馬は落ち着いていた。パトラも吃驚していたし、ナタリーはお父様にしがみついていた。
会場にいた馬のなかには騎乗者を落として、跳ねて走った馬がいた。わたしはそんな馬の巻き添えにならないように、隅に避難した。
落馬した騎乗者のうち一人は棄権した。わたしたちは、くじで順番を決めた。
わたしは一番だった。コースをよく覚えてないからもう少し後のほうがいい。だけど早く終わってロバート様に会いに行けると思うと、この順番でいいか。
馬はわたしよりベテランだ。まかせて乗っていればいいだろうとスタートラインに立った。
思ったとおり、馬はさっさと進んで行ったが、一箇所わざとコースを不自然に変更している所で間違えた。わたしは、懸命に合図をだしたが、馬は聞かない。わたしは鞭を使った。
馬は間違えた所へ戻り、やり直した。ほんと!一番は不利だ。
最後の半周は馬に任せたら、凄い速さで走った。正直、曲がり角で放り出される所だったが、馬は一瞬足を止めるとわたしの体を背負い直してまた走った。
わたしよりこの馬のほうが偉いかもしれない。ぶり返した筋肉痛と闘いながら下馬してそう思った。
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