45 プロポーズ
「リリー、お願いがあります」といつもは向かいに座っているハリソンが隣りに座り、わたしの手を取って言った。
これはもしかしてプロポーズと言うものだろうか?
ハリソンがプロポーズしてきたらどうするか、わたしは考えたことがある。正直に言えば何度も考えた。
でも、この場面でそれが思い出せない。どうしよう・・・と困っていたらハリソンは始めた。
「リリー、わたしと結婚して下さい。わたしは年下だし、魔法士になる才能もありません。
騎士になる才能も根性もありません。王族であることくらいしか・・・取り柄はありません。それだって取り柄といえるか、わかりません。
でも、リリーを心から愛しています。ですからリリー、わたしと結婚して下さい。
リリーが未亡人になりたいと思っていることを知っています。
わたしはリリーがいない世界で生きていたくないので、先に死にます。
ですから、リリーは未亡人になれます。ちゃんと願いは叶います。
未亡人になったリリーをわたしは草場の陰から見守ります。
リリーが男性に誘われても焼きもちを焼いたりしません。うーー少ししかしません。
ですから、リリーわたしをあなたの夫にして、世界一幸せな男にして下さい」
言葉が途切れたから、わたしは伏せていた目を上げた。
ハリソンと目があった。見慣れた青い目のはずなのに、違って見えた。
わたしが映っている。こんなに近い。嫌じゃない。わたしはがんばって微笑んだ。出来たと思う。
微笑んで答えた。
「はい。ハリソン」
結婚準備で、新しい宿舎と言うか離宮に引っ越した。離宮と言ってもそんなに離れていない。
単なる呼び名だ。
結婚してもハリソンは、王族のまま。今までと同じなのでわたしは気楽だ。
動物のための裏庭や、大きな木があるし、裏手は森になっている。
準備するのに便利だからって、ハリソンも一緒に引っ越して来た。
二人で連れ立ってドレスの仮縫いに行ったり、料理の献立の打ち合わせに行っている。
なんというか、デートの後、送って貰って、さようならじゃなく、一緒に帰って来るのってすごく幸せだ。
いつとはなく寝室が一緒になった。そして、ベッドも一緒になった。
誤字、脱字を教えていただきありがとうございます。
とても助かっております。
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